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かきまぜたまご
吾輩は猫
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【夢弓のターン】
本日は快晴! 暑くもなく寒くもない、温かい気温!
つまり過ごしやすいってことです。
でも今の私は体が熱くて、主に手が熱くて大変です。手をつなぎたいなぁ~ってひろくんの手をコッソリ見たら、まるで私の心を読んだかのようなタイミングで「手をつなごうか」なんて言ってくれました。
それに荷物持ってくれるって気遣ってくれたり、無理しないでって言ってくれたり、もぉ~なんて神対応なんでしょう! そういうところが好きすぎます! ううん、もう好き!
私がチラッと見ると偶然目が合ったひろくんが微笑んでくれます。
タイミングもバッチリ! まるで私が見るのが分かっていたような……いやちょっと待って!
もしかしてひろくん私の心読めてたりする?
ってもしそうだとしたら今までの私の声も聞こえてたってこと⁉
それは恥ずかしい⁉ べ、別のこと考えよう! え~っと、BBQはなんでBBQなんだろ? お肉を焼くから、お肉は英語でミートだから……あれ? B? びー、びー……そもそも読みが「ば」だから「ば」のつく言葉だ。そこに気づける私すごい!
ば、ばだから……ば……ばーっと焼いてべーってひっくり返して、キュッと絞める? ぎ、擬音なのかな?
「そういえばさ、BBQって冷静に考えると面白いていうか、なんか可愛い名前って思わない?」
「はぇ?」
考えごとをしていたらひろくんに話しかけられ慌てて返事をしたら変な声が出てしまいました。
「あ、変なこと言ってる自覚はあるよ。ふっと気になってさ、バーベキューって単語を音で略するとかなんかおしゃれだし、その音が可愛いなって思ってしまったんだよ。伝わる?」
「やっぱり音なんだ! うん、特にきゅーって音が可愛いよね!」
「よかった。伝わった」
ホッとしてから嬉しそうにするひろくんの笑顔に私もにっこりです。それにBBQはやっぱり音の略だったようで安心です。
……ってやっぱり私の声聞こえてる⁉ そんなことないよね?
あまりにタイミングが良すぎて私はひろくんが心の声が聞こえる人なのかもしれないと疑ってしまう。BBQをする場所に着くまで(ひろくん好きだー)とか(調味料のさ・し・す・せ・その「せ」は……背油? だった気がする)とか心で叫んでみる。
叫んではチラッとひろくんを見てみるが反応はないので、聞こえてないのだろうと結論を出してホッとする。
そんなことをしてる間にキャンプ場で受付を済ませた私たちはBBQをするブースへとたどり着く。
コンロはもちろん、ゴミ袋や簡単な調理器具まで用意してあってさらには炭に火までついてて、あとは簡単に準備をすればすぐにBBQが始められるようになっていた。
「すごい! 至れり尽くせりだね」
「ね、すごく助かるよね。片付けもゴミとか分別してステーションに捨てれば炭とかの処理までやってくれるんだ」
「もう言葉にできないほどサービス精神に感謝しかないね」
ひろくんと私はキャンプ場の経営者と働いている人たちに感謝してBBQの準備に取りかかる。
買ってきたお肉を取り出してなんとなく種類ごとに分け野菜を取り出す。
玉ねぎ、しいたけ、キャベツ、ピーマンの4種類のラインナップ。
「しいたけは石づきを取って、玉ねぎは……」
私は玉ねぎを手に取って茶色の皮に包まれた物体を見つめる。
玉ねぎってどうやって切るんだったっけ?
とりあえず尖った先を摘まんで皮をむきながらカレーのときのお姉ちゃんとの修行を思い出す。
「えーっと半分に切って、そのまた半分に切ればいいんだから……」
「BBQのとき玉ねぎ切り方って悩むの俺だけかな? 輪切りとかが一般的だけど火の通りにムラができたりするし、真ん中の小さな輪っかが落ちたりするんだよね」
「わ、輪切り……そ、そうだよね」
玉ねぎを輪切りにする。そんなこと思いつきもしなかったけど、ひろくんに対して分かってた風を装って私は玉ねぎを包丁で一刀両断する。
「なるほど、蒸し焼きにするんだ」
「む、蒸し焼き? あ、あぁ~そう蒸すの」
「たしかアルミホイルがあったはず」
ひろくんは調理道具の中からアルミホイルを取り出し私が切った玉ねぎを軽く包んでくれる。その手際のいい動きに私は見とれてしまうけどすぐに我に返ってキャベツを取る。
これはこの間切ったばかりだから大丈夫。
「ふぬっ」
ちぎったキャベツ葉の芯を切り丸めるとザクザクと切っていく。前にやったときよりも細かくできた気がするキャベツを見て私は額の汗をぬぐう。
前回が百切りくらいだとすれば五百くらいにはなったと思う千切りを前にして私は満足する。キャベツって焼くと甘くなる気がするんだよね~。焼肉屋さんとか行ったとき焼けたキャベツの味を思い出しながら自分が切ったキャベツを満足気に眺める。
「えっと、キャベツはサラダにする? 芯は焼く感じ?」
お肉を網に並べて焼き始めたひろくんが私の五百切りを見て尋ねてくる。
「う、うん。サラダ……そう! サラダ良いかなぁって」
「脂っこいもの多いしサッパリしたの食べたくなるもんね。ドレッシング買ってあるよ」
「あ、ありがとう」
私はひろくんからドレッシングを受け取る。
キャベツを焼くつもりだったとか今更言えるわけもなく、私は紙皿にキャベツを盛ってドレッシングをかける。
「肉焼けてるから食べようよ」
ドレッシングをかけていた私がコンロの方を見るとおいしそうな焼き色になったお肉が並んでいる。さり気なく綺麗に切られたピーマンとしいたけも焼かれている。
いつの間に切ったんだろうって驚く私の前に焼き肉のタレが二本置かれる。
「好きな味で食べて。肉はどれが食べたい?」
「え、あ、えっと……これかなぁ?」
「バラからいくとは通だね」
「え、えへへ。そ、そうかな」
バラがなんなのか分からなくて焦りつつも、知ったかぶりをする私のお皿によく焼けたお肉が置かれる。ひろくんばかりにやらせてはいけないと私も箸を持って手を伸ばそうとするけどやんわりと止められる。
「ゆめは座ってて、焼けたら置いてくし食べたいのがあったら言って」
「そんなひろくんに悪いよ」
「焼くのも好きだから大丈夫。ほら、食べて」
「う、うん。おいしい……」
口に入れたお肉はちょうどいい火加減で、とてもおいしくて思わず声に出してしまった。
「よかった。火傷しないようにね」
笑顔を見せてくれたひろくんは手際よくお肉やソーセージ、野菜に焼きそばまで焼いてくれる。
途中出てきた玉ねぎの蒸し焼きはマヨネーズや醤油をかけて食べる。私が半分に切っただけの玉ねぎがこんなにおいしくなった帰ってくるとは驚くばかり。
玉ねぎを食べながらチラッとひろくんを見る。
お肉をひっく返して火の通り具合を見たりしながら、焼きそばも炒めたり私のコップにお茶をついでくれたりと至れり尽くせりだ。
もしかしてひろくん、わたしより料理上手なんじゃ……。
BBQって網の上に載せて焼けばいいだけじゃないんだ……。最初にお肉焼くだけだから楽勝! なんて思っていた自分の頬をペチペチと叩きたくなる。
こうして楽しくはあるけど、なんとも言えない不安を心の奥で感じながらBBQは進む。