「カァー!カァー!ゲンヤ、ゲンヤー!」
「なんだ?”榛”」
榛は、俺の前回の相棒で、今回の相棒でもある
「ニンム、ニンムー!」
「おう、どこの任務だ?」
つか、やっと任務来るんだけど、遅すぎ
「分かった、合同か?単独か?」
できれば単独が良いんだけど………
「合同、合同!!」
合同かー!くそっ、単独がよかった!!俺下手したら鬼喰いするし!!
「くそっ………チッ」
でも、これも任務だ、仕方ねぇ
「分かった、じゃ、案内してくれ」
「分カッター!!」
カァー!カァー!
それから俺たちは任務の場所に向かった
「ココダ!玄弥!」
俺がついた場所は暗い森で、するとそこには………
「・・・」
「え………胡蝶、さん?」
「え………」
なんとそこには、俺が見るはずもない、少し幼い胡蝶さんが居た
「………玄弥、くんですか?」
嘘………なんで、胡蝶さんがここに?
「はい………って、いうか、え?お、オボエテ??」
「えぇ………玄弥くんも?」
「はい…………」
「…………良かった」
「え?」
胡蝶さんが………っ、生きてて、良かった………っ!」
「玄弥くん…………私も、貴方が生きていて、良かったです」
「あの、俺、最終戦別の時に、カナエにあったんです」
「え、そうなんですか?私は悲鳴嶼さんのところに行った時にようやく再会しましたけど………っていうか、今姉さんの事、カナエって言った?!」
「ひぇっ、すすす、すいません!その、カナエに下の名前で読んでって!!」
「そうですか、じゃあ、私のことも『しのぶ』って呼んでくださいね」
「え、いやいやいや?!何言ってるんですか?!無理ですって!」
「姉さんのことは下の名前で呼べるのに、私のことは呼べないの?!」
「うぐっ」
なんか胡蝶さん、すっごい怒ってる?いや、これが素か??
「………驚かせてごめん、これが私の素なの」
「私は、姉が亡くなったことで、姉のことを模倣しました」
「姉が好きだと言った笑顔を絶やさず、ずっと笑顔で過ごしてきました」
「ですが、今は姉が生きている、なのでそうする必要がありません!」
「胡蝶さ」
「しのぶ」
「………しのぶ」
「………ところで、貴方、今回は呼吸が使えるのですね」
「あ、はい!その、風の呼吸を使ってるんですけど」
「そうなんですか?まぁ、お兄さんと同じ呼吸だなんて、凄いじゃないですか」
「えへへ、ありがとうございます」
「でも………俺、風の呼吸、あってないんですよね………」
「そうですか……、分かりました、あ、鬼喰いは健在ですか?」
「はい、けど、呼吸が使えるので、あんまり使ってません」
「そうですか、いい事です、鬼喰いは本当に体に悪いので」
「ぐえぇっ、す”い”ま”せ”ん”!!」
「ふふっ、さ!玄弥くん!行きましょう!」
「はい!」
タッタッタッタッタッタッタッタッ
鬼の気配が強い………
ヒュンッ!
「しのぶ!危ねぇ!!」
フウゥゥゥ
「蟲の呼吸・蝶ノ舞・戯れ」
ピシャッ!!!!
「とっとと死に腐れよ、この外道が」
「・・・」
「玄弥くん!大丈夫ですか?!怪我などはありませんか?!」
「は………はい、ナイデス」
いや怖!!何これ!!怖いんだけど?!
「………しのぶって、怒ると気配が変わるんだな」
「そう?これが本当の私って、さっき言ったでしょ?」
「うぐっ、そうだけど」
俺からしたら、こっちの方が珍しいんだって!!でも………
「”あの時”のしのぶも綺麗で素敵だったけど、今のしのぶの方が、すごく良いと思うよ」
「…………っ!げ、玄弥くん?!ななな、何言ってるんですか?!」
「え?俺、本当のこと言っただけですけど?」
「てか、玄弥くん、貴方私より年上ですよね?」
「え、なんで分かるんですか?」
「艶が言っていたんです、今から合流する隊士は、年上だから敬語で行くようにと」
「ええっ、そんなこと言ったんですか?!良いですよ、敬語なんて」
「なら、お互いタメで行きませんか?」
「え?タメ?」
「えぇ、その方が何かと話しやすいですし、私がそうしたいんです」
「ダメ………ですかね?」
「うっ………分かりました」
この人、自分の顔の良さ、知ってるだろ………
「分かった、しのぶ、今から行くぞ!」
「うん!分かったわ玄弥!」
「なぁしのぶ、さっき鬼を倒したけど、まだ居るよな?」
「えぇ、よく分かったわね」
「ここにはまだ一体鬼がいるわ」
「まじか…………」
これ、最悪鬼喰いが必要なんじゃないか?
「玄弥、鬼喰い、しないでよね?」
「ぅえ、なんで?」
「だって、今の貴方は呼吸が使えるのよ?なら使う意味がないじゃない」
「まぁ私かにそうなんだけど、流石に死にそうになったら、鬼を食うしかねぇけど」
「………死なない程度に援護するわ」
「よろしくな」
「・・・」
まずい………鬼が近くにいる
「しのぶ、ちょっと下がってろ」
俺がしのぶにそう言うと、しのぶは不思議そうに聞いてきた
「え、でも」
「”良いから”」
「俺が絶対に、しのぶを守るから」
俺がそう言うと、しのぶは分かったように後ろに下がった
「………っ」
「おい、お前、居るんだろ」
「え?」
「おーおー………お前、癸の隊士にしては勘がいいなぁ」
「まぁな、俺は勘がいい方なんでな」
………こんな無駄話なんかいいんだよ、さっさと殺させろよ
「無駄話はさておき、俺はお前をとっとと殺す、いいな?」
俺が鬼に向かってそう言うと、鬼は俺を嘲笑うようにして言ってきた
「へぇ………でも、新人のお前に俺が殺せるか?」
「あぁ、絶対ぇに殺す」
「死んでもな」
俺はそう言い、鬼に斬りかかった
「風………っ」
いや、風の呼吸じゃダメだ、俺の風の呼吸は威力が弱い
匡近さんや風神さんみたいな、綺麗で、かっこいい呼吸にはならない
なら、作るしかない
今まで見たものを思い出せ
風、水、岩、雷………あぁ、分かった
風のように強く、水のように柔軟で…………これだ!!
「”嵐”の呼吸・壱ノ型」
俺は刀を素早く抜き、鬼に斬りかかる
「台風!!」
その速度は蟲の呼吸や雷の呼吸を上回るほどの速さで
「フゥゥゥゥ」
呼吸音を出しながら走る、正直、新しい呼吸を出したばっかりでは、肺が追いついていなくて疲れる
でも、いける、これなら
この呼吸なら、いける!!
「おらぁぁぁぁぁ!!」
ザシュッ!!!
「なんでっ………なんで!!」
「なんで俺が、お前みたいな化け物に殺されなきゃいけねぇんだ!!」
「………なぁ、お前」
「お前はそんなことをして楽しいか?」
「お前によって、命を奪われた人がたくさんいるんだよ」
「だからお前はこの俺の手によって無くなる」
「………次生まれてくるときは、こんな世の中じゃないといいな」
「え………」
サァ………
「・・・」
あああああああ、やばい、すっげぇ疲れた!!やばい!!
てか、なんなんだよあの呼吸!!
嵐?嵐って、あの天気の??
「玄弥!」
「え、うわっ!」
しのぶがそういうと、俺に抱きついてきた
「ちょっ、しのぶ?!」
「玄弥!あんた本当にすごいわ!!何あの呼吸?!」
「え、俺にも分かんねぇ」
「すっごい威力があったわ!風とは比にならないくらい!」
「そ、そうか?」
「うん!凄かった!!」
「でも、しのぶの蟲の呼吸もすごかったぜ」
「なんか、蜂みたいな?だけど、蝶みたいで、綺麗だった」
「えへへっ、そうかしら?」
「おう、俺が保証する」
「ふふ、ありがと!玄弥!」
「それじゃ、蝶屋敷に行きましょ!姉さんが待ってるわ!」
「そうだな!」
あぁ、良かった、胡蝶さんが笑ってる
俺はこれがすごく嬉しかった
だって、前の胡蝶さんはずっと、苦しそうにしてたから
苦しくて苦しくて仕方がないのに、その苦しさをどこにもぶつけようがない
胡蝶さんは、あの小さな体の中に「怒り」「悲しみ」「憎しみ」、それらの感情をずっとずっと、笑顔で隠していた
「本当に、良かった……っ!」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!