テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
こちらの茨さん🖌️
35
71,560
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
それから三日後、ソラヤはアルタリア王国へと帰っていった。
豪儀な物で、連れてきた馬車だけに飽き足らず、新たに二頭の馬と荷台を買い、御者も雇って水を積んだ。
その二台に積まれたのは、もちろん全部温泉水だ。
水はともかく、旅先で即座に馬と荷台を購入とは、それも、いくら王女様とはいえ、子供のポケットマネーで買ったのだから、 やはりアルタリアは豊かな国なのだなと、シトリンは感心してしまった。
当のソラヤは『あと一日あれば、もっとたくさん馬と荷台を用意出来たのに!』と帰路の途中愚痴を漏らしていたとシトリンが知ったら、流石に唖然として声も無かった事だろう。
(これで評判が広まってくれれば、そんな簡単な事は無いんだけど……)
アルタリアには、宝石の買い付けで諸国の商人が出入りしている。
宝石を買い付けに来るのだから当然、宝石商ばかりだが、商人という物、商機に敏感でなければやっていけない。新しい儲け話を探している者も少なくないはずだ。
そして、水はソラヤに渡したのだから、アルタリアではお姫様ご愛用の品として珍重され、産地であるラヴァリン王国に問い合わせが来る。という流れになるかもしれない。
いくらなんでも皮算用が過ぎると、シトリン自身思わないでもないが、アルタリアの財力を考えると、期待せずにはいられない。
(古文書に書かれた、癒しの力。それが真実、いえ、それよりもっとすごい力を持っているだなんて思わなかったわ)
古文書の時代に生きていた人はもう、一人も居ない。癒しの力は、信心から来る病は気からな類の物で、実はただの迷信だった可能性だってあった。
その場合でも手立ては考えていたが、それを使う必要が無くなったのは僥倖と呼ぶ他ない。
そして何より、折良くソラヤが訪ねて来た事だ。
他国の誰かに水を託して、その素晴らしさを広めてもらおうという計画はあったが、果たして誰に託したものか。
誰彼構わず渡して、怪しげな物を押し付けられたと悪評が立ったら、観光地化計画は一歩目で潰えてしまうだろう。
だから最初に渡す相手は、慎重に選定する必要があった。ソラヤはまさに、適任である。
シトリンと親交が深いので、きっと信頼してもらえる。そして、アルタリアは豊かな国だから、大量に買ってくれる事だろう。
親友に対して、こんな打算的な考えをしてしまうのは、少し悪い気もするのだが、水の効能を喜んでくれた事は間違いないのだから、気にしない事にした。
(さて、とりあえずはソラヤが上手くやってくれると信じて、私は私の仕事をするだけよ!)
沈みゆく夕陽に向かって、シトリンは気合を入れるように拳を握り、ふんと息を吐いた。