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脱衣所の前。
北斗「……一人でいけるか」
〇〇「いける」
北斗「……ほんとか」
〇〇「ほんと」
少しだけ背筋を伸ばす。
〇〇「ちゃんと入ってくる」
北斗「……長風呂すんなよ」
〇〇「了解」
ドアを開ける。
入る前に、
〇〇「北斗」
北斗「……ん」
〇〇「ありがとね」
北斗「……」
一瞬だけ間。
北斗「……早く入れ」
ぶっきらぼう。
〇〇「はーい」
くすっと笑って中へ。
ドアが閉まる。
ーーー
廊下に一人残る北斗。
北斗「……」
小さく息を吐く。
少しだけドアを見たまま、
その場に数秒立ってから、
ゆっくりリビングへ戻る。
ジェシー「どう?」
慎太郎「大丈夫そう?」
樹「倒れてない?」
きょも「心配だね」
高地「うん」
北斗「……普通」
短く。
ソファに座る。
でも、
さっきより少しだけ落ち着かない空気。
みんなもなんとなく察して、
少しだけ静かになる。
〇〇がお風呂に入ってる間、
夜は少しだけ、ゆっくり進む。
リビング。
シャワーの音が続く中——
さっきより少しラフな空気。
樹「……でさ」
ジェシー「うん」
慎太郎「はいはい」
きょも「続きね」
高地「どうぞ」
北斗「……何」
もう半分諦めてる顔。
樹「いや隠す気ないだろお前」
ジェシー「それな」
慎太郎「普通に出てる」
きょも「〇〇の話よくするしね」
高地「相談も乗ってるし」
北斗「……別に」
樹「その“別に”やめろ」
ジェシー「意味ない」
慎太郎「全部バレてる」
北斗「……」
軽くため息。
樹「でもさ」
樹「隠してないってのは分かる」
ジェシー「むしろ逆」
慎太郎「オープンすぎ」
きょも「自然だよね」
高地「うん」
北斗「……普通に話してるだけ」
樹「それがもう出てんの」
ジェシー「好きなやつの話し方」
慎太郎「温度違う」
北斗「……」
目を逸らす。
樹「この前もさ」
樹「“〇〇最近忙しそう”って」
ジェシー「言ってたな」
慎太郎「心配してた」
きょも「優しいよね」
高地「見てるんだなって思った」
北斗「……」
小さく黙る。
樹「で?」
樹「どうすんのは変わらん」
ジェシー「いくのか」
慎太郎「このままか」
きょも「大事だよ」
高地「うん」
北斗「……」
少しだけ考える。
北斗「……今はこのまま」
ジェシー「やっぱり」
慎太郎「予想通り」
樹「理由は」
北斗「……」
一瞬だけ間。
北斗「……あいつが楽そうだから」
静かに。
きょも「……」
高地「……」
ジェシー「なるほどね」
慎太郎「優しいな」
樹「自分よりそっちかよ」
北斗「……」
視線を落とす。
樹「でもさ」
樹「それでお前がしんどくなるのは?」
ジェシー「そこな」
慎太郎「耐えゲーじゃん」
きょも「無理しないでね」
高地「うん」
北斗「……大丈夫」
即。
樹「信用ならん」
ジェシー「無理だろ」
慎太郎「絶対あるって」
きょも「たとえば?」
高地「うん」
慎太郎「寝てるときとかさ」
北斗「……」
ピクッと反応。
樹「ほら」
ジェシー「分かりやす」
慎太郎「どうなん?」
北斗「……普通」
樹「普通って何」
北斗「……何もしてない」
ジェシー「それはそう」
慎太郎「当たり前」
北斗「……距離取ってる」
きょも「やっぱり」
高地「ちゃんとしてるね」
北斗「……」
少しだけ息を吐く。
北斗「……でも」
樹「お?」
北斗「……無防備だから」
ぽろっと出る。
ジェシー「はい」
慎太郎「それだ」
きょも「大変だね」
高地「うん」
北斗「……困るだけ」
小さく。
樹「好きなやつの“困る”はもうアウト」
ジェシー「認めてるようなもん」
慎太郎「確定」
北斗「……うるせぇ」
ジェシー「照れてる」
樹「珍し」
きょも「かわいいね」
高地「レアだね」
北斗「……」
グラスを軽く傾ける。
少しだけ落ち着いた声で、
北斗「……でもさ」
全員「?」
北斗「……あいつの話すのは嫌じゃない」
ジェシー「知ってる」
慎太郎「むしろ好きだろ」
樹「だから相談乗ってんだろ」
きょも「いい関係だね」
高地「うん」
北斗「……それでいい」
静かに締める。
ーーー
そのとき、
シャワーの音が止まる。
全員「……」
樹「戻すぞ」
ジェシー「通常モード」
慎太郎「はい」
きょも「OK」
高地「準備」
北斗「……」
何も言わず、
表情を戻す。
さっきまでの空気を全部しまい込んで、
いつもの距離に戻る。
ドアの向こう、
〇〇が戻ってくる気配。
数分後——
ドアが開く。
〇〇「ただいまー」
髪は少し濡れてて、
タオルを軽くかけてるだけ。
メイクも落ちて、
完全にオフの顔。
そして服装もラフでゆるい。
ジェシー「……」
慎太郎「……」
樹「……」
きょも「……」
高地「……」
一瞬、全員止まる。
樹「お前それ…」
ジェシー「無防備すぎ」
慎太郎「風呂上がりそのままじゃん」
きょも「湯気すごいね」
高地「ちゃんと乾かした方がいいよ」
〇〇「あとでやる〜」
ソファにそのまま座る。
距離、近い。
樹の隣にどさっと。
〇〇「はぁ〜さっぱり」
笑う。
でも頬はほんのり赤いまま。
酔い+風呂上がり。
ジェシー「それはやばいって」
慎太郎「色々と」
樹「自覚ある?」
〇〇「何が?」
本気で分かってない。
きょも「その感じ」
高地「ちょっと無防備かな」
〇〇「えー?」
タオルで髪わしゃわしゃしながら笑う。
北斗「……」
視線、止まる。
すぐ逸らす。
でもまた戻る。
一瞬だけ。
北斗「……」
小さく息。
ーーー
樹(小声)「ほらな」
ジェシー(小声)「これだよ」
慎太郎(小声)「無防備」
きょも(小声)「これは…」
高地(小声)「大変だね…」
北斗「……うるさい」
小さく。
〇〇「なにー?」
振り返る。
北斗「……何でもない」
〇〇「変なの」
そのまままた前向く。
〇〇「ねぇアイス残ってる?」
ジェシー「あるある」
慎太郎「持ってくる」
〇〇「やった」
無邪気に笑う。
そのままクッション抱えて、
少し前かがみ。
首元、腕、距離——
全部ゆるい。
北斗「……」
グラスを持つ手が少し止まる。
視線は向けないようにしてるのに、
どうしても一瞬いく。
樹「北斗」
ニヤッと。
北斗「……やめろ」
ジェシー「頑張れ」
慎太郎「耐えろ」
きょも「無理しないでね」
高地「応援してる」
北斗「……いらねぇ」
〇〇「?」
またきょとん。
〇〇「なんの話?」
樹「なんでもない」
ジェシー「気にすんな」
慎太郎「平和な話」
〇〇「ふーん」
また笑う。
完全に無自覚。
でも空気は、
さっきよりちょっとだけざわついてる。
北斗だけじゃなく、
全員ちょっと分かってるやつ。
その中で、
〇〇だけがいつも通り。
北斗「……」
小さく息を吐く
そのまま、ゆるい時間が続く。
慎太郎「ほい」
キッチンから戻ってきて、アイスをテーブルに置く。
〇〇「やった」
すぐ手を伸ばす。
〇〇「どれにしよ」
ジェシー「早いな」
樹「子どもか」
〇〇「チョコ」
即決。
きょも「いいね」
高地「王道」
〇〇はスプーンを取って、そのまま一口。
〇〇「……おいしい」
少し目を細める。
完全にリラックス。
慎太郎「よかったな」
ジェシー「機嫌いい」
樹「単純」
〇〇「うるさい」
笑いながら返す。
そのままソファに深く座り直す。
でもまた距離が近い。
今度は自然に北斗の方へ少し寄る。
北斗「……」
一瞬だけ固まる。
樹(小声)「ほら」
ジェシー(小声)「また来た」
慎太郎(小声)「逃げ場なし」
きょも(小声)「これは…」
高地(小声)「大変だね」
北斗「……うるさい」
また小さく。
〇〇「ん?」
スプーンくわえたまま振り向く。
〇〇「なに?」
北斗「……何でもない」
〇〇「さっきからそればっか」
少し笑って、また前を向く。
〇〇「ねぇ」
樹「ん?」
〇〇「今日さ」
〇〇「みんな優しくない?」
ジェシー「今気づいた?」
慎太郎「いつもだろ」
樹「いや今日は特にだな」
きょも「そう?」
高地「どうだろう」
〇〇「なんかさ」
〇〇「空気がやさしい」
ぽろっと言う。
一瞬、全員が少しだけ黙る。
ジェシー「……まあな」
慎太郎「そういう日もある」
樹「たまにはな」
きょも「いいじゃん」
高地「うん」
〇〇「いいねこれ」
また笑う。
そのままもう一口アイス。
北斗「……」
横でその様子を見る。
笑ってる顔。
何も考えてないみたいな無防備さ。
距離も近いまま。
北斗「……」
少しだけ視線を落とす。
手に持ってたグラスをテーブルに置く。
〇〇「ねぇ北斗」
北斗「……ん」
〇〇「食べる?」
スプーンを差し出す。
ジェシー「おい」
慎太郎「やめろ」
樹「それはやばい」
きょも「〇〇…」
高地「それは…」
〇〇「え?」
本気で分かってない顔。
北斗「……いい」
短く。
〇〇「えー美味しいのに」
そのまま自分で食べる。
〇〇「もったいな」
樹「いやお前がな」
ジェシー「距離感」
慎太郎「バグってる」
〇〇「普通でしょ」
きょも「普通ではないね」
高地「うん」
〇〇はクッションを抱え直して、少し体勢を崩す。
気づけばまた、肩が触れるくらい近い。
北斗「……」
一瞬だけ呼吸が止まる。
でも何も言わない。
〇〇「ねぇ」
北斗「……ん」
〇〇「今日さ、なんか落ち着く」
北斗「……そうか」
〇〇「うん」
それだけ言って、またアイスを食べる。
ゆっくりした時間。
誰も大きく動かない。
誰もその距離を指摘しない。
ただ少しだけ、分かってる空気のまま続く。
北斗「……」
小さく息を吐く。
でもやっぱり離れない。
そのまま隣にいる。
〇〇はスプーンを止めて、少しだけ俯く。
〇〇「ねぇ」
さっきより少しだけトーンが違う。
ジェシー「ん?」
慎太郎「どした?」
樹「急に真面目」
きょも「どうしたの?」
高地「大丈夫?」
北斗「……」
視線だけ向ける。
〇〇「さっきさ」
〇〇「お風呂入ってるときに考えてたんだけど」
少し間。
〇〇「嶺亜くんのこと」
一瞬、空気が変わる。
でも誰も茶化さない。
樹「……うん」
ジェシー「聞く」
慎太郎「いいよ」
きょも「話して」
高地「うん」
〇〇「正直ね」
〇〇「ちょっと揺らいだ」
小さく言う。
〇〇「いいなって思う部分もあったし」
〇〇「優しいし」
〇〇「ちゃんと向き合ってくれるし」
言葉を選びながら。
でも—
〇〇「でも」
少し顔を上げる。
〇〇「やっぱり」
〇〇「嶺亜くんとは友達でいたいなって思った」
静かに。
ジェシー「……そっか」
慎太郎「うん」
樹「理由は?」
〇〇「いっぱいあるけど」
少し息を吐く。
〇〇「嶺亜くん、まだジュニアじゃん」
〇〇「これからだし」
〇〇「デビューもまだなのに」
〇〇「もし私と付き合って」
〇〇「熱愛とか出たら」
〇〇「たぶん、めちゃくちゃになると思う」
部屋が静かになる。
〇〇「私のせいで」
〇〇「そのチャンスとか、流れとか」
〇〇「変わっちゃうの、嫌だ」
〇〇「嶺亜くんのために」
〇〇「それはしたくない」
しっかり言い切る。
高地「……優しいね」
きょも「ちゃんと考えてる」
慎太郎「簡単じゃない判断だな」
ジェシー「うん」
樹「でもそれってさ」
樹「〇〇が我慢してるだけじゃないの?」
〇〇「……」
少しだけ止まる。
〇〇「どうなんだろ」
〇〇「でも」
〇〇「それでいいかなって思った」
小さく笑う。
〇〇「無理してる感じじゃないし」
〇〇「今の関係も嫌じゃないし」
きょも「そっか」
高地「納得してるならいいと思う」
慎太郎「うん」
ジェシー「大事なのそこだな」
樹「……まあな」
北斗「……」
ずっと黙ってたけど、
少しだけ口を開く。
北斗「……〇〇」
〇〇「ん?」
北斗「それ」
少しだけ言葉を探す。
北斗「後悔しないか」
静かに。
〇〇「……」
少し考える。
〇〇「たぶん」
〇〇「大丈夫」
北斗「……そうか」
それ以上は言わない。
〇〇「なんかさ」
〇〇「こうやって話せるのいいね」
少しだけ空気を戻すように笑う。
ジェシー「珍しく真面目だったな」
慎太郎「な」
樹「たまにはいいだろ」
きょも「うん」
高地「聞けてよかった」
〇〇「ありがと」
少し照れたように笑う。
そのまままたクッションに寄りかかる。
でもさっきより、
ほんの少しだけ空気が変わってる。
軽さの中に、
ちゃんとした重さが混ざる。
北斗「……」
横でそれを感じながら、
静かに座ってる。
少し真面目な空気が残ったまま、
誰もすぐには動かない。
〇〇はクッションに寄りかかったまま、ぼーっとしてる。
ジェシー「……なんか一気に静か」
慎太郎「いい話だったからな」
樹「珍しいやつ」
きょも「余韻あるね」
高地「うん」
〇〇「そんなに?」
少し笑う。
その空気のまま、
数秒。
北斗「……」
一度だけ周りを見る。
そして、
北斗「お前ら」
全員「?」
北斗「いつ帰るの」
一瞬間。
ジェシー「急だな」
慎太郎「空気ぶった切った」
樹「タイミングよ」
きょも「びっくりした」
高地「どうしたの?」
北斗「……いや」
少し間を置いて、
北斗「帰るのか、泊まるのか」
淡々と。
ジェシー「あーなるほど」
慎太郎「確かに」
樹「時間的に微妙か」
きょも「もう20時過ぎてるしね」
高地「どうする?」
ジェシー「俺はどっちでもいい」
慎太郎「同じく」
樹「泊まりでもいいし帰ってもいい」
きょも「任せる」
高地「みんな次第かな」
〇〇「……」
少しだけ顔を上げる。
〇〇「どうするのが正解?」
ジェシー「知らん」
慎太郎「正解とかない」
樹「自由」
きょも「〇〇は?」
高地「どうしたい?」
〇〇「んー……」
少し考える。
でもそのまま、
〇〇「どっちでもいい」
ゆるい答え。
樹「出た」
ジェシー「一番困るやつ」
慎太郎「判断丸投げ」
きょも「でも分かる」
高地「うん」
北斗「……」
小さく息を吐く。
北斗「風呂も入ったし」
〇〇「うん」
北斗「寝るだけだろ」
〇〇「まあ」
北斗「なら泊まれば」
さらっと言う。
一瞬、全員止まる。
ジェシー「いいの?」
慎太郎「珍しい」
樹「許可出たぞ」
きょも「優しいね」
高地「いいの?」
北斗「……別に」
視線を逸らす。
〇〇「じゃあ泊まる?」
ジェシー「決まり?」
慎太郎「決まりだな」
樹「はい泊まり」
きょも「了解」
高地「じゃあそうしよう」
〇〇「やった」
少し嬉しそうに笑う。
そのまままたクッションに戻る。
北斗「……」
その様子を見て、
また小さく息を吐く。
でも、
どこか少しだけ空気が緩む。
ジェシー「布団どうする?」
慎太郎「ソファ争奪戦?」
樹「俺ソファ」
きょも「早い」
高地「平和に決めよう」
〇〇「私はここでいい」
すでに動く気ゼロ。
樹「もう寝る気じゃん」
ジェシー「確定」
慎太郎「一番早い」
北斗「……」
小さく笑うでもなく、ただ微笑む
泊まりが決まって、少しだけ空気が軽くなる。
ソファの上、〇〇はクッションを抱えたまま、
ほとんど動かない。
そのすぐ隣に北斗。
距離は近いまま——
樹「で、最終どうすんの。寝る場所」
北斗「クイーンベッド2人、客室1人、ソファ2人、あと床」
慎太郎「床だけはやだって」
きょも「いや俺も」
ジェシー「じゃあいいとこは争奪戦ね」
〇〇「じゃんけんでよくない?」
高地「平和でいいねそれ」
樹「はい決定〜」
全員「最初はグー、じゃんけんぽん!」
ジェシー「っしゃ!!」
きょも「よし!」
慎太郎「うわ負けた〜」
樹「ちょっと待って」
全員「え?」
樹「なんかさ、分かれて寝るの普通すぎない?」
ジェシー「出た、変なこと言い出すやつ」
慎太郎「でもちょっと分かる」
きょも「どういうこと?」
樹「いや、せっかく集まってんだしさ」
高地「……あー」
〇〇「なに?」
樹「全員ここで寝ればよくね?」
一瞬、静かになる。
ジェシー「雑魚寝ってこと?」
慎太郎「修学旅行じゃん」
きょも「楽しそうではある」
高地「準備も楽だしね」
〇〇「それいいじゃん」
あっさり乗る。
樹「ほら、決定」
北斗「……」
少しだけ考えて、
北斗「……好きにしろよ」
ジェシー「よし決まり〜!」
慎太郎「じゃあ場所どうする?」
樹「ソファ2人、床5人な」
きょも「バランスいいね」
高地「じゃあソファもじゃんけん?」
〇〇「いいよ〜」
全員「最初はグー、じゃんけんぽん!」
慎太郎「っしゃ!!」
〇〇「え、勝った」
ジェシー「はいソファ組決定〜」
樹「似合いすぎだろその並び」
〇〇「なにそれ」
笑う〇〇。
その隣で、北斗の動きが一瞬止まる。
北斗「……俺床でいい」
さらっと言う。
樹「だろうな」
ジェシー「我慢タイプ〜」
きょも「静かに」
高地「はいはい、布団取ってこよ」
バタバタと準備が始まる。
ソファには、〇〇と慎太郎。
床には、北斗たちが適当に場所を作る。
〇〇「なんか楽しいね」
慎太郎「わかる」
少し高い位置から聞こえる笑い声。
北斗は床に寝転びながら、
その声を、すぐ近くで聞いてる。
距離は近いのに、
届かない。
樹(小声)「見てるね〜」
ジェシー(小声)「見てるね〜」
北斗「うるせえ」
きょも(小声)「バレてるよ」
高地「はい静かにね〜」
樹「で、風呂どうすんの」
ジェシー「俺いちばん〜!」
慎太郎「早っ」
きょも「絶対適当だろ」
高地「じゃあ俺次ね」
北斗「空いたら入るわ」
〇〇「いってらっしゃい」
ジェシー「騒ぐなよ〜」
樹「お前が一番うるせえわ」
(風呂のドアが閉まる音)
慎太郎「で、なにする?」
〇〇「暇だね」
樹「待ち時間ってだいたいこうなるよな」
きょも「とりあえずしゃべるしかない」
〇〇「なんかゲームとかないの?」
北斗「トランプならある」
樹「出た、北斗ん家あるある」
慎太郎「やろうぜ」
〇〇「やる」
北斗「……ほら」
(トランプをテーブルに置く)
きょも「何やる?」
樹「シンプルにババ抜きでよくね」
慎太郎「いいじゃん」
〇〇「負けた人なんか罰ゲームね」
樹「急に盛り上げてくるじゃん」
北斗「別にいらねえだろ」
〇〇「えーつまんない」
慎太郎「北斗こういうの弱いよな」
樹「分かる」
北斗「うるせえ」
(カードを配る)
きょも「はいスタート」
〇〇「どれ取る〜?」
慎太郎「迷うな〜」
樹「顔出てんだよ」
〇〇「あはは」
(数分後)
慎太郎「うわジョーカー来た」
樹「はい終了〜」
きょも「誰だ負け」
〇〇「慎太郎じゃん」
慎太郎「えー」
樹「はい罰ゲーム」
慎太郎「なに?」
〇〇「一発芸」
慎太郎「無理だって」
ジェシー(風呂から)「やれー!」
樹「聞こえてんじゃん」
慎太郎「最悪」
〇〇「あはは」
(わちゃわちゃ笑い)
その横で、
北斗はカードを片付けながら、
少しだけ〇〇の方を見る。
〇〇は笑ってて、
距離もそのままで、
変わらないのに——
北斗「……次やる?」
ぽつり。
樹「まだやるの?」
〇〇「やる」
即答。
慎太郎「負けたばっかなのに?」
〇〇「楽しいからいいの」
きょも「いいね、その感じ」
高地(戻ってきて)「なにしてるの?」
樹「トランプ大会」
高地「混ざる」
〇〇「次は絶対勝つ」
北斗「……無理だろ」
〇〇「は?」
少しだけ顔を寄せてくる。
距離、また近くなる。
北斗、目を逸らす。
樹(小声)「はい出ました」
きょも(小声)「通常運転」
ジェシー(戻りながら)「なにそれ楽しそう〜」
慎太郎「遅いって」
また人数が戻って、
空気はさらに騒がしくなる。
樹「はい次どうぞ〜」
きょも「行ってきまーす」
慎太郎「ゆっくり入れよ〜」
〇〇「いってらっしゃい」
(ドアが閉まる音)
ジェシー「でさっきの続きだけどさ」
樹「どこまで話したっけ」
慎太郎「ソファ当たりって話」
〇〇「あれは当たりでしょ」
高地「まあ快適だよね」
きょも(戻りながら)「ただいま〜」
樹「早くない?」
きょも「ちゃんと入ったって」
ジェシー「次俺ね〜」
(入れ替わりでバタバタ)
慎太郎「なんかさ、こういう時間いいよね」
〇〇「分かる」
高地「ゆるい感じね」
(少しずつ人数が減っていく)
ジェシー「上がった〜」
樹「次俺」
慎太郎「その次俺いくわ」
きょも「じゃあ俺ラスト前」
(順番に消えていく)
〇〇「なんか一気に静かになるね」
高地「そうだね」
(さらに時間が経って)
慎太郎「上がった〜」
きょも「じゃあ俺入る」
樹「俺もそのあと」
(また静かになる)
〇〇「……」
高地「どうしたの?」
〇〇「なんでもない」
(少し間)
きょも「上がった〜」
樹「じゃあ俺ラスト前」
慎太郎「北斗最後でいいじゃん」
樹「確かに」
北斗「……別にいい」
ジェシー「決まり〜」
(また入れ替わり)
樹「上がったわ」
きょも「じゃあラスト北斗」
北斗「……行ってくる」
〇〇「いってらっしゃい」
(ドアが閉まる音)
静かになる。
さっきまでのわちゃわちゃが、嘘みたいに落ち着く。
樹「……でさ」
慎太郎「来たね」
ジェシー「この流れ」
きょも「やめとく?」
高地「いや、でも…」
〇〇「なに?」
樹「さっきの話」
〇〇「さっき?」
慎太郎「嶺亜のやつ」
〇〇「ああ」
少しだけ表情が変わる。
ジェシー「正直に聞くけどさ」
〇〇「うん」
ジェシー「ほんとにそれでいいの?」
静かに落ちる言葉。
〇〇は少し考えて、
〇〇「……いいって思ったからそうした」
樹「“思ったから”ってだけ?」
〇〇「それ以上でもそれ以下でもないよ」
慎太郎「後悔しない?」
〇〇「しない」
即答。
でも——
ほんの少しだけ間があった。
きょも「揺らいだって言ってたよね」
〇〇「うん」
高地「それでも、友達でいるって決めたんだ」
〇〇「……うん」
樹「嶺亜のこと考えて?」
〇〇「それもある」
ジェシー「“それも”?」
〇〇「……今は、仕事優先したいし」
慎太郎「そっちか」
〇〇「中途半端になるの嫌だから」
静かに言う。
きょも「そっか」
高地「〇〇らしいね」
樹「でもさ」
少しだけ声のトーンが変わる。
樹「それ、本音全部?」
〇〇「……え?」
樹「誰かのこと考えて、じゃなくて?」
空気が止まる。
〇〇「なにそれ」
少しだけ笑うけど、
完全には笑えてない。
慎太郎「いや、単純に気になっただけ」
ジェシー「うん、変な意味じゃなくて」
きょも「ただ確認したかっただけ」
高地「無理に答えなくていいよ」
少しの沈黙。
〇〇はクッションを抱え直して、
〇〇「……ほんとに、それでいいと思ってる」
ゆっくり言う。
でも視線は少しだけ下。
樹はそれを見て、
小さく息を吐く。
樹「そっか」
ジェシー「じゃあそれでいいじゃん」
慎太郎「うん」
きょも「信じるよ」
高地「うん」
空気が少しだけ柔らぐ。
でも、
完全には戻らない。
ーーーーーーーーー
北斗side
北斗「……はぁ」
ドアを閉めて、やっと一人。
服を脱いで、
シャワーをひねる音だけが響く。
北斗「……なんなんだよ」
小さく吐く。
頭に浮かぶのは、
さっきのリビング。
〇〇「やった〜」
無邪気に笑ってた顔。
慎太郎と並んで座ってた距離。
北斗「……近すぎだろ」
シャワーを浴びながら、
目を閉じる。
流したいのに、
流れない。
樹の視線も、
ジェシーのニヤつきも、
全部分かってる。
北斗「……バレてんの、だる」
苦笑い。
でもそれ以上に——
〇〇の言葉。
“揺らいだけど、友達でいたい”
北斗「……」
手が止まる。
北斗「……それでいいって、言ってたよな」
自分に言い聞かせるみたいに。
でも、
その“いい”の中に
自分は入ってない。
北斗「……は」
短く笑う。
北斗「何期待してんだよ」
シャワーの水圧を強くする。
考えないようにするみたいに。
でも、
浮かぶのはまた別の言葉。
〇〇「なんか楽しいね」
あの距離で言われた声。
北斗「……楽しいに決まってんだろ」
小さく呟く。
北斗「好きなやつがあんな近くにいんのに」
一瞬、空気が止まる。
自分で言って、
自分で黙る。
北斗「……言うなよ、マジで」
誰もいないのに。
深く息を吐く。
北斗「……嶺亜のほうがいいだろ、普通に」
ぽつり。
北斗「ちゃんと向き合ってくれるやつの方がさ」
分かってる。
〇〇が選んだ理由も。
間違ってないってことも。
北斗「……それでも」
言葉が続かない。
シャワーの音だけが残る。
北斗「……俺じゃねえのかよ」
小さく、落ちる。
そのまま顔に水を当てる。
隠すみたいに。
北斗「……だる」
もう一度だけ吐いて、
蛇口を閉める。
静かになる。
でも頭の中は、
全然静かじゃないまま。
ーーー
(風呂のドアが開く音)
北斗「……ただいま」
樹「おかえり」
ジェシー「ラストお疲れ〜」
慎太郎「長かったな」
きょも「ゆっくりだったね」
高地「さっぱりした?」
北斗「別に普通」
タオルで髪を拭きながらリビングに戻る。
その瞬間——
〇〇「ちょっと待って」
全員「ん?」
〇〇「なんかさ……」
〇〇、周りを見渡して、
〇〇「みんな北斗の服じゃない?」
一瞬、間。
樹「……あ」
ジェシー「ほんとだ」
慎太郎「俺これ借りたやつだわ」
きょも「俺も」
高地「俺もだね」
〇〇「え、やば」
笑い出す。
〇〇「統一感すごいんだけど」
ジェシー「チーム北斗じゃん」
慎太郎「部屋着提供者」
樹「スポンサー北斗」
きょも「全部同じ系統だから余計ね」
高地「落ち着いた色ばっか」
〇〇「あはは、似合ってるけど」
みんなが笑う中、
北斗は一瞬だけ固まって、
北斗「……別にいいだろ」
樹「いやいいけどさ」
ジェシー「逆に〇〇だけ違うの浮いてる」
〇〇「え、じゃあ私も借りればよかった?」
その一言。
北斗の手が止まる。
慎太郎「今からでも借りる?」
樹「着替えるの?」
〇〇「え、どうしよ」
軽いノリ。
何も考えてない顔。
北斗「……いいって」
少し強めに言う。
〇〇「え?」
北斗「そのままでいいだろ」
視線は合わせないまま。
樹(小声)「はい出ました」
ジェシー(小声)「分かりやす」
きょも(小声)「静かに」
高地「でも確かに、なんか面白いね」
慎太郎「写真撮る?」
ジェシー「撮ろ撮ろ」
〇〇「え、なにそれ」
わちゃわちゃしながら並ばされるメンバー。
その中心で、
〇〇はまだ笑ってる。
北斗は少しだけ離れた位置で、
その様子を見てる。
樹「ほら北斗も入れって」
北斗「いい」
ジェシー「主役だろ」
慎太郎「提供者」
〇〇「北斗来て」
その一言で、
北斗の足が止まる。
〇〇は、手を軽く振る。
何も知らない顔で。
北斗「……はぁ」
小さく息を吐いて、
ゆっくり近づく。
距離が、また戻る。
ジェシー「はい撮るよ〜」
シャッター音。
一瞬の、その距離。
でも北斗にとっては、
それだけで充分すぎるくらいだった。
樹「で、このあとどうする?」
ジェシー「まだ寝ないでしょこれ」
慎太郎「絶対無理」
きょも「時間的にもちょうどいいね」
高地「映画とか見る?」
〇〇「いいね、それ」
樹「北斗ん家、なんかあんの?」
北斗「適当にある」
ジェシー「適当ってなに」
慎太郎「ホラーいこ」
きょも「やだよ」
高地「却下で」
〇〇「じゃあ普通のやつがいい」
樹「じゃあ多数決」
ジェシー「コメディ派」
慎太郎「ちょい怖くらいならいける」
きょも「平和なの」
高地「俺も」
〇〇「じゃあ平和寄りで」
全員の視線、北斗へ。
北斗「……なんでもいい」
樹「はい決定〜」
ジェシー「じゃあ北斗選んで」
北斗「なんでだよ」
慎太郎「家主」
きょも「責任重大」
北斗「……はぁ」
リモコンを手に取る。
テレビをつけて、適当にスクロール。
〇〇、ソファの上で前のめりになる。
〇〇「なにある?」
北斗「うるせえ、ちょっと待て」
距離が近い。
画面を見るふりして、
少しだけ意識が逸れる。
樹(小声)「近い近い」
ジェシー(小声)「通常運転」
北斗「……これでいいだろ」
適当に一本決める。
高地「いいと思う」
きょも「じゃあそれで」
慎太郎「決まり〜」
樹「配置どうする?」
ジェシー「そのままでよくね?」
慎太郎「ソファ2人、床5人」
きょも「スクリーン的にもそれが見やすいね」
〇〇「じゃあここでいいや」
そのままソファに座り直す。
隣、慎太郎。
少しだけ距離が空いてる。
でも——
樹「北斗ここ来いよ」
床を軽く叩く。
ソファのすぐ前。
北斗「……」
一瞬だけ迷って、
北斗「……そこ座るわ」
ソファの端。
〇〇のもう片側。
慎太郎「え、挟まれた」
〇〇「あはは」
自然に詰める〇〇。
距離、また近くなる。
北斗、何も言わない。
ジェシー「はい配置完了〜」
きょも「いい感じ」
高地「じゃあ再生するね」
部屋の電気が少し落ちる。
画面の光だけが残る。
映画が流れ始める。
〇〇「静かにね」
慎太郎「お前がな」
小声の笑い。
その横で、
北斗は画面を見ながら、
ほとんど集中できてない。
すぐ隣。
〇〇の気配。
少し動くたびに触れそうな距離。
北斗「……」
何も言わないまま、
ただ、そこにいる。
映画は始まったばかり。
でも、
それどころじゃない夜。
ーーーーーーーーー
北斗side
北斗「……」
画面は流れてる。
音もちゃんと聞こえてるはずなのに、
ほとんど入ってこない。
理由は分かってる。
すぐ隣。
〇〇「え、今のちょっと面白い」
小さく笑う声。
近い。
北斗「……」
視線は画面のまま。
でも意識は完全にそっち。
慎太郎「声出すなって」
〇〇「ごめんごめん」
少し体が揺れる。
その動きで、
肩がほんの一瞬、触れる。
北斗「……っ」
反応しかけて、
すぐ抑える。
北斗「……気にすんな」
心の中でだけ。
顔は動かさない。
でも鼓動だけがやけにうるさい。
樹(小声)「集中してる?」
ジェシー(小声)「してないね」
きょも(小声)「してないね」
北斗「……聞こえてんだよ」
小さく返す。
〇〇「なに?」
北斗「なんでもねえ」
また画面に戻る。
——戻れてない。
〇〇、少しだけ前のめりになる。
その分、距離がさらに詰まる。
髪が、かすかに触れる。
北斗「……」
息が止まる。
北斗「……やめろって」
もちろん言えない。
〇〇「ね、この人さ」
急に話しかけてくる。
北斗「……なに」
〇〇「絶対こうなるよね、この後」
北斗「……知らねえよ」
ぶっきらぼう。
でもちゃんと返す。
〇〇「あ、絶対そうじゃん」
画面に戻る〇〇。
その横顔が、すぐ近くにある。
北斗「……」
少しだけ、見る。
すぐ逸らす。
また見る。
やめる。
北斗「……だる」
小さく吐く。
映画の内容なんて、
もうどうでもいい。
ただ、
この距離が、
やけにリアルで、
やけにしんどい。
北斗「……こんなんで平気なわけねえだろ」
誰にも聞こえない声。
でもその直後、
〇〇が少し体勢を崩して、
北斗の肩に、軽く寄る。
ほんの一瞬。
無意識。
北斗、完全に止まる。
北斗「……おい」
動けない。
払いのけることもできない。
そのまま数秒。
〇〇は何も気づかず、
また画面に戻る。
距離だけが残る。
北斗「……ほんと無理」
小さく笑う。
でもその顔は、
全然余裕なんてなくて。
映画は進んでる。
夜も進んでる。
でも北斗の中だけ、
ずっと同じところで止まったまま。
ーーーーーーーーー
北斗以外のSixTONES side
樹(小声)「見てる?」
ジェシー(小声)「見てる」
慎太郎(小声)「ガン見じゃん」
きょも(小声)「全然映画見てないね」
高地(小声)「分かりやすいなあ」
視線の先——
ソファの端。
北斗と〇〇。
距離、近いまま。
〇〇は普通に映画見てる。
北斗は、明らかに違う。
樹「これさ」
ジェシー「うん」
樹「どうにかできるくね?」
慎太郎「やっと来たその話」
きょも「来ると思ってた」
高地「でもどうする?」
ジェシー「単純に2人にすればよくない?」
樹「それな」
慎太郎「でも今全員いるしな」
きょも「不自然に抜けるとバレるよ」
高地「自然にいきたいね」
樹「じゃあさ」
少しニヤッとして、
樹「飲み物とか理由つけて、何人か抜ける?」
ジェシー「いいじゃん」
慎太郎「コンビニとか?」
きょも「この時間に?」
高地「いやでもありかも」
樹「3人くらい行けば、残りいい感じに分かれるだろ」
ジェシー「北斗は絶対動かないし」
慎太郎「〇〇も映画見てるしな」
きょも「結果2人残るパターンね」
高地「自然だね」
樹「よし決まり」
ジェシー「じゃあ誰行く?」
慎太郎「俺行く」
樹「俺も」
ジェシー「じゃあ俺も行くわ」
きょも「じゃあ俺と高地は残る?」
高地「うん、その方がバランスいいね」
樹「よし」
一瞬、タイミングを見て——
樹「ちょっと飲み物なくね?」
ジェシー「確かに」
慎太郎「買いに行かね?」
〇〇「え、今から?」
樹「すぐそこだし」
ジェシー「なんか欲しいのある?」
〇〇「んーじゃあ適当でいい」
慎太郎「了解〜」
きょも「気をつけてね」
高地「寒いよ多分」
(3人が立ち上がる)
ドアが閉まる音。
残るのは、
〇〇、北斗、きょも、高地。
樹(外・小声)「完璧」
ジェシー(外・小声)「いい流れ」
慎太郎(外・小声)「あとは任せた」
部屋の中——
きょも(小声)「次どうする?」
高地(小声)「もう一押しほしいね」
きょも(小声)「俺たちもいずれ抜ける?」
高地(小声)「タイミング見てね」
視線は、自然とソファへ。
北斗と〇〇。
距離はそのまま。
でも——
ここから、動かせる位置にいる。
きょも(小声)「タイミング見て抜けよ」
高地(小声)「うん、自然にね」
(映画の音だけが流れる)
〇〇「ね、このシーンさ」
慎太郎がいないことに気づいてないまま、
いつものテンションで話しかけようとして、
〇〇「あ、慎太郎いないんだった」
小さく笑う。
北斗「……さっき出た」
〇〇「そっか」
少しだけ間。
でもすぐ、
〇〇「じゃあ北斗に言うわ」
北斗「……は?」
〇〇「この後さ、絶対こうなるよね」
北斗「……知らねえよ」
ぶっきらぼう。
でもちゃんと返す。
きょも(小声)「会話成立してるじゃん」
高地(小声)「いいね」
〇〇「え、絶対そうじゃん」
少し身を乗り出す。
距離、また近くなる。
北斗「……近いって」
小さく言う。
〇〇「え?」
きょも「ちょっとトイレ行ってくる」
高地「じゃあ俺も」
さらっと立ち上がる。
〇〇「いってらっしゃい」
(2人が部屋を出る)
ドアが閉まる。
静かになる。
一気に。
残るのは——
北斗と〇〇だけ。
テレビの光だけが揺れる。
〇〇「……あれ、みんないなくなった」
北斗「……だな」
〇〇「なんか静か」
北斗「そうだな」
少しの沈黙。
映画は続いてる。
でも——
さっきまでと、全然違う空気。
〇〇「ね」
北斗「なに」
〇〇「さっきの話さ」
北斗「……どれ」
〇〇「嶺亜のやつ」
北斗の手、止まる。
北斗「……」
〇〇「みんな、なんか気にしてたよね」
北斗「……まあな」
〇〇「どう思う?」
まっすぐ聞く。
逃げ場ない距離で。
北斗「……」
一瞬、言葉を選ぶ。
でも、
ごまかせない。
北斗「……いいんじゃねえの」
短く。
〇〇「ほんとに?」
北斗「お前が決めたことだろ」
〇〇「それはそうだけど」
少しだけ食い下がる。
北斗、視線を外す。
北斗「……後悔しないならいいだろ」
〇〇「……」
沈黙。
〇〇は少しだけ考えて、
〇〇「北斗ならどうする?」
その一言。
北斗、完全に止まる。
北斗「……は?」
〇〇「もし同じ状況だったら」
逃げ場のない質問。
北斗「……知らねえよ」
〇〇「えー」
北斗「人によるだろ」
〇〇「北斗の場合」
北斗「……」
言えない。
“好きなら行く”なんて。
言ったら終わる。
北斗「……多分」
少しだけ低くなる声。
北斗「行かねえ」
〇〇「え?」
北斗「中途半端なの嫌いだし」
〇〇「……そっか」
静かに落ちる。
〇〇「やっぱ似てるかもね、そこ」
少し笑う。
でも——
その言葉に、
北斗は笑えない。
北斗「……似てねえよ」
ぽつり。
〇〇「え?」
北斗「全然違う」
小さく。
でも確実に。
空気が、少しだけ変わる。
映画は流れてる。
でももう、
誰もちゃんと見てない。
〇〇「どこが?」
北斗「……」
少しだけ間が空く。
北斗「お前は、ちゃんと考えて選んでる」
〇〇「それ褒めてる?」
北斗「別に」
〇〇「じゃあ北斗は違うの?」
北斗「……違う」
短く。
〇〇「どう違うの」
逃がさない聞き方。
北斗「……」
視線、逸らす。
でも——
そのままにできない空気。
北斗「……俺は」
一瞬だけ言葉を探して、
北斗「選べねえから」
〇〇「え?」
北斗「どっちも中途半端になるくらいなら、最初から動かねえ」
〇〇「……」
静かになる。
〇〇は少しだけ北斗を見る。
〇〇「でもそれって」
北斗「ん?」
〇〇「もったいなくない?」
北斗「……別に」
〇〇「だってさ」
少しだけ前に寄る。
距離、また縮まる。
〇〇「本当は行きたいのに行かないってことでしょ?」
北斗「……」
何も言えない。
図星だから。
〇〇「それでいいの?」
北斗「……よくねえよ」
思わず出る。
自分でも驚くくらい、素直に。
〇〇「じゃあなんで」
北斗「……」
言葉、止まる。
でももう、
さっきまでみたいに逃げきれない。
北斗「……壊したくねえから」
〇〇「なにを?」
北斗「……」
一瞬、視線がぶつかる。
北斗「……今のまま」
小さく落ちる声。
〇〇、少しだけ目を細める。
〇〇「それってさ」
北斗「……」
〇〇「相手のため?」
北斗「……半分」
〇〇「半分?」
北斗「……自分のため」
〇〇「……」
また静かになる。
映画の音だけが流れる。
でも——
空気はさっきと全然違う。
〇〇「北斗ってさ」
北斗「なに」
〇〇「意外と臆病だよね」
北斗「……うるせえ」
でも否定はしない。
〇〇、少し笑う。
〇〇「でも優しい」
北斗「……は?」
〇〇「だって壊したくないってことでしょ」
北斗「……」
返せない。
〇〇「私、そういうの嫌いじゃないよ」
軽く言う。
何気なく。
でも——
北斗には重い。
北斗「……そう」
それだけ。
それ以上は言えない。
言ったら、
全部変わる気がするから。
少しの沈黙。
〇〇はまた画面に目を戻す。
でも完全には戻ってない。
〇〇「ね」
北斗「なに」
〇〇「映画、全然入ってこなくない?」
北斗「……今更かよ」
〇〇「あはは」
笑う。
距離はそのまま。
でもさっきより、
少しだけ違う意味で近い。
外から、
ガチャッとドアの音。
樹「ただいまー」
ジェシー「寒っ、マジで」
慎太郎「買ってきたぞー」
〇〇「おかえり〜」
きょも「おかえり」
高地「ありがとう」
袋がテーブルに置かれて、また一気に空気が賑やかになる。
ジェシー「ほら、これ〇〇のやつ」
〇〇「ありがと」
慎太郎「北斗もなんか飲む?」
北斗「……適当でいい」
樹「はい無糖ね」
北斗「なんで分かんだよ」
樹「顔」
笑いが起きる。
でもその中で、
樹は一瞬だけソファを見る。
〇〇と北斗。
さっきより、ほんの少しだけ距離が自然になってる。
樹(小声)「お?」
ジェシー(小声)「進んだ?」
慎太郎(小声)「なんかあったなこれ」
きょも(小声)「空気違う」
高地(小声)「うん、ちょっとね」
〇〇「なにこそこそしてんの」
樹「なんでもないでーす」
ジェシー「映画どう?進んだ?」
〇〇「全然見てない」
慎太郎「だろうな」
きょも「巻き戻す?」
高地「せっかくだしね」
北斗「……好きにしろ」
リモコンを取ろうとする北斗。
そのとき、
〇〇「ちょっと待って」
北斗「……なに」
〇〇「さっきの続き、あとでいい?」
一瞬だけ、小さい声で。
他のメンバーには聞こえないくらい。
北斗「……」
目が合う。
北斗「……別に」
短く返す。
でも、ちゃんと返す。
〇〇、少しだけ笑う。
〇〇「ありがと」
その一言。
樹(小声)「はい確定」
ジェシー(小声)「来ました」
慎太郎(小声)「これはデカい」
きょも(小声)「静かにね」
高地(小声)「見守ろう」
ジェシー「はい巻き戻しまーす」
慎太郎「今度こそちゃんと見るぞ」
〇〇「多分無理」
樹「もう諦めてるじゃん」
笑いが戻る。
でも——
さっきまでと違う。
〇〇は時々、隣を見る。
北斗も、ほんの少しだけ反応する。
言葉にはしないけど、
確実に、
何かが変わってる。
映画はまた最初から流れ始める。
でも、
この夜はもう、
最初とは違う。
ジェシー「はい巻き戻した〜」
慎太郎「今度こそ集中な」
〇〇「無理かも」
樹「もう諦めんなよ」
きょも「静かにね」
高地「スタート」
(映画がまた流れ出す)
さっきより少しだけ落ち着いた空気。
でも——
樹(小声)「さっき何話してた?」
ジェシー(小声)「絶対あれだろ」
慎太郎(小声)「顔見れば分かる」
きょも(小声)「ちょっと変わってる」
高地(小声)「いい方向にね」
樹「もう一押し必要じゃね?」
ジェシー「だな」
慎太郎「どうする?」
樹「……これ終わったらさ」
きょも「うん」
樹「眠い組ってことで分ける?」
高地「自然だね」
ジェシー「俺眠い側いくわ」
慎太郎「俺も」
きょも「じゃあ俺もそっち」
高地「俺残る?」
樹「いや、一気に抜けた方がいい」
ジェシー「確かに」
慎太郎「2人残しな」
きょも「決まりだね」
高地「タイミングだけ見よう」
(数分後)
〇〇「ね、これさ」
北斗「……なに」
〇〇「やっぱさっき言った通りじゃない?」
北斗「……まだ分かんねえだろ」
〇〇「絶対そう」
小さく笑う。
距離もそのまま。
さっきより自然に話してる。
樹(小声)「いい感じだな」
ジェシー(小声)「うん」
慎太郎(小声)「そろそろいく?」
きょも(小声)「今だね」
高地(小声)「いこう」
樹「……あー」
わざとらしく伸びをする。
樹「ちょっと眠くね?」
ジェシー「わかる」
慎太郎「俺も」
きょも「時間的にもね」
高地「先寝る?」
〇〇「え、もう?」
樹「いやちょっとだけ横になるわ」
ジェシー「床もうあるし」
慎太郎「先落ちるかも」
きょも「おやすみ言っとくね」
高地「おやすみ〜」
〇〇「え、自由だなほんと」
笑う。
でも止めない。
樹「北斗、あと頼んだ」
北斗「……は?」
ジェシー「家主〜」
慎太郎「任せた」
きょも「おやすみ」
高地「おやすみ」
(5人、わざとらしく静かに横になる)
電気も少し落ちる。
数分後——
寝たフリ。
完全に。
リビングには、
映画の音と、
ソファの2人だけが起きてる空気。
〇〇「……寝るの早くない?」
北斗「……あいつらだしな」
〇〇「まあね」
小さく笑う。
少しの沈黙。
〇〇「ね」
北斗「なに」
〇〇「さっきの続き」
北斗「……」
逃げられない距離。
逃げられない空気。
〇〇「あとでいいって言ったけど」
北斗「……」
〇〇「今でもいい?」
静かに落ちる言葉。
映画は流れてる。
でももう、
誰も見てない。
北斗「……好きにしろ」
低く返す。
でも——
拒まない。
〇〇、少しだけ息を吸って、
ゆっくり口を開く。
〇〇「さっきさ」
北斗「……」
〇〇「“壊したくない”って言ってたじゃん」
北斗「……言ったな」
〇〇「あれさ」
少しだけ間を置く。
〇〇「誰とのこと?」
北斗「……」
一瞬で空気が張る。
北斗「……別に」
〇〇「別にじゃないでしょ」
逃がさない。
距離も、そのまま。
〇〇「私、含まれてる?」
北斗の呼吸が止まる。
北斗「……なんでそうなる」
〇〇「だってさ」
少しだけ顔を傾ける。
〇〇「今の話の流れ的に、そうじゃない?」
北斗「……」
否定、できない。
〇〇「違うなら違うでいいよ」
北斗「……」
〇〇「でもさ」
声が少しだけ静かになる。
〇〇「北斗って、そういうとこあるよね」
北斗「……なにが」
〇〇「自分の気持ち、後回しにするやつ」
北斗「……」
何も言えない。
図星だから。
〇〇「ね」
北斗「……なに」
〇〇「もしさ」
ほんの少しだけ、間。
〇〇「壊れなかったらどうするの?」
北斗「……は?」
〇〇「今のままじゃなくても、ちゃんと続くって分かったら」
北斗「……」
考えたことないわけじゃない。
でも——
考えないようにしてた。
〇〇「それでも行かない?」
北斗「……」
言葉が出ない。
〇〇はそのまま待つ。
急かさない。
ただ、見てる。
北斗「……」
深く息を吐く。
北斗「……分かんねえ」
正直な答え。
〇〇「そっか」
否定しない。
〇〇「でもさ」
少しだけ笑う。
〇〇「北斗が思ってるより、そんな簡単に壊れないと思うよ」
北斗「……なんで言い切れる」
〇〇「なんとなく」
北斗「適当すぎだろ」
〇〇「あはは」
小さく笑う。
でもそのあと、
〇〇「少なくとも、私は」
北斗「……」
〇〇「そんなことで離れたりしないよ」
軽く言う。
何気なく。
でも——
北斗には、全然軽くない。
北斗「……」
言葉が出ない。
〇〇「だからさ」
北斗「……なに」
〇〇「もうちょっと、自分優先でもいいんじゃない?」
北斗「……」
少しの沈黙。
映画の音だけが流れる。
でも、
その音すら遠い。
北斗「……無理だろ」
ぽつり。
〇〇「なんで」
北斗「……」
視線、少しだけ落とす。
北斗「……相手が、どう思ってるか分かんねえのに」
〇〇「……」
一瞬だけ、〇〇の表情が変わる。
〇〇「分かんなかったら、聞けばいいじゃん」
北斗「……簡単に言うな」
〇〇「簡単じゃないけど」
少しだけ真っ直ぐに。
〇〇「北斗が思ってるより、ちゃんと答えるよ」
北斗「……」
その言葉の意味。
気づきそうで、
まだ掴めない。
北斗「……」
少しだけ顔を上げる。
目が合う。
距離、近いまま。
逃げ場、ないまま。
北斗「……じゃあさ」
低く、落ちる声。
〇〇「うん」
北斗「……今、聞いていいのかよ」
空気が止まる。
完全に。
映画の音だけが、遠くで流れてる。
〇〇「いいじゃん!」
北斗「……は?」
〇〇「応援する」
あっさり。
迷いなく。
北斗「……」
一瞬、思考が止まる。
〇〇「ちゃんと聞いた方がいいよ」
北斗「……」
〇〇「北斗がそこまで考えてるなら、絶対無駄じゃないし」
笑う。
本気でそう思ってる顔。
でも——
ズレてる。
北斗「……誰を」
ぽつり。
〇〇「え?」
北斗「……誰だと思ってんの」
〇〇「え、えっと」
少し考えて、
〇〇「好きな人でしょ?」
北斗「……」
〇〇「誰か分かんないけど、でもいいじゃん」
軽い。
何も知らないまま。
〇〇「応援するよ、ちゃんと」
その言葉が、
やけに刺さる。
北斗「……いらねえよ」
低く返す。
〇〇「え、なんで」
北斗「……」
言えない。
言ったら終わる。
〇〇「でもさ」
空気を変えるみたいに、
〇〇「私も話したいし」
北斗「……なにを」
〇〇「廉と」
北斗の視線が止まる。
北斗「……は?」
〇〇「ちゃんとさ、話してないじゃん最近」
北斗「……」
〇〇「この前のこともあるし」
少しだけ真面目な顔。
〇〇「ちゃんと向き合いたいなって」
北斗「……」
さっきまでの空気が、
一気に変わる。
〇〇「逃げるの嫌だし」
北斗「……そうかよ」
短く。
〇〇「うん」
北斗「……」
言葉が続かない。
頭の中が、ぐちゃぐちゃになる。
さっきまでの“聞いていいのかよ”が、
一気に遠くなる。
北斗「……好きにしろ」
少しだけ冷たくなる声。
〇〇「うん、そうする」
気づかない。
全然。
北斗の変化にも。
北斗「……」
視線を外す。
もう、
目を合わせられない。
映画の音だけが流れる。
でも、
さっきまでとは全然違う。
〇〇「ね、北斗もさ」
北斗「……なに」
〇〇「ちゃんと聞いたらいいよ」
北斗「……」
〇〇「応援してる」
無邪気に笑う。
その言葉が、
一番きつい。
北斗「……」
何も返さない。
返せない。
距離は近いままなのに、
さっきより、
ずっと遠い。
ーーーーーーーーー
(床で寝たフリ中・小声)
樹「……聞いた?」
ジェシー「全部聞こえた」
慎太郎「やばいって今の」
きょも「静かに、起きてるのバレる」
高地「でもこれは……」
樹「想像以上にすれ違ってるな」
ジェシー「“応援する”はきついって」
慎太郎「しかも廉の話出す?」
きょも「〇〇は本気で分かってないね」
高地「うん、悪気ゼロ」
樹「北斗の顔見た?」
ジェシー「見た。終わってた」
慎太郎「完全にダメージ入ってる」
きょも「今、追い打ちはダメだね」
高地「うん、ここで動くと逆効果」
樹「でもさ、このままはもっとダメだろ」
ジェシー「確かに」
慎太郎「どうすんの」
樹「一回、流すしかない」
きょも「空気戻す?」
高地「うん、自然にね」
ジェシー「俺トイレ行くフリして起きる?」
樹「いいね、それ」
慎太郎「で、軽く茶化してリセット」
きょも「その後どうする?」
樹「明日だな」
高地「落ち着いてから?」
樹「うん。北斗に一回吐かせる」
ジェシー「それ必要」
慎太郎「〇〇側もどうにかしないとじゃね?」
きょも「誰かが軽くヒント出すとか?」
高地「直接じゃなくてね」
樹「うん、気づかせる方向」
ジェシー「一番難しいやつじゃん」
慎太郎「でもそれしかない」
きょも「無理やりはダメだしね」
高地「2人ともちゃんと向き合ってほしい」
樹「……よし」
小さく息を吐く。
樹「今回は一旦引く」
ジェシー「了解」
慎太郎「任せた」
きょも「タイミング見て」
高地「うん」
(少し間)
ジェシー「……じゃあ俺動くわ」
ゆっくり体を起こす。
“寝ぼけたフリ”で。
ジェシー「……ん、トイレ……」
わざとらしく体を起こして、ゆっくり歩く。
〇〇「起きたの?」
ジェシー「んー…映画うるさくて」
北斗「……」
〇〇「あはは、ごめん」
ジェシー「いや大丈夫〜」
トイレに行くふりをして、そのまま戻ってくる。
ジェシー「……あれ、なんか静かじゃね?」
〇〇「さっきまでしゃべってたからね」
ジェシー「ふーん」
チラッと北斗を見る。
北斗は画面見てるふり。
完全に分かりやすい。
ジェシー「なに、いい雰囲気?」
〇〇「は?」
北斗「……やめろ」
ジェシー「え、違うの?」
〇〇「違うでしょ」
即答。
北斗「……」
その一言でまた少し空気が落ちる。
ジェシー「えー、もったいな」
〇〇「なにが」
ジェシー「いや別に〜」
軽く流す。
でも、
樹(小声)「いい感じに混ぜてる」
慎太郎(小声)「ナイス」
きょも(小声)「空気戻ってきた」
高地(小声)「よかった」
ジェシー「てかさ」
ソファの背もたれに腕を乗せて、
ジェシー「恋バナしてたんでしょ?」
〇〇「なんで分かるの」
ジェシー「顔」
北斗「……」
〇〇「してたけど」
ジェシー「いいじゃん」
〇〇「普通の話だよ」
ジェシー「普通のが一番深いんだって」
〇〇「あーそれ言う人いるよね」
少し笑う。
空気が少しだけ軽くなる。
ジェシー「北斗なんてさ」
北斗「やめろ」
即止める。
ジェシー「え、まだ何も言ってない」
〇〇「なに?」
北斗「なんでもねえよ」
ジェシー「いやいや」
わざとらしくためる。
ジェシー「こいつさ、意外と——」
北斗「ジェシー」
少し強め。
ジェシー「はいはい」
手を上げて降参。
でもニヤけてる。
ジェシー「まあいいや、今は」
〇〇「気になるんだけど」
北斗「気にすんな」
〇〇「なんで」
北斗「……」
言えない。
ジェシー「そのうち分かるよ」
〇〇「なにそれ」
きょも(寝たフリしながら小声)「いい止め方」
樹(小声)「焦らす作戦」
慎太郎(小声)「効くやつ」
高地(小声)「うん、いいね」
ジェシー「てか映画どうなってんの」
〇〇「全然見てない」
ジェシー「だろうね」
北斗「……」
また少しだけ静かになる。
でも、
さっきみたいな重さじゃない。
少しだけ戻った空気。
ジェシー「……なあ」
ぽつり。
〇〇「なに?」
ジェシー「もしさ」
北斗が一瞬だけ反応する。
ジェシー「誰かが、ちゃんとお前に気持ち言ったらさ」
〇〇「うん」
ジェシー「ちゃんと向き合う?」
〇〇「……」
少し考えて、
〇〇「うん、向き合うよ」
北斗の手が止まる。
ジェシー「そっか」
軽く笑う。
ジェシー「なら大丈夫だな」
〇〇「なにが?」
ジェシー「なんでもない」
また流す。
でも——
確実に、
一歩だけ前に進んでる。
北斗は何も言わない。
でも、
さっきよりほんの少しだけ、
呼吸が戻ってる。
ーーーーーーーーー
北斗side
〇〇「いいじゃん!応援する」
北斗「……」
一瞬、音が消えたみたいに感じる。
北斗「……は?」
理解が追いつかないまま、
〇〇「ちゃんと聞いた方がいいよ」
軽く、当たり前みたいに言う。
北斗「……」
ズレてる。
完全に。
〇〇「北斗がそこまで考えてるならさ」
北斗「……」
〇〇「絶対無駄じゃないし」
笑う。
その顔、さっきまでと同じ。
何も変わってない。
変わってるのは、
北斗の中だけ。
北斗「……誰を」
気づいたら出てた。
〇〇「え?」
北斗「……誰だと思ってんの」
〇〇「えっと……好きな人でしょ?」
北斗「……」
違うとも言えない。
でも、
それだけじゃない。
〇〇「分かんないけど、でもいいじゃん」
軽い。
全部、軽い。
〇〇「応援するよ」
北斗「……いらねえよ」
反射で出る。
少しだけ強く。
〇〇「え、なんで」
北斗「……」
言えるわけない。
“お前だよ”なんて。
〇〇「でもさ」
そのまま続く声。
〇〇「私も話したいし」
北斗「……なにを」
〇〇「廉と」
その瞬間、
全部ひっくり返る。
北斗「……」
さっきまでの流れが、
一気に遠くなる。
〇〇「ちゃんと向き合いたいなって」
北斗「……そうかよ」
勝手に口が動く。
〇〇「うん」
北斗「……」
胸の奥が、ざわつく。
北斗「……好きにしろ」
冷たくなる声。
止められない。
〇〇「うん、そうする」
気づかない。
全然。
北斗「……」
視線を外す。
もう無理だと思う。
さっきの、
“今聞いていいのかよ”も、
全部、
どうでもよくなる。
〇〇「ね、北斗もさ」
北斗「……なに」
〇〇「ちゃんと聞いたらいいよ」
北斗「……」
〇〇「応援してる」
笑う。
無邪気に。
北斗「……」
喉の奥で何か詰まる。
北斗「……は」
小さく、乾いた笑い。
北斗「……応援とか」
いらない。
そんな立場じゃない。
北斗「……」
分かってたはずなのに。
期待なんかしてなかったのに。
北斗「……だる」
小さく吐く。
でもその言葉より、
ずっと重いものが残る。
すぐ隣。
触れそうな距離。
なのに、
一番遠い。
北斗「……」
何も言わない。
言えない。
ただ、
映画の光だけが横顔を照らしてる。
見てるふりして、
何も見えてないまま。
ーー
〇〇「ね、なんで“大丈夫”なの?」
ジェシー「ん?」
〇〇「今の」
ジェシー「いや〜なんとなく」
〇〇「絶対なんかあるじゃん」
樹(寝たフリ・小声)「食いついた」
慎太郎(小声)「いいぞ」
きょも(小声)「自然にいけてる」
高地(小声)「うん」
ジェシー「あるようでないやつ」
〇〇「なにそれ」
北斗「……」
ジェシー、ちらっと北斗を見る。
北斗は相変わらず画面を見てるふり。
でもさっきより、
少しだけ余裕が戻ってる。
ジェシー「じゃあさ、逆に」
〇〇「なに?」
ジェシー「もし“身近な人”だったら?」
〇〇「身近?」
ジェシー「うん、例えばさ」
わざとらしく間を作る。
ジェシー「今ここにいる誰かとか」
空気が、ほんの少しだけ止まる。
〇〇「え、なにそれ」
笑うけど、
完全に流せてない。
北斗「……」
指がまた止まる。
ジェシー「ありえるじゃん」
〇〇「いやいや」
即否定しかけて、
〇〇「……でも、なくはないか」
少しだけトーンが落ちる。
樹(小声)「来た」
慎太郎(小声)「いいぞ」
きょも(小声)「気づくかもね」
高地(小声)「うん」
ジェシー「その時どうする?」
〇〇「……」
少し考える。
さっきより、ちゃんと。
〇〇「ちゃんと聞くよ」
ジェシー「うん」
〇〇「逃げない」
ジェシー「いいじゃん」
〇〇「でもさ」
ジェシー「ん?」
〇〇「分かんないよね、そういうのって」
ジェシー「まあな」
〇〇「だって普通に接してた人が急にってことでしょ?」
北斗「……」
その言葉、
まっすぐ刺さる。
〇〇「気づけなくない?」
ジェシー「気づかないやつは気づかない」
〇〇「でしょ」
ジェシー「でも」
少しだけ真面目な声。
ジェシー「サインは出てると思うけどね」
〇〇「サイン?」
ジェシー「うん」
ジェシー、また北斗を見る。
一瞬だけ。
ジェシー「分かる人には分かるやつ」
〇〇「え〜分かんない」
笑う。
でも、
ほんの少しだけ考えてる顔。
北斗「……」
何も言わない。
でも、
さっきより確実に、
“終わってない側”に戻ってる。
ジェシー「まあいいや」
軽く戻す。
ジェシー「映画見る?」
〇〇「見る」
北斗「……」
リモコンを握り直す。
さっきより少しだけ、
力が抜けてる。
〇〇「ね、北斗」
北斗「……なに」
〇〇「さっきの話さ」
北斗「……」
また来る。
でも今度は、
逃げたいだけじゃない。
〇〇「あとでちゃんと聞くから」
北斗「……」
一瞬、目が合う。
北斗「……好きにしろ」
同じ言葉。
でも——
さっきとは、少し違う。
ほんの少しだけ、
可能性が残ってる言い方。
樹(小声)「戻したな」
慎太郎(小声)「ナイスすぎ」
きょも(小声)「いい流れ」
高地(小声)「うん」
ジェシー「よし、続きいくぞ〜」
映画がまた流れ出す。
でも、
さっきよりちゃんと、
“次”に繋がる空気になってる。
樹「……あ、やば」
慎太郎「なに」
樹「時間」
ジェシー「何時?」
高地「え、もうこんな?」
きょも「日付変わってるじゃん」
〇〇「ほんとだ」
慎太郎「そりゃ眠くなるわ」
ジェシー「ならんけど」
樹「お前だけだよ」
〇〇「そろそろ寝る?」
きょも「そうだね」
高地「電気どうする?」
樹「消すか」
北斗「……テレビも切る」
リモコンを手に取る。
一瞬だけ画面を見る。
でも特に何も言わず、
(ピッ)
部屋が一気に静かになる。
光も消えて、
残るのは薄暗い間接照明だけ。
慎太郎「うわ、急に夜だな」
ジェシー「さっきまで明るかったのに」
きょも「配置そのままでいい?」
樹「ソファ2人、床5人な」
高地「毛布あるよ」
〇〇「ありがとう」
わちゃわちゃとそれぞれ場所につく。
結局——
ソファには〇〇と慎太郎。
床には、樹・ジェシー・きょも・高地・北斗。
〇〇「おやすみ〜」
慎太郎「おやすみ」
ジェシー「早っ」
樹「絶対まだ寝ないだろ」
きょも「静かにね」
高地「おやすみ」
北斗「……おやすみ」
小さく。
短く。
床に横になりながら、
ソファの方に背を向ける。
でも——
聞こえる。
〇〇の小さい動き。
慎太郎との軽い会話。
距離は近いのに、
見えない位置。
北斗「……」
目を閉じる。
閉じても、
さっきの会話が残ってる。
“向き合うよ”
“サインは出てる”
北斗「……」
小さく息を吐く。
眠れる気がしない。
そのとき——
ソファの上で、
〇〇が少しだけ体勢を変える音。
クッションが動く。
慎太郎「狭くない?」
〇〇「ちょっとだけ」
笑い声。
北斗の指が、少しだけ動く。
北斗「……」
何も言わない。
言えない。
でも——
さっきより、
ほんの少しだけ、
諦めきれてない自分がいる。
部屋は静かになる。
少しずつ、
会話も減っていく。
でも、
完全には眠らない夜。
それぞれが、
それぞれのことを考えたまま。
樹「……まだ寝ねえの?」
ジェシー「寝れん」
慎太郎「同じく」
きょも「静かにね」
高地「でもみんなスマホでしょ」
薄暗い中、画面の光だけがぽつぽつ浮かぶ。
床組もソファ組も、
それぞれ無言でスクロールしてる。
〇〇「……」
ソファの上。
クッション抱えたまま、
スマホ見てたけど——
〇〇「……ねむ」
ぽつり。
慎太郎「早っ」
〇〇「むり」
力抜けるみたいに横になる。
スマホ、手元に置いたまま。
慎太郎「ちゃんと寝ろよ」
〇〇「んー……」
返事になってない。
数秒後、
呼吸がゆっくりになる。
樹(小声)「はや」
ジェシー(小声)「秒じゃん」
きょも(小声)「疲れてたんだね」
高地(小声)「うん」
慎太郎「……」
隣で一瞬確認して、
慎太郎「ガチで寝たわ」
小さく笑う。
その声に反応する人はいない。
〇〇は完全に寝てる。
無防備に。
北斗「……」
床から、少しだけ視線を上げる。
ソファの上。
暗くてはっきりは見えないけど、
輪郭だけで分かる。
北斗「……」
また目を閉じる。
でも、
すぐ開ける。
ジェシー(小声)「見てるね〜」
樹(小声)「見てるね〜」
北斗「……うるせえ」
小さく返す。
でも否定はしない。
きょも(小声)「どうする?」
樹(小声)「まだ動かない」
高地(小声)「自然にね」
慎太郎(小声)「任せた」
静かなまま、
時間だけが少しずつ進む。
スマホの光も一つずつ消えていく。
ジェシー「……俺も寝るわ」
樹「おやすみ」
きょも「おやすみ」
高地「おやすみ」
慎太郎「おやすみ」
北斗「……」
何も言わない。
でも、
まだ起きてる。
ソファの上。
〇〇は動かない。
完全に寝てる。
北斗「……」
少しだけ体を起こす。
誰も見てないと思ってる。
でも——
樹(小声)「来た」
慎太郎(小声)「動いた」
きょも(小声)「静かに」
高地(小声)「見守ろ」
北斗はゆっくり立ち上がる。
音を立てないように。
ソファに近づく。
〇〇のすぐそば。
北斗「……」
一瞬だけ、迷う。
でも——
そっと、落ちかけてたクッションを整える。
髪が少しだけ顔にかかってるのを見て、
北斗「……」
手を伸ばしかけて、
止める。
北斗「……」
触れない。
そのまま、少しだけ見て、
静かに離れる。
また床に戻る。
樹(小声)「触れないんかい」
ジェシー(小声)「我慢タイプ」
きょも(小声)「北斗らしい」
高地(小声)「うん」
北斗「……寝ろよ」
小さく言う。
でもその声は、
誰にも届かないくらい小さくて。
夜はそのまま、
静かに深くなっていく。
北斗「……」
静かに床に戻ろうとした、その瞬間——
ドサッ
〇〇「っ……」
全員「!?」
慎太郎「え!?」
樹「落ちた!?」
ジェシー「うわマジか」
きょも「大丈夫!?」
高地「〇〇!?」
ソファの下、
〇〇がそのまま床に落ちてる。
クッションも一緒に転がってる。
〇〇「……ん」
完全には起きてない。
寝ぼけたまま。
北斗「……っ」
一番近くで、固まる。
動けない一瞬。
慎太郎「え、怪我してない?」
樹「頭打ってない?」
ジェシー「起きてる?」
きょも「〇〇、大丈夫?」
高地「ちょっとライトつけるね」
北斗「……いい」
低く止める。
北斗「起きる」
静かにしゃがみ込む。
〇〇「……んー……」
目、半分も開いてない。
完全に寝ぼけてる。
北斗「おい」
小さく声かける。
〇〇「……北斗?」
ぼんやり。
北斗「大丈夫か」
〇〇「……んー……」
状況理解してない顔。
樹(小声)「無傷っぽいな」
慎太郎(小声)「びびった」
ジェシー(小声)「寝相やば」
きょも(小声)「完全に寝てる」
高地(小声)「どうする?」
〇〇「……どこ……」
北斗「床」
〇〇「……なんで……」
北斗「落ちた」
〇〇「……あー……」
納得してるのかしてないのか、
そのまま力抜ける。
また寝そう。
北斗「……おい」
少しだけ焦る。
〇〇「……ねむい……」
完全にオフ。
慎太郎「ソファ戻す?」
樹「いやまた落ちるだろ」
ジェシー「床のが安全じゃね?」
きょも「確かに」
高地「毛布敷く?」
北斗「……」
一瞬だけ考えて、
北斗「そのままでいい」
自分の近くにスペース作る。
クッションをさっと寄せて、
北斗「ここ」
小さく。
〇〇「……ん……」
ほぼ無意識で移動。
そのまま、
北斗のすぐ隣に落ち着く。
距離、ほぼゼロ。
全員「……」
静かに見てる。
樹(小声)「結果これか」
ジェシー(小声)「強制イベント」
慎太郎(小声)「神展開」
きょも(小声)「静かにね」
高地(小声)「起こさないように」
〇〇「……」
もう完全に寝てる。
呼吸も安定してる。
北斗「……」
横に寝転ぶ。
近い。
さっきよりずっと。
北斗「……」
少しだけ横を見る。
暗い中でも分かる距離。
北斗「……ほんとに」
小さく吐く。
北斗「……無理」
でも、
離れない。
そのまま目を閉じる。
今度は、
さっきより少しだけ
眠れる気がする夜。
高地「……俺、ソファ行くわ」
樹「え、なんで」
高地「いや、なんかその方がよくない?」
ジェシー(小声)「察し早」
慎太郎(小声)「さすが」
きょも(小声)「ナイス判断」
高地、静かに立ち上がる。
ソファの方へ移動。
慎太郎「お、じゃあ俺こっち詰めるわ」
ソファ側、少しだけ調整。
結果——
ソファ:高地+慎太郎
床:5人+〇〇
床の並びが自然に変わる。
樹「ちょい詰めるぞ」
ジェシー「はいはい」
少しずつ動いて、
スペースを作る。
その流れで——
北斗の隣に〇〇。
そしてその隣に樹。
配置が決まる。
樹(小声)「完成」
ジェシー(小声)「完璧」
きょも(小声)「自然すぎる」
慎太郎(小声・ソファから)「見えないけど分かる」
高地(小声)「うん」
〇〇「……ん」
少しだけ動く。
でも起きない。
そのまま、
北斗と樹の間にすっぽり収まる。
北斗「……」
一瞬だけ固まる。
でも何も言わない。
樹(小声)「特等席じゃん」
北斗「……うるせえ」
小さく返す。
距離——
北斗のすぐ隣。
さっきより安定して近い。
逃げ場ないくらい。
でも、
今度は落ちない。
〇〇「……」
寝息、規則的。
完全に熟睡。
北斗「……」
横を向けばすぐそこ。
でも、
見ない。
見たら終わる気がして。
樹(小声)「どう?」
ジェシー(小声)「どうもこうも」
きょも(小声)「もう十分でしょ」
慎太郎(小声)「これ以上は逆に無理」
高地(小声)「あとは本人次第だね」
北斗「……」
目を閉じる。
でも、
さっきより静か。
少なくとも、
遠くはない。
夜はそのまま、
ちゃんと“近いまま”進んでいく。
〇〇「……ん」
小さく動く。
北斗「……」
気配だけで分かる。
〇〇が少しずつ、動いてる。
〇〇「……さむ……」
寝ぼけた声。
毛布を探すみたいに手が動く。
でも——
うまく掴めない。
樹「……」
その隣。
まだ起きてる。
樹「……おい」
小さく言うけど、当然届かない。
〇〇「……」
そのまま、
無意識に近い方へ寄る。
北斗じゃなくて——
反対側。
樹の方。
樹「……え、ちょ」
次の瞬間、
ぎゅ
〇〇がそのまま、
樹に抱きつく形になる。
腕、しっかり回ってる。
完全に“抱く側”。
樹「……は?」
固まる。
ジェシー(小声)「うわ」
慎太郎(小声・ソファ)「そっちいったか」
きょも(小声)「まさかの」
高地(小声)「寝相強いね」
北斗「……」
一瞬、空気が止まる。
樹「……おい、マジか」
動けない。
下手に動かすと起きそう。
〇〇「……ん……」
さらに寄る。
完全にフィット。
樹「……無理無理無理」
小声で焦る。
ジェシー(小声)「羨ましい?」
樹(小声)「殺すぞ」
慎太郎(小声)「顔やばいって」
きょも(小声)「北斗見て」
全員、ほんの一瞬だけ視線が集まる。
北斗「……」
何も言わない。
でも——
分かる。
空気で。
樹「……これどうすんの」
誰にも言えない音量。
〇〇「……すぅ……」
完全に寝てる。
離す気配ゼロ。
樹「……」
諦めるしかない。
樹「……動けねえ」
ジェシー(小声)「そのままで」
慎太郎(小声)「耐えろ」
きょも(小声)「起こさない方がいい」
高地(小声)「うん」
北斗「……」
ゆっくり目を閉じる。
見ない。
考えない。
そうしないと—
無理だから。
でも、
ほんの少しだけ、
さっきより静かじゃない。
北斗の中だけ。
樹「……まじでなんで俺」
小さくぼやく。
でも腕はそのまま。
〇〇を起こさないように。
夜は続く。
少しだけズレたままの距離で。
〇〇「……すぅ……」
規則的な寝息。
北斗の腕に、しっかり絡んだまま。
北斗「……」
動けない。
でも——
さっきみたいな“逃げたい”感じじゃない。
ただ、
落ち着かないだけ。
樹(小声)「どうよ」
北斗「……うるせえ」
小さく返す。
ジェシー(小声)「顔見えないのが惜しい」
慎太郎(小声)「絶対やばい」
きょも(小声)「静かにね」
高地(小声)「起こさないように」
〇〇「……ん……」
少しだけ顔を動かす。
北斗の肩に額が当たる。
北斗「……っ」
また一瞬固まる。
〇〇「……」
でもそのまま落ち着く。
完全に“居場所”見つけたみたいに。
北斗「……」
ゆっくり息を吐く。
諦めたみたいに。
でも——
ほんの少しだけ、
力を抜く。
樹(小声)「馴染んできたな」
ジェシー(小声)「適応能力」
慎太郎(小声)「環境順応型」
きょも(小声)「うるさいよ」
高地(小声)「寝かせてあげて」
〇〇「……」
無意識に、さらに近づく。
ぎゅ、って少しだけ強くなる腕。
北斗「……」
今度は、ほどかない。
そのままにする。
北斗「……ほんとに」
小さく、誰にも聞こえない声。
北斗「……ずるいわ」
寝てる相手にしか言えない。
起きてたら、
絶対言えない言葉。
〇〇「……すぅ……」
返事はない。
当たり前だけど。
でも——
その静けさが、少しだけ楽。
北斗「……」
目を閉じる。
やっと、
少しだけ落ち着く。
さっきまでのモヤモヤも、
完全じゃないけど、
少しだけ遠くなる。
ジェシー(小声)「寝た?」
樹(小声)「半分」
慎太郎(小声)「いい感じ」
きょも(小声)「これでいいね」
高地(小声)「うん」
少しずつ、
全員の声も消えていく。
スマホの光も、もうない。
完全な夜。
静かな呼吸だけが残る。
北斗「……」
最後に一瞬だけ、
〇〇の方を見る。
近い。
当たり前みたいに、そこにいる。
北斗「……」
何も言わず、
そのまま目を閉じる。
今度こそ——
ちゃんと眠れる夜。