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第81話 〚近づく終点〛(恒一)
――もう、遠回りは終わりだ。
恒一は、夜の自室で天井を見つめていた。
カーテンの隙間から入る街灯の光が、ゆっくりと揺れる。
(ここまで来た)
頭の中は、妙に静かだった。
怒りも、焦りも、今はない。
あるのは――
「確信」だけ。
白雪澪。
彼女の行動、時間、関わる人。
全部、知っている。
夏休み。
家で過ごす日。
仲間と会う日。
海翔と連絡を取る時間帯。
(守られてるつもり、か)
口元が、わずかに歪む。
橘海翔。
相馬玲央。
三軍女子たち。
担任。
みんなが囲って、
安全だと思わせている。
でも――
それは“今”だけだ。
「……予知、だっけ」
小さく呟く。
澪が持つ、不思議な力。
未来を“知ってしまう”その目。
(だから、だ)
見えないところで動く。
予知に映らない距離で。
誰にも気づかれない“選択”。
恒一は、机の引き出しを開けた。
中には、メモ帳。
そこには、
日付と、場所と、時間。
――×印が、ひとつだけ残っている。
「次で、終わる」
声は低く、感情がない。
それは決意ではなく、
計画が最終段階に入った合図だった。
窓の外で、蝉が鳴く。
夏は、まだ続いている。
けれど――
恒一の中では、
すでに“終点”が見えていた。
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