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「エリー様のお怒りはごもっともです。旦那様にお会いなさるのはお辛いかと思います。
それでも、どうしてもとおっしゃるのならば、私もご一緒させてください。
今までの方々も…お救いすることは叶いませんでした。
せめての罪滅ぼしとしまして、新たな嫁ぎ先を探したり、ご本人のご希望に寄り添って参りました。
しかし、もう耐えられなく、今回こそはお止めしようとした矢先に……。
エリー様のご希望を叶えさせてください!」
あの時に助けてほしかった。
もっと、早くに来てほしかった。
過ぎたことは戻らない。
それに咎める相手はマクスではない。
マクスも巻き込まれているだけなのね。
その気持ちがうれしかった。
この結婚にしがみつくつもりなんて微塵もない。
けれど、あの家に戻りたいとも思わない。
「とりあえず、旦那様とお話しした後に考えます。」
離縁後については、今は考えることを保留にしようと思うエリー。
とにかく旦那様に一言、十言、百言、なんて言葉あるかしら。
とにかく、思いつく限りのことを言わねば!
今迄の方の無念も、代弁も兼ねてありったけの文句を!
本当は顔も見たくないけれど。
ただ、呪いのことが気にかかる。
新たな被害者を防ぐためにも、自分が対峙しなければいけない、とエリーは妙な責任感が湧いていた。
「エリー様、分かりました。旦那様は不眠なので、今の時間でも問題はないでしょう。
ですが、エリー様は慣れない場所で、その…お疲れのことでしょう。
今日の所は、どうかこのままゆっくりとお休みください。
軽くお召し上がりいただけるものをお持ちいたします。
全ては、明日に致しましょう。
朝食もお部屋へお持ち致します。
お食事がお済みになった後に、旦那様のお部屋へご案内いたします。
それでは、おやすみなさいませ」
***
エリーはほとんど食事を口にすることなく、ベッドに横になる。
辺境の地故に隣国との争いや、魔物討伐の機会も少なくはない。
その際は、鎧を着ているので、旦那様の容姿は人目につかない。
年を取らないと、疑問に思われることはなかったそうだ。
もしくは、同一人物ではなく、親戚だと思われていたようだ。
メリッサ様の件については、王家は不干渉。
王家からしたら、旦那様のことが許せないでしょうね。
メリッサ様の気持ちを踏み躙り、辛い最期を迎えさせた元凶でもあるもの。
なんのお咎めもなかったのが不思議なくらい。
そんな事を考えながらうとうととしていると、いつの間にか朝を迎えていた。
身支度を終えると、廊下から物音がする。エリーが扉を開けると、マクスが朝食を運んでいるところだった。
トレイを受け取ると、エリーは部屋へと運ぶ。
昨日あんな事があったので、シャワーを延々と浴び続けた。
随分と泣きはらした。
記憶から消去し、なかったことにすることで、精神バランスをとろうとする。
食事を終えて、マクスの迎えを待つ間、部屋の窓から見える庭を見渡す。
綺麗な庭園が広がっている。
あら?
エリーは、庭園を1人の女性が歩いているのを発見する。
遠目だけれど、昨日見かけた女性に似ている。
じっとみつめていると、こちらを見上げた女性と目が合った気がした。
エリーは、帽子を被ったその女性の姿をはっきりと見ることができた。
その表情はどこか物憂げで、エリーに向かい微笑みかけていた。
「エリー様」
「今、開けるわ」
ノックの音がしてマクスの声に返事をした後、庭園を見ると、先程の女性の姿は見えなかった。
幻覚かしら?
エリーはマクスと共にクリフォードの私室へと向かう。
「旦那様、エリー様をお連れしました。」
「なっ⁉︎」
クリフォードの返事を待たずにマクスは扉を開ける。
大丈夫、大丈夫。
ドクドクと緊張から高鳴る鼓動を、必死に宥めてエリーは入室する。
非道な扱いを受けたことは許せない。
でも、怖い。
恐怖と怒りと混在する感情で
泣きそうになりながらも、
エリーは毅然とした態度でクリフォードに向き合う。
勿論、挨拶などはしなかった。
「マクス、どういうことだ?書類含めて全て渡したはずだが。そうか、金銭か。
足りなかったようだな、いくらだ希望は? 」
黙っていたならば、旦那様は、
女性を全て虜にしてしまうのではないかともいえる美貌の持ち主だわ。
性格や行動はありえないけれど
「お、お金なんていりません!!
ご自分がされたことをなんとも思っていないのですか?
もう、このようなひどいことを、他の誰にもしないでください!」
エリーは、震えそうになる声で、必死に訴えを続ける。
「なんだと?
お前に俺の苦しみが分かるか、突然襲ってくる苦痛、ずっと眠れないこの苦しみが」
「だからと言って、こんなことが、こんなことが許されるはずありません!」
「うるさい!全てはあいつが悪いんだ」
「メリッサ様のことでしょうか?」
クリフォードは一瞬驚きの表情を浮かべ、マクスを一瞥した。
「あぁ、そうだ!」
「メリッサ様は、いったい旦那様になんとおっしゃったのですか?
どうか、もうあのようなことはおやめください。
先程も女性を見かけましたが…
」
エリーの言葉を遮るように、マクスがクリフォードに詰め寄る。
「旦那様!今度は、どなたを攫ってきたのですか⁉︎」
「は?誰も連れてきていない。
100番目の効果で呪いが解けるのを待ってる」
「旦那様!エリー様の前でよくもそんな酷い言動を!はて?ではいったい」
「え……?でも…私、女性を見かけました」
先程もこの部屋に来る時、庭とそう、隣りの部屋付近でも」
「もしかして!君は視えるのだな?」
クリフォードが急に近づいてきたので、咄嗟に後退るエリー。
「え?そんな…もしかして…ゆ、幽霊とかおっしゃるのですか?
そんな、私には…
メ…メリッサ様のお墓はお庭に?」
「いや、墓はない。メリッサは、死んでいない。
正確には、姿を消したのだ」
「え?どういうことでしょうか」
マクスから自害したと聞かされていたエリーは、困惑する。
「私の前でいなくなった。消滅するように、呪いの言葉をかけて。
それ以来ずっと苦しんでる!
何度も王城に出向いたが、メリッサの
ことには関与しない、自害したも同然だと言われた。」
クリフォードはエリーの両肩を勢いよく掴み、揺すりながら叫び出した。
「そうか、君には視えるのだな!
メリッサに頼む、呪いを解くように言ってくれ!」
突如「バコーン!」という、清々しいほどに盛大な音が響き渡った。
「旦那様、エリー様に乱暴はお止めください!」
「痛っ!マクス、お前何をする!クビにするぞ」
あろうことか、マクスは履いていた室内履きを手にとり、クリフォードに一撃をお見舞いしていた。
マクスは何くわぬ顔をして、室内履きを履きなおしている。
「私をクビになっさったら、この邸に使用人は誰もいなくなりますよ。
それに私もメリッサ様のことについて初耳ですが。
旦那様は、ご自分の都合のいいように捻じ曲げて考えておられるご様子。
さすがに私も、もう愛想がつきました。
先代方に顔むけ出来ません…」
「うるさいわっ! まぁ、いい。とにかく隣りの部屋に、もしかしたらメリッサがいるかもしれない。一緒に行くぞ」
マクスは、クリフォードの後には続かずにエリーへと声をかける
「エリー様、どうなさいますか?」
「マクス、お前、主人の命令が聞けないのか?」
「主とおっしゃるらば、少しは行動を改めて下さい!
エリー様どうされます?」
マクスはクリフォードに対しては、強い口調だけれど、エリー対しては優しく尋ねている。
無理に協力する必要はないというように。
「わ、か、りました。一緒に行きましょう、マクス」
「かしこまりました。エリー様!」
「おい、お前ら、何だかおかしくないか?主は、私だぞ!」
ブツブツ言うクリフォードのことは気にせず、一行は、隣の部屋へと向かった。