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控えめな性格でてて可愛い
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夕焼けが街をやわらかく染めて、二人の影を長く伸ばしていた。
すちは、隣を歩くみことをちらりと見る。
なにげない表情。
風で揺れる髪。
少しだけ上がった口元。
――かわいいな。
それはもう、反射みたいなものだった。
「みこと」
名前を呼ぶ声が、少しだけ低くなる。
「ん?」
無邪気に振り向いたその瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられる。
すちは周囲を軽く見渡す。
人通りの少ない細い路地。人気はない。
そのまま手首を引いて、壁際へ。
「え、すち……?」
戸惑う声。
けれど次の瞬間、唇が触れた。
短く、でも確かに重なる感触。
みことの体がぴくっと揺れる。
離れたあと、頬がじわじわ赤くなる。
「……いきなり……」
「無理」
「え?」
「かわいすぎて無理だった」
さらりと言われて、みことの顔はさらに熱くなる。
「も、もう……」
視線を逸らしながらも、どこか嬉しそうで。
すちはその反応がたまらなく好きだった。
そのまま帰路につき、家へ。
玄関を閉めた瞬間、外の空気が切り離される。
静かな室内。
「おかえり」
「ただいま」
それだけのやり取りのあと。
すちはみことをぎゅっと抱きしめた。
「ちょ、すち……」
「さっきの続き」
耳元で囁く。
そのまま、もう一度。
今度はさっきより少し長く。
触れて、離れて、また触れて。
何度も、何度も。
「……ん、」
みことの声が小さく漏れるたび、すちの理性が揺れる。
頬は真っ赤で、目は潤んでいて。
何度もしているのに慣れていない反応がいちいち新鮮で、かわいくて。
「ほんと……反則」
「なにが……」
「全部」
また一つ、唇を重ねる。
みことが少しだけ目を閉じて受け入れるのを見ると、止める理由なんてどこにもなかった。
部屋の中。
二人きりの時間。
ソファに並んで座っていたみことが、ちら、とすちを見る。
少しだけ迷うように視線を揺らして。
「……すち」
「ん?」
「……キスして」
小さな声。
すちは一瞬だけ固まる。
「……」
「だめ?」
「だめなわけないだろ」
むしろ弱い。
そういう顔で、そういう声で言われたら。
みことは少しだけ身を寄せる。
「キスしたい……」
追い打ち。
すちは軽くため息をつく。
「ほんと、ずるい」
そう言いながらも、もう距離はゼロだった。
唇を重ねる。
ゆっくりと、優しく。
さっきよりも、もっと穏やかに。
みことは目を閉じて、それを受け取る。
離れたあと、ふわっと笑う。
「……へへ」
その表情は、心から満たされたようで。
すちは思わず目を細める。
「……なにその顔」
「幸せ」
あまりにも素直な言葉。
すちは一瞬、言葉を失う。
こんなふうに笑われたら。
こんなふうに求められたら。
「……一生敵わないな」
ぽつりと呟く。
「え?」
「なんでもない」
そう言いながら、もう一度軽く唇を重ねる。
きっとこれからも、何度だって。
かわいいと思うたびに。
求められるたびに。
すちはみことに、抗えないままなんだろう。
【補足】
👑はキスする時、自らする事は少ないが、🍵におねだりする事が多い。