夜。
目が覚めると、枕元のすぐ横に、楕円形の大きな穴があいてた。その前に立つと、ゆらゆらと自分が映っている。部屋が暗くて、よく見えないのでベッドサイドのライトを点けようとしたけど、なぜかスイッチが入らない。
💙「あ。阿部ちゃん」
隣りで寝ている彼氏を思い出し、声を掛ける。しかし、ゆすっても、叩いても目を覚さない。何か不思議な力が働いているように、阿部ちゃんは起きないのだった。
💙「なんだろ?これ…」
穴には靄がかかっていて、ぐにゃぐにゃしていて、見なかったことにしてそのまま布団に戻るのもなんだか惜しい気がする。
💙「これは夢だ」
そう思い込むことにして、思い切って穴の中に入ってみることにした。
興味には勝てない。
おそるおそる足を上げて、穴の中に入れてみた。ひんやりした感触がして、ぐぐぐ…っと、身体が飲み込まれていく。
💙「え?戻れない?これ…」
入ってみて気づいた。
穴の中は一方通行みたいだ。
💙「え?え?え?」
そのまま動く歩道みたいに身体が前方へ進んで行く。中は真っ暗。匂いもなにもしない。
あ、夢だ。これは夢だ。
そう解釈した。
身体が進む速度はどんどん増して行き、振り返ると自分が入ったはずの穴は遠く後ろにあって、わずかに阿部ちゃんの家の本棚が見えた。
💙「夢、これは夢」
言い聞かせるように繰り返しながら、前を見た。一点の光が見える。光に照らされた薄暗い空間の中で確かに誰かとすれ違った。
💙「えっ」
声が重なった。今のは…。
気がついたら、俺は、別の部屋で目を覚ました。
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なになにー?気になる!