テラーノベル
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密室の熱気は、もはや理性の介在を許さないほどに濃密さを増していった。出木杉は、これまで自分を縛り付けていた「正解」や「予測」という概念をすべて脱ぎ捨て、ただ本能のままに静香の深淵へと分け入る。薄いゴムという唯一の境界線さえも取り払われたとき、二人の肉体は、物理的な結合を超えて魂の根源で混じり合った。毎晩、肌と肌が直接触れ合うたびに、出木杉は彼女の内側へと己のすべてを注ぎ込み、静香はその熱を余すことなく受け止める。避妊という防壁を失ったその行為は、単なる快楽ではなく、取り返しのつかない「結果」を招き寄せるための儀式へと変貌していった。
静香の体は、夜を重ねるごとに目に見えて変化していった。彼女の肌はさらに透き通り、瞳にはどこか遠くを見つめるような慈愛の光が宿る。それは、出木杉から与えられる生命の証を、自分の一部として育み始めた者の輝きだった。
「……私たち、もう戻れないわね」
静香が耳元で囁く。その声に怯えはなく、むしろ運命を受け入れた安らぎさえ混じっていた。出木杉は彼女の膨らみ始めた腹部にそっと掌を当て、そこから伝わる確かな鼓動に耳を澄ませる。彼がこれまで学んできたどの公式も、この「生命の質量」を説明することはできなかった。
学校では、二人は相変わらず「優秀な二人」を演じ続けていた。しかし、出木杉の書く文字には微かな震えが混じり、静香がふとした瞬間に見せる仕草には、隠しきれない母性が溢れ出す。
夜が来るたび、二人は互いの体温を頼りに、暗闇の先にある未知の領域へと足を踏み入れる。それは、世俗の倫理から完全に隔絶された、二人だけの閉じた王国だった。ゴムを介さないその剥き出しの交わりは、やがて来るであろう「誕生」という名の審判を、刻一刻と手繰り寄せていた。
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