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「第三幕 第一章 砂嵐の刺客」(後編)
仮面の男が刃を横に払った瞬間、砂が生き物のようにうねり、あなたの足首を絡め取った。
「動けない……!」
セレスティアが短剣で切り裂こうとするが、砂は再び巻き上がり、視界を奪う。
「月殿が作り出した〈砂幻〉……実体と幻影を同時に操る厄介な術だ」
ラシードが舌打ちし、槍で砂を払うが、すぐに別の幻影が背後を取る。
仮面の男は、まるで月明かりそのものを纏ったかのように消えたり現れたりを繰り返す。
「槍を渡せば……お前たちは月殿の“計画”の外に置いてやる」
その声が背後から響き、次の瞬間には正面から刃が迫る。
――違う。
あなたは星槍を地面に突き立て、目を閉じた。
砂嵐の音の奥で、星々が囁く声が聞こえる。
幻影を切り裂くのは、目ではなく星の導き。
「……そこだ!」
星槍を薙ぎ払うと、幻影が一斉に砕け散り、本物の仮面の男が呻き声を上げて後退した。
胸元に蒼い傷が走り、そこから砂が流れ出す。
ラシードが素早く駆け寄り、槍の石突で男を地面に叩きつける。
「計画ってのは何だ。吐け」
男は笑った。仮面の奥の瞳が不気味に光る。
「……月殿は“星”を集めている。全てを一つにすれば、夜空は……沈む」
その意味を告げ終える前に、男の身体は砂となって崩れ、夜風に消えた。
静まり返った砂漠で、星槍の刃先だけが淡く光っていた。
セレスティアが唇を噛む。
「夜空が沈む……ってどういう意味?」
ラシードは険しい表情で遠くの月を睨んだ。
「わからんが……放っておくわけにはいかない」
砂嵐が収まり、東の空に明けの明星が輝き始めた。
それは、新たな試練の始まりを告げていた。
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