第3話
em side
街を歩いてると必ずと言っていいほど聞きたくない言葉が聞こえてくる。
「ねえ、聞いた?またどっかの能力者が能力を使って処刑されたらしいわよ」
「うそー!あたしたちも気をつけないとね」
「この世界から消えればいいのに」
「本当にね、必要のない奴らよ、生きてても意味がないわ」
「ねぇ今度の七夕、短冊にそれ書きましょ」
「いいねー、みんなで書いたら叶うかもね」
能力者の噂話。
前の俺なら絶対気にしなかった。
でも、でも、今は心がズキズキする。
痛い。
腹が立ってくる。
何も知らない癖に。
知ったような口聞いて。
これだから人間は嫌い。
でも、知らん人が噂話してるのと、友達が言うのとでは訳が違う。
友達に、
「エミさん、能力者の所で側付きしてるんでしょ?大変だね。あんな自己中な能力者と四六時中一緒に居て。なんか愚痴あったら聞くけど」
って言われた時。
何を言ってるのかを理解する行為を頭が拒んでいた。
em「ゾムさんはそんな人じゃないです…!」
「え?もしかしてエミさん、能力者に操られてるんじゃないの?」
em「…ゾムさんの能力はそんな能力じゃないです」
「ねぇ、やばいよお前。まじで操られてるって」
なんなんだよ、ほんと、腹立つ。
…昔の俺はこんなこと思わなかったんかな。
こんな短期間で人の感情って変わるもんなんやな。
母「エーミール?」
em「ぇ?母さん?」
母「久しぶりね。元気だった?」
em「…うん」
母「最近仕事は何やってるの?」
em「城に居るゾムさんの側付き…的な」
母「城…って能力者?」
em「…うん」
母「そう。辞めときなとは言わないけど…他の仕事にした方が良いわよ。だって…」
em「なんで能力者だからってそんなこと言うの?イラッ」
母「そうじゃなくて…!」
em「…もういいよ」
母「…ごめんねボソッ」
嗚呼、またやった。
人の気持ちも考えないで。
すぐ苛ついて。
ほんと俺は俺が嫌いだ。
気付くと俺は無意識に城に帰って来ていた。
em「はぁ」
ため息しか出ない。
zm「あ、!エミさんー!帰って来てるやん」
em「え、嗚呼。ゾムさん」
zm「どしたん?顔色悪いけど」
em「…何もないですよ!」
zm「…そう?」
次の日
em「…なにこれ?」
新聞には、
「城に閉じ込められた能力者が世話係を操る?」
という文字が記事一面に広がっていた。
何を言っているんだ?
この新聞は。
俺は操られてなんかいない。
記事を読んでいくと、
「昨日の午後9時ごろ、能力者が側仕えを操っている、という匿名の通報がありました。」
という文が見つかった。
俺がそこで働いてるって彼奴と母さんしか知らない。
母さんはそんなこと言わないかな…
じゃあ俺の友達?
でもなんで…?
聞いて…みるか。
プルルルル…プルルルル
em「もしもし?」
「もしもし?」
em「今日の新聞のことだけど…匿名で通報したのって貴方ですか?」
zm「…」
zm side
なんでエミさんはそんなに俺に構うん?
友達でも仲が良い訳でもない。
ただただ、能力者と執事という関係。
それなんに、エミさんがそんなに俺のこと構ってくれるのはなんでなんや…?
つまんない奴やし、おもんない奴やしこんな奴と一緒におって、俺は楽しく無い。
俺は、…俺のこと嫌い。
この世界に必要ない。
誰も、俺が居なくても困らない。
誰も悲しまない。
それどころか居なくなって欲しいって思ってる人も居る。
死んじゃえば良いのに。
こんな奴。
em side
…友達は善意で通報したんだろうけど。
もやもやする。
なんだろうな、この気持ちは。
「速報です。速報です」
突然テレビのニュースキャスターが慌て始めた。
なんやろな…
「能力者について国王様らが、会議を開いていたようです。何について、話されていたかはまだ明らかになっていません。」
em「え?能力者…?」
「あ、今情報が入って来ました。この会議では、今朝報道された能力者が側仕えを能力で操っていたことについて会議が開かれていたようです。」
「この国のトップが集まった会議の結果、今城に住んでいる能力者ゾムを取り調べ、返答によっては刑罰も考える、ということが結果として決まったようです」
em「…嘘やろ?」
ゾムさんは何もしてない。
俺は操られてない。
だってゾムさんはそんな能力を持っていない。
なのになんで、なんでこんな事になるんや…
こんなの…、
em「こんなの、理不尽すぎるやろ」
zm「当たり前だよ…」
em「…え?」
声に出てた?
zm「この世界はさ、そうやって出来てるんや
から」
zm「理不尽が溢れてるんだよ」
コメント
2件
シンプルに四流が尊い… 最後のzmさんの「理不尽が溢れてるんだよ」の部分何か儚い感じがあって好きです、!! ( ? )