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一章 1話
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「ねぇ!さらはどっちがいい?」
そう問いかけられてふっと視線を上げる。美玖が袋から何かを取り出して私の机に並べた。
「…これ、バングル?」
「そう!昨日三百円ショップで売ってるの見つけたんだけどさ!此れ可愛くない?!お揃いでつけようよ~!ゴールドとシルバー、どっちがいい?」
朝のホームルームが始まるまでの僅かな時間、教室は賑やかな声で溢れていた。
最近の私は美玖と二人で他愛もない会話をしながら過ごすことが多い。大体は何事もなくチャイムが鳴って一日が始まるけれど、偶にこうして選択を迫られることがある。
―――どうしよう。
伸ばそうとした手に迷いが生まれて、指先を握りしめた。並べられた二つのバングルは、私にはどちらも同じように見える。違いがよくわからないまま右側を指さした。
「…私はこっちがいいな」
手渡されたそれは、触れるとひんやりしていて硬い。
「さらはこっちを選ぶかと思った~!」
「ぇ?」
「この前、シルバー系のほうが好きって言ってたじゃん?」
今、私の手にあるのはゴールドのようだ。バングルを握りしめながら、私は笑みを浮かべる。
「此の色も好きなんだ」
不審に思われなく対応できたか不安になる。私がシルバーを好きといったのは夏前のことで、今では自分が何色を好きなのかよくわかっていない。
私には…―――全てのものがモノクロに見えている。
「可愛いね!」
腕にはめて見せると美玖は得意げに頷いた。
「お金、払うよ」
「いいのいいの!私がさらとお揃いでつけたかっただけだから!」
「ありがとう、大事にするね!」
「てか聞いてよ~!今月のプチプラでさ、可愛いアイシャドウがあってさ~、次のバイト代入ったら買っちゃおっかな~」
ゴールドのバングルを選んだことをあまり追求されなくてよかった。
乗り切れてほっと胸を撫で下ろした。
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(短くてごめんね!)