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み ん と
Episode 3
「なんとなく分かる」
訓練室へ向かう廊下を歩いていると、後ろから声が飛んできた。
「今日も個人戦?」
振り返る。
「……まあ」
「絶対そうだと思った」
呆れたように笑いながら、三上が隣へ並んだ。
「お前ほんと好きだよな」
「楽しいので」
「普通そんな毎日何十戦もやらねぇのよ」
湊は否定しなかった。
実際、楽しい。
どう動けば通るのか。
どこまで近づけるのか。
どうすれば反応されるのか。
試したいことが尽きない。
訓練する度に少しずつ形になっていく感覚があった。
三上はそんな湊を見ながら苦笑する。
「まあ、お前の場合ちゃんと強くなってるから怖ぇんだけど」
「……?」
「自覚ないのかよ」
訓練室の自動ドアが開く。
中では既に何人かが個人戦をしていた。
銃声。
爆発音。
モニターに映る戦闘ログ。
いつもの光景。
湊は空いている端末へ向かう。
その途中。
「あ、そういや」
三上がふと思い出したように口を開いた。
「前から気になってたんだけどさ」
「?」
「お前、なんで相手見えてないのにカメレオン起動するの?」
湊は端末操作を止めた。
「……?」
「いや、だから。建物入る前とか、まだ視認してないのに“この辺いる”みたいな動きするじゃん」
湊は少し考える。
「……近くにいる感じしたので」
「感じ?」
「なんとなくです」
三上は胡散臭そうな顔をした。
「いや、その“なんとなく”で毎回綺麗に接敵してるのおかしいだろ」
「でも遠いと分からないですよ?」
「そういう問題じゃなくて」
湊は少し視線を逸らした。
「ピンポイントで場所分かる訳じゃないですし。近くにいるな、くらいです」
「十分怖ぇよ」
即答だった。
湊は少し困った顔になる。
「でも、人の気配感じるって言う人いるじゃないですか」
「まあ、なくはないけど」
「多分それと同じ感じですよ」
三上は数秒黙った。
それからじわじわ真顔になる。
「……それ、サイドエフェクトじゃね?」
湊の動きが止まる。
「いや……」
「いやじゃなくて」
「そんな大したものじゃないと思いますけど」
「普通じゃねぇんだって」
湊は少し考え込む。
昔から、近くに人がいる感覚はあった。
後ろ。
曲がり角の先。
建物の中。
でも、それを能力と思ったことはない。
ただの感覚だと思っていた。
「……まあ、結局ちゃんと確認しないと分からないので」
だから必ず目で見る。
位置を読む。
音を聞く。
動きを予測する。
三上はそんな湊を見ながらため息を吐いた。
「無自覚って怖ぇ……」
湊は端末を起動する。
個人戦申請。
対戦待機。
すると三上が、ふと思い出したように言った。
「そういやお前、また勧誘来てたらしいじゃん」
「まあ」
「何回断るんだよ」
湊は少し考えてから答える。
「今はまだ、個人戦やりたいので」
「そんな楽しい?」
「かなり」
即答だった。
三上が笑う。
「個人戦狂じゃん」
湊も少しだけ口元を緩めた。
実際、その通りだった。
まだ試したいことがある。
まだ改善したい部分がある。
撃った後の動き。
接近ルート。
サブマシンガンの使い方。
対策された時の崩し方。
未完成だ。
だから、まだ面白い。
だが。
最近少しだけ考えることが増えた。
個人戦では見えないもの。
複数人の動き。
連携。
ランク戦。
一人では作れない盤面。
モニターに対戦マップが表示される。
転送準備開始。
湊は静かに立ち上がった。
「……まあ」
「?」
「そろそろ、隊は考えてもいいかもしれません」
三上が少し目を見開く。
「お、珍しいこと言うじゃん」
湊は小さく肩をすくめた。
「スタイル、前よりは固まってきたので」
それに。
ランク戦も、少し興味があった。
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