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~~ 遡ること約7年と数ヶ月前
由宇子が大倉将康との離婚届を出し
新居に移ってから半年程経った頃のこと ~~①
私はちょっと改まって話しがあるからと言われ、子供たちを母に預け
伯母洋子の家へ出かけることにした。
「あら、改まった話って何かしらね?」
「うん……こんなこと初めてだからちょとドキドキする」
子供たちを預けに行った時に母と交わした会話。
母も何も聞かされてないようだったので、どんな話なんだろうと思いながら
伯母の話とやらを聞きに出向いた。
伯父も薫ももちろん仕事で、出迎えてくれたのは
伯母ひとりだった。
元々の相性がいいのと、小さな頃から薫ときょうだいのように……
薫に向けるのと同じような愛情をかけてくれた伯母のことが私は好きだ。
リビングに入ると私の好きなケーキとコーヒーが用意されていた。
「わぁ~、洋子ちゃんありがとう」
「へっへっへっ、このケーキ由宇子好きだもんね。
今日はさぁ、一生に一度のお願いしないといけないから奮発したのよ」
「えっ、それはまたすごいことを……。
ンで何なに?
私でできることなら何でもって思うけど」
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「まままっ、座ってすわって。
まずはケーキよケーキ。
ここのはおいしいもんね」
「じゃ、いただきます。
……んっ~ おいしいっ、ほんとおいしい。
このケーキ久し振りなんだぁ~」
大好きなケーキを口の中に入れ、味を堪能し幸せいっぱいの私に
洋子ちゃんが言った。
「離婚のこと、妹から聞いてるけど由宇子は再婚のこととか
考えてたりする? 将来の展望っていうのかな、何か思うところは
あるのかなって」
「再婚か……どうだろ。
よほどの運命を感じたら別だけど、まぁあれよ……私は娘がいるし
最近ニュースでもよく聞くけど再婚相手に子供が暴力振るわれて亡くなったり
する事件も結構聞くし、娘だと娘を手にかける男もいるようだしね。
子持ちで再婚はリスクが大きすぎるから再婚するとしても子供たちが
成人してからかな。
ということで、婆ばぁになるまで再婚はないです」
「はははっ、あなた婆ばぁってそんな言い方やめなさい?
でもやっぱりいいわぁ~そういう男前なとこ。
惚れてまうわ」
「ふふっ、そう?」
~~ 遡ること約7年と数ヶ月前
由宇子が大倉将康との離婚届を出し
新居に移ってから半年程経った頃のこと ~~②
「じゃあ、其れを由宇子の本心と受け止めて私のお願い事を言うわ。
薫を嫁に貰ってください」
「ちょっ、嫁にって……待って。
薫が私の再婚相手にってことですよね?」
「そうそう。
驚かせたかもしれないけど嫁にっていうのは気持ち的なものね。
由宇子にまかせたいっていうか。
ぶっちゃけあの子に由宇子の夫になれる力量があるのか私も
断言できるだけの自信がないから、ちょっと弱腰なところが
嫁発言になってる。
とにかくどんな形ででもいいからっていうか、上手く言えないんだけど
薫の家族になってやってほしいの。
ひとりっ子だから、このままだと私達夫婦が居なくなったら
あの子は独りになってしまうでしょ。
由宇子だったら安心してあの子のこと託せる」
「洋子ちゃん、何も私みたいな子持ちの出戻りと結婚しなくても
薫なら可愛い子、選り取り見取りでしょ?
だいたい薫が嫌がるわよ? 伯父さんだってきっと猛反対するわよ。
モテないっていうんならまだしも、薫が誘って断る女子は
いないでしょっていうくらいモテるんだよ。
ないない……ナイナイ。
絶対ない、私が相手だなんて」
私は洋子ちゃんの奇天烈としか言いようのないお願い事に驚き動揺し
冷や汗まで出てきたのだった。
だっ、大丈夫か……洋子もとい、伯母よ!
「伯父さんね、面白かったわよぉ~。
由宇子が離婚したっていう話をした日、今言ったみたいに
伯父さんがいる前で同じこと私言ったのよ。
由宇子が薫を嫁に貰ってくんないかなぁ~って!
そしたらあの人、由宇子ちゃんが薫を貰ってくれたら
最高なんだがな……って言ったのよ?
めちゃくちゃ自然なことのようにね。
私自分が言い出したことなのになんかっ、噴出しちゃって。
そしたらあの人もね、我に返ったのか笑ってた。
絶対由宇子ちゃんに変な夫婦だって思われるなって」
~~ 遡ること約7年と数ヶ月前
由宇子が大倉将康との離婚届を出し
新居に移ってから半年程経った頃のこと ~~③
薫ね、時々だけど女の子何度か連れて来たことあるんだけど、まぁ大半
押しかけてきたっていうのが正解なんだけどね、薫がうれしそうにしてるの
一度も見たことないのよねぇ~。
それなりに相手はしてるんだけど、恋してるっていうのはなかったわね。
相手だけが盛り上がってるっていうか。
だから、薫は誰とも付き合ったことはないの。
薫がうれしそうにしてるのは、由宇子や由宇子の子供たちといる時なのよ?
気がついてないかもしれないけど。
由宇子、私上手く言えないけどこうなったら正直に言うわ。
薫が薫がって、薫ばっかりを理由にしてるけど薫だけじゃなくて
私も伯父さんもそして薫もみい~んなあなたが好きなのよ~」
そう言って顔を少し赤らめた洋子ちゃんはトイレへ逃げ込んだ?
えぇっー、これは一大事ですよ、お母さん。
……っていうか、自分。
まじですか?
いつの間に私そんなにモテ女になってたんでしょうか?
私はトイレの中に篭城している洋子ちゃんに声をかけた。
「洋子ちゃん、洋子ちゃんや伯父さんの気持ちはよぉ~く分かりました。
こんな私を好きでいてくれてありがとう。
私も洋子ちゃんや伯父さんの事は前から好きだったから相思相愛ですね。
……ってなんか恥ずかしいから今日は帰るね。
薫との結婚のお話、よく考えてみたいので時間くださいね。
薫がどう思ってるかも直接話してみないといけないし……」
話しかけていたら洋子ちゃんがトイレから出て来た。
「考えてみてくれるのね、ありがとう」
そんなこんなでその日、私は伯母の家をお暇した。