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第82話 〚予知が来ない理由〛(澪)
夏休みの午後。
澪は自分の部屋で、机に向かっていた。
開いているのは、ノート。
でも、文字はほとんど頭に入ってこない。
(……静かすぎる)
胸の奥に、違和感があった。
最近――
妄想(予知)が、来ていない。
頭痛もない。
映像も流れない。
突然の未来も、警告も。
それ自体は、
本来なら“楽”なはずだった。
(でも……)
澪はペンを置き、
自分の手を見つめる。
今までの予知は、
危険な時、
不安な時、
大切な何かが揺れる前に――
必ず現れていた。
なのに。
「……なんで」
小さく呟く。
海翔と笑った日。
みんなで海に行った日。
何も起きなかった安心。
それでも、
心の奥だけがざわついている。
(来ないんじゃない)
(……来“れない”?)
その考えに、
背中がひやりとした。
予知は、
未来を“避けられる時”に来ていた。
じゃあ――
避けられない未来だったら?
「……やだ」
思わず、胸を押さえる。
その瞬間、
スマホが震えた。
【海翔:今、何してる?】
その名前を見ただけで、
少しだけ息が楽になる。
【澪:宿題してたところ】
すぐに返ってくる。
【海翔:無理すんなよ】
【海翔:何かあったら、すぐ言え】
画面を見つめながら、
澪は思う。
(守られてる)
(でも……)
予知が来ない理由は、
まだ分からない。
ただ一つ確かなのは――
何かが、水面下で動いているという感覚。
澪は、
カーテン越しの夕焼けを見つめた。
静かな夏の空。
その静けさが、
嵐の前でないことを――
心のどこかで、祈りながら。