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「ああ、それもある」
少し引っ掛かりを覚えるいい方ではあったけれど、否定はされなかった。
そのことに、リリアンナは小さく息を吐く。
セレノはマーロケリー国の皇太子殿下だ。
そんな人物が国境を越え、辺境伯の居城を訪れる。
ましてイスグラン帝国とマーロケリー国は、これまで決して良好な関係を築いてきたわけではない。
外交問題が絡んだことを、ランディリックが自分に何も話せなかったのは当然だ。
きっと、正式に決まるまでは口に出来ないことだったのだろう。
ランディリックはいつだって、確実になっていないことは口にしない。
以前、ウールウォード伯爵家の未来について尋ねた時も、彼は「今はまだ話せない」と言っていた。
今回、セレノ殿下の訪問について話してくれたのだって、ようやく正式な話として動き始めたからこそなのだろう。
「もっと早く聞きたかったけど……」
リリアンナは微笑んだ。
「それなら、話せなかったのも仕方ないわ」
「……リリー」
「だって、国同士のお話なのでしょう? まだ決まってもいないことを、私に教えるわけにはいかないもの」
納得したように頷くリリアンナを、ランディリックはしばらく黙って見つめていた。
やがて、何かを言いかけるように唇を開きかけたのだけれど――。
「あ……」
リリアンナの視線が、ふと窓の外へ向いて中断されてしまった。
夕暮れの空を、大きな白い影が横切っていく。
翼をいっぱいに広げ、風を捉えながら城へ近付いてくるその姿には見覚えがあった。
「雪鷹だわ」
ランディリックも窓の外へ視線を向ける。
白い鳥は大きく旋回すると、城の一角に設けられた専用の止まり木へ向かって降りていった。
「また書簡が届いたのね」
「……そのようだ」
短く返された声を聞きながら、リリアンナはすっかり納得していた。
あの雪鷹も、きっとマーロケリーから飛んできたのだろう。
セレノ殿下の来訪。
頻繁に交わされる書簡。
ヴァルム要塞と城を行き来するランディリック。
(あれ……?)
そこでふと、別の疑問が浮かんだ。
「ねえ、ランディ」
「なんだい?」
「そういえば、雪鷹って……どうやってここへ来るの?」
「どうやって、とは?」
「だってランディは、ずっとここにいるわけではないでしょう?」
ヴァン・エルダール城にいる日もあれば、ヴァルム要塞にいる日もある。
それなのに雪鷹は、まるでランディリックがどこにいるのか知っているかのように書簡を届けてくる。
「鳥に、今日はお城へ行って、明日は要塞へ行って、なんて教えるわけにもいかないでしょう?」
素朴な疑問を口にすると、ランディリックは一瞬きょとんとして……。
やがて、おかしそうに笑った。
「そういえば、キミには話したことがなかったね」
「やっぱり何か仕組みがあるの?」
「ああ」
ランディリックは頷く。
「雪鷹は、ただ手紙を運んでいるわけじゃないんだ」
コメント
2件
それも、ってなんかすごく意味深。
うわあああ今回もエモすぎた…!!😭💕 リリアンナが「話せなかったのも仕方ないわ」ってランディリックを気遣うシーン、二人の信頼関係がじんわり伝わってきて胸が熱くなったよ…! しかも雪鷹にまさかの秘密が!?「ただ手紙を運んでるわけじゃない」ってランディリックの笑顔、優しすぎてキュンが止まらない…!! 続きが気になりすぎるよ〜!!✨