〜side小柳〜
署に戻った俺達はそれぞれの仕事に戻る
叶さんは一度ローレンさん達と会議
俺は出払って誰もいない署内での武器庫の補充
弾は沢山あるとはいえ、補充しても補充しても追いつかない
アーマーは撃たれる訳ではないからそれほど減る訳ではないが、こちらは数に限りがあるためみんな節約して使っていた
「‥‥はぁ」
大きなため息を吐く
台車で運んで来たものを棚の中に並べて帳面に数を控える
これで棚の中はパンパンに補充し終わった
台車を戻し、武器庫を出てトイレに向かう
別に用を足しに来た訳じゃない
鏡の前に立ち自分と見つめ合う
耳がついている
目、鼻、口
手、足
尻尾
朝と変わりはない
「あ、あ‥‥」
口元を鏡で確認しながら発声する
「わふっ‥‥うぅ〜‥‥わぅ‥‥」
やっぱりそうだ
言葉が出づらい
出づらいと言うか、意識しないと難しくなってる
叶さんが何度も不思議がってた
もう誤魔化しきれないだろう
こんなに急に喋れなくなるなんて‥‥
そして怖くなる
今こうして自分で考えてるけど、意識までも持っていかれたらどうなるんだろうか?
ただの犬になる?
犬ならまだ良い
狼‥‥
獣になってみんなを襲い始めたら‥‥?
エクスさんやローレンさん
叶さんを見境なく襲い出したら‥‥
考えたくはないが、最悪の事は想定しておかないといけないと思った
だとしたら俺はここにいない方がいい?
タイミングを見計らって車で出て行こう
俺が身を隠してる間に『世界統合』が終わるかもしれない
そうすれば俺の体も元に戻れるかもしれない
かもしれない
かもしれない‥‥
そう考えるだけで不安が体を支配する
不安に思う時間は短い方がいい
今すぐ行動してしまおう
俺はすぐにトイレを出る
誰もいない廊下を歩き出そうとした
「ロウ!」
急いでこちらに向かってくる叶さん
タイミングが悪かったかと思いながら笑顔で振り向いた
「僕さ今からまた市役所に行かなきゃならなくなったんだけど、ロウは署で待っててくれる?」
俺は叶さんの前にしゃがみ、尻尾をブンブン張ってみせた
「え、何?可愛いけど」
さらに上目遣いで顔を見ながら頭を差し出し、耳を伏せた
「えぇ?頭撫でろって事?もうロウったら」
髪の毛がぐしゃぐしゃになるほど頭を撫でられ、耳も撫でられる
叶さんの手を掴み頬擦りする
「クゥーン‥‥ゴロゴロゴロゴ‥‥」
「鼻も喉も鳴らしちゃって。すぐに帰って来るからね!」
前屈みになり頬にキスをするとパタパタと走り出す
「‥‥っ‥‥はい!」
最後の言葉になるかもしれない
引っかかりながらも叶さんに返事を返した
叶さん、もう俺喋れないかもしれない
でも
すぐに会えるよな
そう自分に言い聞かせ、奮い立たせる
さっき自分で補充した弾を武器庫から持ち出す
署内を静かにゆっくりと‥‥ローレンさん達に合わないよう駐車場へと歩き出す
ガラスの扉に手が伸びた時、無線連絡が入った
“誰か市役所まで来てほしい!急に凄い数のゾンビに囲まれて‥‥市長達を助けて欲しい。僕はちょっと動けないみたい‥‥”
“叶さん⁈待ってて、今すぐ向かう!”
ローレンさんが無線をしながらロビーに走ってきた
「行くぞ小柳!早く乗れ!!」
俺は無言のまま頷きローレンさんの車に飛び乗った
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コメント
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うわぁー!どうなるんだろ、めっちゃ気になります!てか、こやさんが喉を鳴らした?!主様最高ではないですか!