第4話
zm side
能力者に人権なんてない。
全部偉い人が話し合って、勝手に俺の人生を決めていく。
嫌だ。
こんな生活は嫌だ。
でも、辞められない。
普通の人間に生まれていたら、こんなことにはならなかった。
全部、俺のせいなんやけどな…。
…母さんに会いたいな。
こんな時、母さんはどうするんやろか。
em「ゾムさん」
zm「…」
em「ゾムさん?」
zm「…ぁ。ごめん、どした?」
em「手紙が届いてますよ」
zm「手紙?誰からやろ」
em「封筒には名前書かれていないんですが…」
「ゾムへ
僕等のこと覚えとる?
僕と、後2人…。小学生やった頃に仲良かったんやけど。
代表して僕が書くな。
僕等、ずっとゾムに謝りたいと思ってる。
あん時、僕等が警官にゾムのこと言わんかったら今、ゾムは城になんか閉じ込められずに普通の人と同じ様に生きてたんやろな。
僕等がゾムの人生を壊してしまった。
本当にごめん。
誤って許されることやないって分かってる。
けど、今僕等には謝ることしかできない。
無力すぎるよな。友達のくせにさ。
今日のニュース見た。
あの能力者ってゾムやんな。
でも、ゾムは側仕えの人を操ってないよな。
ゾムはそもそもそんな能力使えないし。
なんであんな情報が流れたのか知らんけど、本当に理不尽な世界やなって思った。
ゾム、もし良かったら僕等を頼ってほしい。
ゾムのためなら何だって出来るからさ。
あと、最後に一つだけ。
これは、僕等の身勝手な願いなんやけどな。
もし、もし、ゾムがいいって言ってくれるんやったら、僕等、まだ友達で居たい。
また、いつか会おな。
鬱・シャオロン・ロボロ」
…ッ
…そう…か…
…良いに決まってるやん。
友達。
em「ゾムさん…?どうしましたか?」
zm「え?」
em「あの、泣いて…」
zm「ぁ…。ほんとだ」
em「どうして?泣いてるんですか?」
zm「なんか…ずっと忘れてた物が急に思い出せた感じ。嬉しいんかな。俺は」
em「…良かったです」
zm「…泣きたい」
em「へ?なんで…?もう泣いてるやん」
zm「…そうじゃなくて」
em「…?」
zm「…俺、手紙出してもいいかな?」
em「そうですね、折角貰いましたし。」
そうだ。そうだよな。
鬱とシャオロンとロボロ。
彼奴らの名前。
俺は何で忘れてた?
大切な、友達やったのに。
しかも…何処まで優しいんだよ…
何て書けばええんやろ…
伝えたいことはあるけど、文字にするとなるとなぁ、むずい。
手紙なんて書いたことないし。
あと、こいつら手紙やのに関西弁丸出し…
阿呆か…
…
よし。
出来た。
所々エミさんに手伝って貰いながら。
意外やったな。
彼奴らが手紙書いてくれたの。
ずっと、悩んでたんやろか。
…嬉しいけど…嬉しくない。
俺のことなんて忘れて生きてたら良かったのに。
一緒に遊んだ俺のことを忘れて、幸せに生きていたら良かったのに。
なんで忘れなかったんだよ。
俺は…
俺はお前らのことわすれてたのに
いまさらあのときのことなんて、おもいだしたくなかったのに
なんでずっとおれのきおくにのこってる?
em side
手紙。
懐かしい。
昔はよく書いたけど今はもう、携帯電話という便利な機械がある。
まぁ、その携帯電話が使えないこの城でも手紙は今まで書かなかったけどさ。
zm「…なん…れの…きお…の…る…?」
zm「…おれ…い…てる…な…?」
zm「…お…れ…は…」
zm「お…れ…」
っ…また
ゾムさんが…
最近、時々何かをブツブツ呟いている。
em「ゾムさん」
em「ゾムさん…!」
em「ゾムさん!!」
zm「…っ…はぁ…はぁ…はぁ…」
zm「ぁ、ごめん…ど…した?エミさん…」
em「ゾムさん…。何か、私にできることありませんか?」
zm「…え?なん…で…?」
em「…最近、なにか呟いてますよね」
em「何か…ゾムさんの為に出来ることしたいなって」
zm「ぁ…」
zm「…あのさ、…」
em「はい」
zm「ぃや…やっぱ…今度でも…ええかな」
em「…はい。何時でも聴きますよ」
zm「…」
俺なんかに話せることじゃないんかな。
ゾムさんが自分から話してくれるようになるまで、信頼されないと。
側仕えとして…。
zm side
言いたいよ。
言いたい。
でもさ、エミさんに迷惑かけるわけにはいかないからさ。
これは、俺の問題であって、エミさんを巻き込むわけにはいかないんや。
…ごめんな。
ガタガタガタ…ガタガタガタ
何処かで物音がした。
それに加えて足音がする。
em「え?」
zm「誰か来たんかな」
em「でも、誰も来れないはずですよ。国王様の許可がない限り」
zm「せやんな」
足音が、俺たちの居る部屋の前で止まった。
すると、扉が乱暴に開いた。
男が1人。部屋に入って来た。
「おい!能力者は何奴だ?」
『え?』
「聞こえてんのか!」
「能力者は何奴だ?」
zm「俺やけど…」
「お前か。俺はお前に用があって来たんだ。もう1人のお前、部屋の外に出て行け。」
em「ぁ…はい」
エミさんは部屋の外に出て行ってしまった。
zm「それで、何の用ですか?」
「俺等は、国王様の命令で来たんだ」
「お前は自分の側仕えに能力を使った」
「法律違反だ」
そう言いながら俺に近づいてくる。
zm「でも、俺能力使ったのあん時だけで…」
「真実なんでどうでもいい。そんなの関係ねぇんだよ」
「俺は国王様に命令された。命令を遂行しないと殺されるのは俺だからさ、」
「お前には…」
そう言いながら、俺に正面からぶつかって来た。
「…死んでもらう」
え?
何が…起きた…?
俺…
え?
彼奴の手を見た。
ナイフを握っていた。
そのナイフは…俺の腹を突き刺していた。
彼奴は微かに笑うと、俺の腹からナイフを抜いた。
彼奴が…逃げていく。
彼奴と入れ替わりで、エミさんが部屋に入ってくる。
em「……ッ」
em「ゾムさん…!!」
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