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誘拐数分前
サイド レン
「ユメとユズなら、公園のほうに行きましたよ?」
「そっか。ありがとう」
拠点の前で、オレとトキさんはそんな会話をしていた。
「オレも行きます!」
「うん、頼もしいね」
トキさんはそう言って、優しく笑ってくれた。イケメンっていうんだろうな。
二人はすぐに見つかった。公園のベンチに座っているのを見て、オレは声をかけようと大きく息を吸った。
「─────っぉ、ングッ!」
「ごめん、レンくん。少し静かにして。」
慌てたようにトキさんはオレの口を塞いで、押し殺した声を出す。その訴えるような顔に、周囲を警戒しているような雰囲気。遊びじゃないことがよく分かる。
「……何か、あったんですか?」
「……多分二人のどっちかが、狙われてる。二人ともってことは、ないと思う。共通点がないから。殺気が尋常じゃないから、少なくとも5人以上……」
「ええ?!」
トキさんは真っ直ぐオレの瞳を覗きこむ。
「レンくん、一人を誘き出して逃げられないように取り囲むなら、君はどこを選ぶ?」
………………。オレは目を閉じて、周辺の地図を精密に思い浮かべる。
ここから近くて、沢山の路地に繋がりながらも行き止まり。そんな場所が一つだけあった。
「こっちです!」
隠れそうな場所で息を潜めてことが起こるのを待つ。案の定、三分もしないうちにユズと、大勢の男が来た。
問題は“ユズがユメを先導していた”ことだ。
「なんで、…………?」
トキさんはそれを食い入るように見ていた。……違う、見ているのは、男……?
どっちでもいいか、とそのときは思っていた。
「きゃあああああっっ!」
ユメの悲鳴?!
「アイツらっ……!」
「待って、飛び出すのは危険だ。……僕がアイツらを引きつけるから、その間にユメちゃんとユズユちゃんを任せていい?……僕は気配も消せるから、ある程度したら合流するよ」
トキさんはさっきのように優しく微笑んだ。……その、頼もしさに、安心してしまったんだ。
持っていた護身用の煙玉を放り込んで、すぐにユメの元に駆け寄った。気絶してるだけだな!
「ユズも!こっちだ!」
「っ、離して!!」
なんで?!ああもう!!
「早く!」
オレは強引にユズの手を引っ張る。ユメを背負って走り出そうとしたときだった。
「……まさか、またお前に会えるとはな。嬉しいぜ、×××」
…………え?
×××はトキさんさんの本名だよな?なんで?
オレは思わず足を止めた。