二話
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あることがきっかけで私の視界から突然色が消えた。
淡青の澄んだ空も、深緑の黒板も、木製の唐茶色の机も、全てがモノクロに見えるようになってしまったのだ。
最初は自分でも何が起こったのか理解できず、戸惑いながらも必死に調べた。
ネットを駆使して、なんとか原因を探ろうとしているとあるページに目が止まった。
タイトルは―――”灰色の異常(grey error)”。
視界が灰色になってしまう病。
色覚異常の症状と異なる点は、人の纏っているオーラだけが色づいて見えることらしい。
それ以上の情報はいくら調べても出てこず、まるで、都市伝説のようだったが、確かに私の症状に当てはまる。けれどこんな奇妙な体験を誰かに話しても信じてもらえない気がせず、二ヶ月たった今でも誰にも打ち明けられていない。
最近、だんだんと分かってきなもの。
それはオーラの色が同じ人は同じタイプ。
色は、人の個性を表すみたいだ。
美玖みたいな、好奇心旺盛で人前に立つのが得意な人は橙色のオーラが多く、クラスで発言力のある男子も此の色。
他には、黄色や赤色、緑色等の鮮やかな色がほとんどだ。
時折濁っている人も居るものの、灰色のオーラは私だけだった。
最初は自分のオーラが見えないだけだと思っていた。
でも他の人のオーラの見え方とよく似て身体に滲んでいる。
美玖達みたいに気えりな色とは違う。、個性のない灰色。
此の色は、周りに合わせて流されている曖昧な私を表すかのようだ。
「そういえば隣のクラス、入口のアーチ作り結構進んでるっぽいよね~」
美玖の言葉に私は頷く。土台は既に出来ていた。
もう九月なので、私達のクラスも作業を開始しないと間に合わなくなってしまう。
だけど教室の中で声を上げる生徒は誰も居ない。
「展示の作業もそろそろやらないとダメだよね…」
緊張しながらも話題を振ると、一瞬沈黙が流れた。
失敗した。言うんじゃなかった。
冷や汗が背中に滲み、手のひらを握りしめる。
もっと違った言い方をするべきだったのかもしれない。この空気をどうやって戻そう。
焦る程言葉が思い浮かばなくなっていく。
「このまま何もやらずに終わったほうが楽じゃない?」
私に同意を求めるように美玖が笑いかけてくる。
うん、そうだよね。と言えば此の場をやり過ごせるとわかっている。
だけど此れは本音じゃない。でもまた微妙な空気になってしまわないか怖くて、口に出せなかった。
「一年の文化祭ってほんとやる気でなくない?」
不満を漏らす美玖に、私は何も答えられない。けれど美玖はどんどん話を進めていく。
「なんで雑用とかの展示なのって感じ。てか、展示なんてサボったってバレなくない?これだけ人が居るんだしさ」
美玖の声が響いてしまい、窓側に居る一部の女子達が眉を顰める。そのことに美玖は気づいてないようだった。
「早く二年になりたいよね~。屋台のほうが絶対楽しそう!ね?!」
自分の気持を隅に追いやる。そして私はぎゅっと目を瞑るように司会をお潰して笑った。
「だね」
”私は展示作業楽しみだな。”そのたった一言が言えない。
此れを口にしたとこで私を否定しないかもしれないのに、友達と違う意見を持つことが怖くて、些細な言葉さえ躊躇ってしまう。ほんとの気持ちを嚥下して、顔に笑みを貼り付けたまま、腕についたバングルを指先でいじる。
どうして私はこんなに臆病なんだろう。
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(皆も、こういうことありませんか?私はよくあります。♡、よろしくおねがいします!)
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