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サイド レン
オレは足を止めて、思わずふり返った。
「……僕は出来れば会いたくなかったよ」
ぞっとするような、冷ややかな声だった。本当にトキさんかと疑いたくなるような無表情の顔もあり、……オレは、初めてトキさんを“恐ろしい”と感じた。
やっぱり、アイツとトキさんが、知り合い?でもこのただならぬ雰囲気は……。
「で?なんでお前がここにいる?」
「あんたが母さんに何したか、忘れるわけがない。……助けに来て何かおかしいことでも?」
トキさんの、お母さん……?虐待していた人は捕まったはずじゃ?……あ、まさか、捕まった人以外にも虐待をした人がいたのか?!
オレの思考を中断させるかのように、辺りに汚い笑い声が響き渡った。思わずオレもユズも、トキさんも顔を顰(しか)める。
「助けに?っはは、後ろにいるのにか?!」
そう言って、ソイツはオレを指差した。それにつられて、トキさんがこっちをふり返った。
オレと目があって絶望の表情を浮かべる。
「!!なんで、まだここに──ッ、ゔぁ」
トキさんが後頭部を殴られてバランスを崩す。ガシャンとトキさんのスマホが落ちる音で我に返った。
そうだ、オレたち逃げないと。クソッ、ゆっくりしてる場合じゃなかった……!
間一髪でソイツの拳を避けた。
「大人しくしていろよ……ん?」
「……っ、させ……ない」
トキさんが、よろけながらも男の腕を掴む。男は面倒臭そうにため息を吐いたあと、トキさんに言葉の刃を放った。
「おいおい、抵抗していいのか?お前がそうしてどうなったか分かるだろ?」
「───!!ヒュッ、ングッ……!」
「トキさん?!トキさん!!」
なんで?!アイツはトキさんに何もしていなかったのに!なんで、トキさんが倒れたんだ?!
「ヒヒッ」
「しまっ──!」
気付くのがやや遅れたから、今度は避けられなかった。
いや、気づいたとしてもこの状況じゃどうしようもない。
鳩尾に強い衝撃を感じ、オレの意識は抗う間もなく沈んでいった。