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次に目が覚めた時に見えたのは、その前に見た天井と似た、コンクリート色をしていたせいもあって、一瞬自分が同じ場所で、横たわっているものだと感じた。


しかし、それは錯覚だった。目から入る情報と体の状態で、別の部屋に寝かされていたことを理解した。

相変わらず痛みはあるものの、背中に感じる感触が、床のものではなく、柔らかなマットレスの上にいること。天井や壁が真っ平らではなく、ブロック柄になっていること。灯りの装飾も、簡素なものになっていること。そして一番の違いが、窓があったことだった。


部屋を満たす、外の光。朝か日中なのかまでは分からないが、日の光を見られたことだけでも、安堵した。いくら何でも、攫われてから二日経っているとは思えない。だから、翌日なのだと、勝手にそう思うことにした。


ただ気になるのは、その窓に鉄格子が付けられていた。魔法陣に捕まっていた部屋と同様、じめじめした部屋。そこから連想される部屋を思い浮かべた瞬間、血の気が引いた。


もしかして、ここは――……。


「おい! 目、覚ましたんなら、何か言え!」


何という無茶ぶり。というか、どうして私が目を覚めたことが分かったの。


「声を出す元気なんて、あるわけないでしょ。体痛いんだから」


キーという音ともに、部屋に入ってきたらしい男に、アンリエッタは無謀にも悪態をついた。すると、男は未だベッドの上で横たわっている、アンリエッタの顔を覗き込んだ。


別にアンリエッタは、先ほどとは違い、拘束されているわけではない。ただ痛い体が、部屋に似合わない、柔らかいマットレスから、起き上がろうとしないだけだった。


「なんだ、元気があるじゃねぇか。とりあえず、飯だ。食え」


そういえば、ユルーゲルとかいう男が、十分な食事と睡眠は約束をする、と言っていた。が、起きて早々食事なんて……。ここ、牢屋でしょ。


食べろと言われても、起き上がれない! と試しにアピールをしてみると、男はアンリエッタを抱えて、部屋にある椅子に座らせてくれた。それも何故か、クッション付き。男も呆れる素振りや、面倒だという態度をするわけでもなかった。


明らかに牢屋としか思えない部屋に、似合わないベッドと椅子。それらに備え付けられた物。口は悪いが、アンリエッタの世話をするのが、当たり前のように振る舞う男。


何が起こっているのか分からず驚いていると、さらに驚く出来事が目の前に広がった。


「お、多くないですか?」


出された食事に、思わずアンリエッタは敬語になってしまっていた。それは、テーブルの上に、埋め尽くされるほどの量だったからだ。


「まぁ、お前さんの体からすれば、多いかもしれねぇが、出すように言われてるしなぁ。それに、全部食べるのを見届けろ、っていう注文だ。頑張って食え!」

「全部って、食べろって、この量を?」

「そうだ」


多少、不思議に思わないわけ? いくら十分な食事っていったって、限度がある。それに、牢屋に置く量じゃない。


「手伝ってもらうことは出来ないの?」

「無理だ」

「私たちしかいないんだし、バレないよ」


誰に? といった感じだが、アンリエッタは男を見上げて、助けを乞うた。


「無理だ」

「何で!」

「この部屋には、監視の魔法が掛けられている。命令違反したら、すぐにバレるし、俺も何をされるか分からん。だから、無理を言うな。諦めて、ちゃっちゃと食え」


そこまで言われると、さすがにこれ以上駄々をこねられないと思い、アンリエッタは大人しく食べ始めた。

そして、先ほどの現象に納得した。この男は、私が目を覚ましてから、数分の内に声をかけてきた、その違和感に。可笑しいと思ったのだ。声を出してもいないのに、何故気がついたのかと。


理由はなんてことない。恐らく、あのユルーゲルとかいう男が、掛けた魔法なのだろう。意味分かんない魔法陣で私を攫ったり、ヘンテコな魔法を使ったりするような男だ。それくらい可笑しくはなかった。


しかし、これはまだ始まったばかりだということに、この時の私は気がつかなかった。


すべて食べ終えると、急に眠気が襲ってきた。全身苦痛の末に、満腹感を味わえば、当然そうなるのか、もしくは食事に睡眠薬が、入っていたのかは分からない。しかし、後者は可能性が薄かった。何故なら、神聖力を持っているせいなのか、傷が治りやすいのと同様に、薬関係も効き辛かったからだ。


そして、再び目覚めると、またあの魔法陣の上に寝かされていた。ここにも監視の魔法が掛けられているのか、数分後にユルーゲルが現れ、気を失うまで、神聖力を取られた。


また気がつくと、牢屋のベッドの上で、再び大量の食事を食べては、寝る。その繰り返しだった。それが、家畜のように飼育されている感覚がして、とても嫌に感じた。


それが一日に何度も起こっていた。目を覚ますたびに、牢屋の窓を確認する。監視の男も、ユルーゲルも、どれくらい経っているのか、聞いても答えてはくれないが、窓からの光の具合で、何とか推測できた。


けれど、何度も同じことを繰り返しているからと言っても、慣れることはなかった。目が覚めれば、その数分後に、激痛か大量の食事か。何が十分な食事と睡眠だ。新手の拷問じゃないか。


何時だろう、と思わなくなったのが最初だったと思う。次に、もう何度目か数えなくなった頃。そして、痛みすら通常の状態だと、錯覚し始めた頃。

いつ終わるんだろう、という考えもしなくなった頃合いで、ようやく待っていた変化が訪れた。


何度も神聖力を吸収されていた影響なのか、力を使わなくても、感じることが出来る様になった。だから、感じた。近くで私の力があるのを。


可笑しな話かもしれないが、そう思ったのだ。私の力だと。感じた瞬間、下にある魔法陣が反応した。あろうことか、その力までも吸収しようと引き寄せた。


強欲な魔法陣。作った本人にそっくりだった。けれど、それがまさか、会いたかった人を引き寄せてくれるとは、思いもよらなかった。


痛みに耐える中、何度呼んだだろう。何度、思い浮かべただろう。夢の中でも、手を伸ばしても届かなかった人。


その人の声が聞こえた。私の名前を呼んでくれている。私もそれに答えたいが、声が出ない。叫び過ぎて、声が出なかった。


それでも、呼んだ。マーカス、と。


どうして舞台が隣国に!?

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