テラーノベル
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「ねぇ、なんかさぁあの人絶対、俺のこと揶揄ってるよね?」
一人での歌番組出演を終えた元貴を玄関先で迎えた途端、
苦虫を噛み潰したような表情で元貴が言った。
えっと…ごめんね?
大好きな元貴の新曲初披露。
僕ももちろんリアタイしてたけど、
たまたま今日はドラマで共演させてもらってた廉くんも同じ歌番組に出演してて。
「涼ちゃんとはバディさせていただいて」
の廉くんに
「うちの藤澤、ご迷惑かけてませんか?あの人おっちょこちょいなので」
なんて
いつもの元貴なら笑顔で「ありがとうございます」と卒なく流しそうなのに…
テレビ越しに見てる僕の方がちょっとドギマギしちゃうくらいの空気感
でも、元貴のイライラの原因はきっとそこじゃなくて、
「ほんとにさぁ。りょうちゃんって馬鹿の一つ覚えなの?毎度毎度サウナって…さすがになくない?」
や、やっぱりそこだよね…
遡ること数ヶ月前。
めちゃくちゃ遠回りして、やっと元貴の想いを信じられるようになって、僕自身もちゃんと元貴に想いを伝えられて….
こんな風に大好きな人に大好きを伝えることが、自分の人生に起き得るのか…と
こんなにも幸せでいいのだろうか…と
想いを確かめ合えて、晴れて恋人同士として歩んでいくことになった僕たちだけど
いかんせん、時期が悪かった。
悪いと言うか…とてもありがたいことにデビュー10周年のプロモーション真っ只中で
しかも念願の個人活動もお互い始まった時期で
毎日毎日、それこそ分刻みのスケジュールで
ミセスの現場で会うことすら難しいような
二人きりの時間を持つことなんて夢のまた夢、みたいな。
それでも、たった5分でも良いから「僕だけの元貴」に会いたくて
ドラマの撮影が少しでも早く上がった日は
仲良くしていただいた演者の皆さんにお食事に誘っていただくことがあっても
1次会だけサラッと参加させていただいて
「藤澤さんもう帰るんすか?」と気にかけてくれる廉くんにも
「あ、今日疲れちゃったからサウナでも行こうかな〜」なんて言い訳して
マネージャーさんにも
「えっと、、今日はサウナ寄ってから帰るので」と送迎を断って
ひたすら、元貴のもとに通っていた。
どんなにハードスケジュールで疲れていても
ほんの一瞬でも二人きりの時間を持てるなら。
僕よりもずっとハードに疲れているだろう元貴が
「りょうちゃん」と嬉しそうに出迎えてくれて、僕の腕の中で甘えてくれるのが嬉しくて…。
夢中になりすぎると周りが見えなくなっちゃうのが僕の悪い癖で
早上がりの時はほぼほぼ「今日もサウナ」と言い続けていたみたい。
ドラマの番宣で
「藤澤さんめっちゃサウナ行きまくってましたよね?」と廉くんに指摘されるまで、
そんなにもサウナサウナ言ってた自覚がなくて…
たぶん思わず赤面した僕の表情を
勘の鋭い廉くんが見逃すはずもなく
それ以来会うたびに「最近サウナどうっすか?」なんて揶揄されるようになってて
たぶん「サウナ=恋人に会いにいく」くらいのことは勘付かれていそうな気配があったのだけれど
まさか、それを元貴に振るとは思ってもみなかった…
「えっと…ごめんね。
あの時は少しでも元貴に会える時間があるなら…どんな時間でも会いたいなぁってなっちゃって…でも変な時間だからサウナくらいしか言い訳が効かなくて
…バカでごめんね?」
揶揄うのは得意でも揶揄われるのは苦手な
可愛い恋人に、どうしたら機嫌を直してもらえるだろう。
僕としては廉くんになら、元貴とのことを話しても良いかな?とも思っているくらいなんだけど
やっぱり元貴はそうゆうの嫌だよね?
恐る恐る元貴の顔を窺うと
「ふーん、そんなにさぁ、俺に会いたかったんだ?りょちゃんは?」
ふふっと笑って僕を見上げてくる
そのイタズラに満ちた表情が
なんとも蠱惑的で…
「うん…。今もね、目の前に居ても、ずっと会いたいって思ってる」
そう言って、その柔らかな唇をそっと塞いだ。
コメント
2件

えー可愛すぎる