コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
大学の講義が終わり、アルバイトへ向かう。
あの事件以降、川口さんは来なくなった。
蓮さんのアドバイスもあり、店長に相談すると
「そんな危ないことがあったんだ。怖い思いしたよね。もし店に来たら警察に通報するし、絶対に店に入れないようにするから、安心してな」
つまりは出入禁止の対応をしてくれるそうだ。
お店で働くということは安心したが、あれから帰り道が怖かった。
もしもまた現れたら……。
そんなことを考えてしまう時もある。
蓮さんにもバイト先を変えた方がいいと言われたが、店長から「辞めないで」と懇願されたため、カフェでのバイトは続けることにした。
「俺の仕事が早く終わった時は迎えに行きます」
蓮さんはそう言ってくれたが、忙しく残業もあるため時間も合わない。それに、これ以上甘えるわけにもいかない。
金銭的余裕が少しなくなるが、念のためしばらくは一時間バイトを短くするといった対応にしてもらった。
バイトが終わり、帰宅をする。優菜からLINNが届いていた。
<今日のこと、蓮さんにお礼を言っておいて!あと、あの女のことも相談するんだよ>
彼には心配をかけたくなかったが、優菜の勘はよく当たる。話したいことがあるため、家に帰ったら電話をしたいというLINNを彼に送った。
夜の二十三時過ぎ――。
蓮さんから電話がかかってきた。
慌てて携帯を取る。
「もしもし?」
<すみません。残業で遅くなってしまいました。今、帰る途中なんですが……。何かありましたか?>
彼の声を聞くと落ち着く。
「あの、実は……」
上手く伝わらないかもしれないと思ったが、今日のお礼と真帆ちゃんのことについて相談をした。
<今日は、ありがとうございました。仕事途中で愛に会えるなんて思っていなかったので、嬉しかったです。優菜さんにもお礼を伝えておいてください。愛と優菜さんのやり取り、見ていてとても微笑ましかったですよ>
そう彼は優しく話してくれた後
<その子については、俺は特に問題ありませんが。愛以外の女の子には全く興味がないので。ただ、愛に危害を加えないか心配で……。それだけです。何かされそうになったら言ってください。直接、話をしてもいいですから>
私以外には興味がない、さらっと伝えられる言葉が嬉しかった。
「わかりました。ありがとうございます」
彼の声を聞くと、安心する。会いたくなってしまう。
<愛、元気がないですけど、辛いですか?大丈夫ですか?>
「大丈夫です!蓮さんも早く休んでくださいね」
おやすみなさいと言って、電話が終わる。
次の日、普通に優菜と講義を受けていた。
一限目が終わり次の講義に行こうとすると、目の前から真帆ちゃんたちが歩いてくる。優菜も気付いたようだが、無言で通りすぎようとした。
その時
「ねえ、愛ちゃん。昨日のこと、考えてくれた?」
立ち止まって話しかけられた。
まだそんなことを考えているんだ。
「ごめんなさい。真帆ちゃんには紹介できない」
そう言って立ち去ろうとした。
「わかった。じゃあ、自分で奪っちゃうからいいや」
彼女はニッコリと笑った。
「はあ?」
思わず優菜が声を上げたが
「大丈夫。行こう?」
私たちはその場から離れる。
「ああ、ムカつく!なにあれ?」
空いている教室で優菜と話す。
「どうするんだろうね、どう蓮さんと会うつもりなんだろう。連絡先だって知らないのに」
「わからないよー」
私は頭を抱えるが、蓮さんの昨日の言葉を思い出し落ち着こうとする。
大丈夫、大丈夫……。
そんな言葉を心の中で繰り返した。
次の日、いつもと変らない日常。
優菜と二人で学内を歩いていた。
「最近、バイトの方はどう?あれから大丈夫?」
優菜も心配をしてくれている。
「うん、大丈夫!それに今日は、蓮さんが迎えにきてくれるっていうから安心なんだ」
急遽、他の店員が風邪を引いてしまいしばらく出勤ができなくなった。その代わり、私が時間を延ばして勤務をすることになった。店長は謝ってくれたが、他に都合のつく人がいなかったらしい。
蓮さんにLINNで伝えると
<その時間であれば、迎えに行けるので迎えに行きます>
そう言ってくれた。
「じゃあ、安心だね」
「うん!」
私たちの会話を後ろで聞いていた人がいたことを知らなかった。
「真帆!」
彼女は真帆と呼んだ人物の近くに行き、先ほどの彼女たちの会話を伝えていた。
「へー。そうなんだ!じゃあ、バイト先に行けば会えるんだね。分かった、ありがとう。これ、お礼だよ!」
真帆と呼ばれた子はご機嫌で、バックからとあるものを渡す。
「これ限定品のリップじゃん。欲しかったやつ!ありがとう」
友人は、彼女からもらったものをカバンに入れた。
「またお願いね!」
「もちろん、真帆のためだもん」
他人が見ていると、物で人を操っているような印象を受ける。しかし、彼女はそんなことを気にしてはいない。友情なんてそもそも存在しないと思っているからだ。
「イケメン君、早く会いたいな」
彼女は一人呟いた。