「ごめん、驚かせちゃったよね」
そう言って照れたように笑うラウール
「実は、俺が目覚めたのって、今日じゃないんだよね」
「え…?」
正直、頭が混乱していた
さっきまで、手話を使って話していたじゃないか
なのに、
なんで言葉を使うんだ…?
それに、
“今日目覚めたんじゃない”?
澪弥が言ってたじゃんか
ラウールが、”目を覚まして”って___
あれ?
確かに、いつ、とは言ってないけど……
「俺、3ヶ月くらい前に目覚めて、みんな、涼太に連絡しようとしてくれたけど、俺が止めたんだ」
俺は、頭の中で整理をしながらラウールの言葉に耳を傾ける
「え、3ヶ月前!?」
「うん」
3ヶ月前って……
「俺、お見舞いに行ってたと思うけど」
「来てないよ〜笑」
「嘘だ」
記憶を辿る
確かに、最近大学が忙しくてお見舞いに行けなかった
3ヶ月も行けてなかったのか……?
「なんか、そんな気がしてきた…」
「でしょお!?笑」
きゃははと笑うラウール
そんな笑い方だったな……
不意に、昔が懐かしくなって涙が溢れそうになった
「俺は、人口内耳を埋め込んだんだ」
急に、ラウールがそんなことを言い出す
「人口内耳……?」
人口内耳
初めて聞くものだ
「人口内耳はね、補聴器での装用効果が不十分な人……つまり、俺みたいな人が、唯一聞こえるようになる方法……かな」
ラウールの説明で何となくわかった
ラウールは、また、小学生の頃と同じ耳を手に入れていた
「……なんで言ってくれなかったの」
「完全じゃない自分を見て欲しくなくて…」
「ほんとごめん。」
頭を深く下げるラウール
「あ、いや、別に怒ってないから!!」
慌てて言ったから肘がベンチの背もたれにぶつかった
「ったぁ!!!」
思わず大きな声が出る
ラウールを見れば、頭を下げたまま肩を震わせている
「っは……」
そんなラウール見てたらこっちも笑えてきた
2人で散々笑いあった
なんでか、笑い出すと止まらない
2人でひとしきり笑ったあと、目を合わせる
ラウールが口を開く
「改めて言わせて?」
「ちょっと待って」
それを俺が制す
「さっきはラウからだったから今度は俺から」
「好きです。良ければ、」
「「付き合ってください」」
2人の声が重なる
視線がぶつかり合う
その瞬間、強い風が吹いた
「蓮くんも、見てくれてるかな?」
空を見上げて言う
「涼太!ラウ!」
澪弥が走ってきた
「お前さぁ、なんでこんなことしたんだよ」
「ごめんって笑」
「ったく……」
呆れたようにしているけど、本当は俺らのことを大事にしてくれてるんじゃないかな、なんて
俺の妄想に過ぎないのかな?
『はい!オッケー!!』
「いてぇ……」
俺は台本になかったところで失敗してそのまま演技を続けた
どこかって?
言わなくてもわかる
ベンチの背もたれに肘をぶつけたところ
ぶつけた時あ、終わったって思ったけどカットかかんなくてさ
あそこから即興だった
で、ラウールが話を戻してくれた
天才すぎんだろ
ジンジンと痛む
ぶつけた時は肘から全身に痛みが駆け抜けて肘に戻った
あの痛みは忘れられない
とか言って結局明日になったら痛みなんか忘れてんだろ?
「涼太、冷やす?」
と、翔太がやってくる
「うん。ありがと」
氷を貰い、肘に当てる
「冷てぇ……」
「大丈夫?」
「うん」
わらわらと俺の周りに人が集まる
俺の視界は人で埋まった
いや、来すぎだよ
どんだけ来てんだよ
「だてさん、モテモテの人みたい〜」
ラウールがそんなことを言う
やめて?
俺の恋人は翔太だけなんだから
コメント
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うわぁ、最高すぎた、、 マジでラウールぅ、、