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CASE四郎 10月26日 PM12:00
佐助に気絶させられた白雪は静かに寝息を立てながら、俺の近くで眠っている。
用意されたレトルトのクラムチャウダーに手を付ける気が起きない。
他人が用意されたものもあるが、食欲がない。
「食べないんですか、毒なら入ってませんよ。そのスープ、インスタントですから」
「食欲がねーから、いらねー。作ってる所を見てる限りでは、何か入れてる素振りはなかったな」
「食べたくないなら、食べなくていいですよ。椿様は食べてほしいって、言ってましたけど」
「…」
椿の命令に忠実な女。
椿もこの女の事を信用して、ここに残した…と考えて良いのか。
このタイミングで、椿が呼び出された事が気に掛かっていた。
神楽ヨウが単独で動き出した可能性が高く、その事はボスが知っているかどうかだ。
怠い体では思考を巡らすのにも、疲労が溜まるが仕方がない。
ただ、ボーッとしてるよりはマシだ。
「貴方に言っておかないといけない事がありました」
「俺に言いたい事?何だよ」
壁に体を預けさせながら、佐助に尋ねる。
「嘉助、いや神楽ヨウでしたっけ。アイツ神楽組の若頭に戻るそうですよ」
「は?」
「質問される前に答えておきますけど、椿様を就任式に呼んだんですよ。それで椿様が急遽、東京に帰られたんです」
「…」
佐助の言葉を聞きながら、俺は思考を巡らせた。
神楽ヨウが椿にかけたJewelry Wordsの効力が切れた感じか?
今のタイミングだからこそ、神楽ヨウは神楽組の若頭に戻る事を決め、椿と対等の立場を手に入れる為だ。
椿を就任式に呼んだのは、自分が神楽ヨウだと隠す必要がなくなったからだ。
Jewelry Wordsの効力が無くなった事は、神楽ヨウにとっては大きな問題ではない筈。
ボスは神楽ヨウに何らかの条件を突き付けられ、条件を受け入れ就任式のやる事を許可した感じか。
条件の内容は考えなくても分かる。
今のボスは俺の名前を出されば条件を飲むしかないと、神楽ヨウに逆手に取られている状況になっていて…。
そう思った時、俺はハッとした。
そうか、神楽ヨウは全てを利用する気だったのか。
ボスと自分の立場を逆転させ、自分の都合の良いように事を動かす為だ。
神楽組は、兵頭会の傘下に入っているおかげで名前が売れ出した。
それまで神楽組は小さく、組員も少なく、周りからは目にも止まらない組だったらしい。
ボスが神楽組の組長の神楽俊典とは親しい仲だった
為、ボスが目を掛けて兵頭会の傘下に入れたのだ。
神楽俊典が招待状を出すより、ボスの名前を使って招待状を出した方が集客率が上がるし、祝金も跳ね上がる。
神楽ヨウは椿を徹底的に、裏社会から消すつもりだ。
「椿様は貴方の病気の事を気にしていました、自分の事のように」
「アンタ等のボスに心配される筋合いはないがな」
「羨ましい、椿様に心配されて」
佐助はそう言いながら近付き、処方箋とミネラルウォータを渡してきた。
モゾモゾッと、俺の背後で白雪が体勢を変えている。
「貴方に死なれては困ります、今は。やっと、昔の椿様に戻ってくれたんだ…、ガハッ!!?」
ポタッ…。
ドサッ!!!
佐助の口から血が噴き出され、体勢を崩したまま床に倒れ込む。
いきなり佐助が血を吐いて倒れた?持病か何かか?
「おい、さ…」
声を掛けようとした時、佐助の背中に銀色の光る包丁が深く刺さっていた。
それも1本ではなく、2本も刺さっていたのだ。
「何で、刺さってんだ?いつの間に包丁なんか…」
言葉を発した瞬間、背後から感じていた白雪の気配が消えていた事に気付く。
バッと勢いよく後ろを振り返るが、やはり白雪の姿はなかった。
「そんなに好きなら、ここに残らなくても良かったのよ?佐助」
キッチンの方か等声が聞こえ、視線を向けると顔の血色の良くなった白雪が林檎を持って立っていた。
ただ立っているだけなのに、この女から不気味は雰囲気っが漂っている。
白雪が置かれていた包丁にゆっくりと触れると、包丁が静かに浮き上がって行く。
さっきまでの大人しい雰囲気とは違い、太々しい態度で白雪は話を続けた。
「本当、可哀想な女。椿が騙されていたとは言え、アンタが欲しっかった好意は私に向けられて可哀想」
「クソババア…ッ」
ズポッ!!!
白雪の話を聞いていた佐助は乱暴に背中に刺さった包
丁を抜き、そのまま白雪に向かって投げ飛ばす。
ビュンビュンッ!!!
ブシャッ、ブシャッ!!!
投げ飛ばされた包丁が白雪に当たりそうになるが、軌道が変わり白雪の持っていた林檎に突き刺さる。
間違いないく佐助が投げ飛ばしたナイフは、白雪のいる方角に的確に飛ばされていた。
佐助の時と同じ事白雪にも出来るのか?
「本当に可哀想な子、私の事が殺したくて仕方がないのにね」
ブシュッ、ブシュッ。
白雪がそう言うと、林檎に突き刺さった2本のナイフがゆっくりと抜け始める。
人がナイフを持って抜いたように、ナイフが抜けて行く。
やはり勝手にナイフが動いているのは、白雪のJewelry Wordsの力だと確認が出来た。
ズキンッ。
頭痛がした瞬間、白雪が佐助にナイフを飛ばす映像が脳内に流れる。
ものの数秒後に流れた映像と同じように、白雪が佐助に向かってナイフを飛ばす。
ビュンビュンッ!!!
「チッ、面倒事を増やしやがってっ!!!」
「っ!?」
グイッと力強く佐助の手を引き、目の前にあったテーブルを蹴り飛ばし、ナイフが当たらないように盾にする。
ガシャーンッ!!!
キィィィンッ!!!
蹴り飛ばしたテーブルがナイフを弾き、弾かれたナイフは力なく床に落ちた。
カランカランッ。
ズキンッ!!!
動いた衝撃で肺に激痛が走り、胃から何か込み上げてくる。
「ガハッ!!!」
ビチャァァ…。
俺の口から吐き出されたのは赤黒い血の塊で、吐血した所為で食道から喉にかけて嫌な痛みが走った。
クッソ…、マジで自分の体が鬱陶しく感じる。
テーブルを蹴っただけで、このザマかよ。
何故か白雪は、俺と佐助の今の状況を見て気に入らなさそうにしていた。
「気いらないなぁ、簡単に死んでくれないし。何で、抱き締められてるの?」
「「は?」」
佐助の手を引いた衝撃で、佐助の事を抱きしめている状態になってしまっている。
結果的にそうなってしまっただけで、俺が好意を持って佐助の事を抱き締めた訳ではない。
現に佐助なんて、嫌そうな顔をしている。
「やっぱ、お前邪魔だなぁ」
そう言いながら白雪は手を前に伸ばして、指を曲げて何かを握る仕草をした。
ググググググッ!!!
「ゔぁっ!!!」
「は、は?」
急に佐助の体が浮き上がり、苦しそうに首を掻き毟り出す。
その様子はまるで首を絞められているようだった。
白雪が佐助の首を締め上げているのか?
骨と皮だけの細い体の中に、首を締め上げれる程の腕力があったのか?
「こんっ…の、イカれ女っ!!!き、しもいない、くせにっ…!!!」
「アンタにたいなガキよりも、自分の力の使い方ぐらい知ってんのよ。それに、騎士ならもうすぐ出来るわ」
白雪は話しながら佐助の首を掴んでいるであろう手首で、何かを払い除ける仕草をする。
ビュンッ!!!
ドンッ、ゴンッ!!!
「ゔっ…」
ドサッ…。
物凄い勢いで佐助は壁に向かって投げ飛ばされ、頭を強打した所為で気を失ってしまった。
この女は俺が今まで見てきたJewelryPupilとはものが違う。
自分のJewelry Wordsの使い方が上手いのだろう。
モモ達のように小さな子供は、白雪のように自分自身のJewelry Wordsの能力を理解出来ていない。
「お前、Jewelry Wordsを使ったのにさ。体に影響が出ないんだな」
俺は床に落ちたグラスの破片を手に取り、白雪にバレないように話を振る。
チクッと手のひらに痛みが走るが、この程度の痛みなら表情に出さないのは簡単な事だ。
「出てるわよ、肉眼で見えない所にね」
「あ、そう」
予想外の反応だったかのか、白雪は気に入らなさそうな態度を見せる。
さっきから何なんだ?
「私に興味がないのね?娘の方が良い?」
「俺がアンタに?興味を引く所がどこにある?それに過ごした時間が違う、そう思うのは自然な事だろ」
「ダメよ、そんなの!!ダメに決まってるでしょ!?」
「は?」
大きい目を見開いて、歯茎を剥き出しにしながら言葉を放つ。
この女が怒り出す理由が分からない。
情緒が不安定なのか?
「相手が娘でも、拓也と同じ血が流れてる男を取られる訳には行かないわ」
白雪はそう言って、手で銃を撃つような仕草をしてきた。
ブシャッ!!!
右の脇腹部分から、服の上からでも分かるぐらいに出血していた。
身体中に嫌な痛みが走り、ジュワッと代謝が上がったように熱くなってくる。
何回か受けた事のある痛みだ。
白雪が俺の事を撃ってきやがった。
服の上から撃たれた部分に触れてみると、やはり血が滲んでいた。
今回の白雪の行動が読めなかった。
いや、例え読めていたとしても防ぎようはなかっただろう。
この女、今まで会ってきたJewelryPupilとは物が違う。
「ふふ、そうそう大人しくそていれば良いの」
白雪はほくそ笑みながら、ゆっくりと俺に近付いてくる。
お互いの鼻と鼻がくっつきそうな距離まで、白雪が近付いてきた。
イエロースキャポライトの瞳が、静かに捉えられる。
白雪の左側のウエスト部分が、不自然に凹み始めていた事に気が付いた。
「私、欲しいものは必ず手に入れたいの。拓也も拓也の弟である貴方は私のモノになる運命なの」
「何言ってんだ、お前。気持ちの悪い事、言ってんじゃねーぞ」
「最初は皆んなそう言う反応するの、それが可愛い所でもあるんだけどね?ふふ、貴方みたいな男の人は、どんな感じになるのかしら」
白雪がそう言いながら、俺の顔に触れようと右手を伸ばしてくる。
グサッ!!!
伸ばされた右手の甲に、隠し持っていたガラスの破片を突き刺した。
ゴリッ、ゴリッ。
ガラスの破片が骨に当たる感触がガラスから伝わり、赤黒い血液が溢れ出す。
わざと痛がるように傷口を抉り、肉が盛り上がっているのに白雪は表情一つ変えない。
「私に痛い事をしたくなるくらい、心が動かされた?良いのよ?もっと痛い事をしても。私を殴って、傷付けた男達もいたんだから。でも、最終的に私に溺れて行く」
ドンッ!!!
ドサッ。
白雪は力強く俺を押し倒し、ガラスの破片が刺さっている手の甲に自信の唇を近付ける。
ジュルルルッ!!!
勢いよく傷口に吸い付き始め、俺に馬乗りになりながら異様な光景を見せつけられた。
何なんだよ、この女は。
サイコパス過ぎるだろ、この状況。
骨と皮だけの女を退ける事くらい簡単な筈なのに、今の俺は体力も力も落ちてしまっている。
その上、白雪に撃たれていて、貧血のような症状が出
て来ていた。
押し倒された衝撃で傷口が開き、寝ているだけでも傷口から血が流れ出ているのが分かる。
クソッ、こんな時に指一本動かせないって…。
自分の体なのに、自分の意思で動かせない。
体が弱るって、こう言う事なのか。
グググッ!!!
「や、めろって!!!」
白雪が口に血を含んでだまま、俺の口を無理やりこじ開け、その状態のまま唇を塞いできた。
「っ!?」
口に含んでいた血肉を含んだ血液を、俺に飲ませようと流し込んでくる。
泥々した感触、鉄臭い匂いが鼻を通り、吐き気が押し寄せてきた。
「ゔぁっ!!!ゔぇっ!!!」
グググッ!!!
白雪は俺に血を吐き出させないように、両手で俺の顔を挟み、意地でも自分の唇を放させないようにする。
ダンダンダンダンッ!!!
血が喉を通る度に体が拒否反応を起こし、床を足で強く叩き付けた。
口の中から溢れ出た血が垂れ落ち、肌の上からも血が伝って行く。
意識が朦朧として、何も考えられなくなってきた。
唇を塞がれた状態が何分か続き、脳に酸素が行き届かない。
気持ち悪い、体が宙に浮いている感じがする。
何故だ、こんな時にモモと三郎の顔が浮かんできた。
こんな状況で、2人の顔が浮かんで来るのは何故だろう。
俺の名前を呼ぶ2人の声、俺の事を取り合う2人の姿が脳内に再生させる。
あぁ、そうか。
俺は今、あの2人に会いたいのか。
「「ぷはっ…」」
よくやく白雪が唇を離し、唾液と血の混じったピンク色の唾液の糸が伸びる。
「貴方は私のものになるんだから、簡単に死なせてあげない。それに…、貴方達の契りを塗り替えれるんだから」
ドサッ。
白雪はそう言いながら、俺の体の上に倒れ込んでくる。
パリンッ!!!
何かが割れるような音が聞こえたが、何か割れたのか分からなかった。
***
意識を失った四郎のポケットからスマホを取り出し、スマホの電源を入れて起動させる。
スマホ画面を四郎雨の顔に近付けて、フェイスロックを解除した。
一郎達から着信が数100件、兵頭雪哉から200件以上も着信履歴が残っている。
白雪は四郎に通話をしてきた人物達全員を着信拒否設定にしていると、兵頭会の組員である山田からの着信が入った。
ブー、ブー、ブー。
山田から通話がかかってくる事は、白雪には分かっていた。
いや、引き寄せたのだ。
イエロースキャポライトの石言葉には、幸運を引き寄せると言う意味がある。
「こうなれば良い」、「こうなってほしい」と強く願
えば、その時に必要な物が白雪の元に舞い降りてくるのだ。
白雪はほくそ笑みながら、山田からの通話に応じる。
「もしもしっ、四郎さんですか!?良かった、電話に出てくれてっ。俺、実家に帰省しててっ…。あ、俺の実家は長野県の観光地で、軽井沢って言って…っ」
山田の現在地を知った白雪は、泣き真似をしながら話し出す。
「助けてくださいっ」
「へ?女の人?何で、四郎さんのスマホから?」
「今っ、その四郎って男の人がっ…。私の事を庇って、撃たれてまって。私達、椿恭弥に監禁されているんです。貴方がいる軽井沢のとあるペンションに…」
「え、マジですか!?ヤバいじゃないですか!!!どのペンションいるか、分かりますか!?あ、自分に位
置情報を送って下さい。すぐに行きますから!!!」
白雪は四郎の髪を撫でながら、山田にある事を伝える。
「分かりました、すぐに送ります。でも、この事は誰にも言わないで下さい。もし、私達が逃げたと知ったら、椿恭弥に殺されてしまいますっ」
「あ、そうッスよね…。分かりました、、この事は誰にも言わないッス!!!」
「よろしくお願いします。位置情報を送った後、スマホの電源を落としますから…、お願いしますね」
「了解ッス!!!」
山田の返答を聞いた後、白雪はすぐにスマホの電源を落とした。
ただ、白雪はしらなかった。
四郎のスマホの電源が入った事に、いち早く気付いた人物の事を。
***
CASE 七海10月26日 AM12:30 東京市内アジト
パソコン画面に、四郎のスマホに電源が入った事を知らせる通知が届く。
四郎を含めたメンバーもスマホの電源を入れたら、僕のパソコンに通知が届くようになっている。
「四郎のスマホに電源が入った!!!」
「「っ!!!?」」
通知を見て思わず大声を上げてしまい、その声を聞いた天音とノアは僕周りに集まった。
「今のうちに四郎のスマホのGPSにアクセスして、現在地を僕のパソコンに送る」
カタカタカタカタカタッ!!!
大急ぎでGPSの位置情報を自分のパソコンに送り、そのまま三郎の車のカーナビに位置情報を送る。
「長野県北佐久郡軽井沢町倉〇〇-〇〇-○、ペンション司馬猫。四郎の現在地はここだね…。四郎のスマホの中に入ってみたんだけど、誰かと通話してるみたいだね…」
カタカタカタッ。
通話録音アプリ管理と書かれたファイルを開き、四郎の名前が書かれたファイルを開き、最新通話記録をダブルクリックする。
すると、先程の通話内容がパソコン内で再生させるシステムになっている。
再生された通話からは四郎の声ではなく、女の声が流れ、山田に迎えに来るように指示していた事。
自分と通話した事は誰にも話さない事、四郎が撃たれ
て意識を失っている事を僕達は知った。
四郎と一緒に監禁されている女性が誰なのか、ある程度の予想が立っていた。
もしかしたら四郎といる女は、モモちゃんの母親じゃないのか。
いや、きっとそうだ。
椿恭弥はボスの息子を殺した後、モモちゃんの母親を誘拐して監禁されたって情報前から知らされていたじゃないか。
それに、天音とノアが神楽ヨウと食事会で話した会話の内容と照らし合わせると…。
でも、神楽ヨウがJewelry Wordsを使って、モモちゃんの母親の事が好きって錯覚を起こさせ…。
そもそも、そんな事をする必要があったのか?
兵頭拓也への恋心だけを記憶から消せば良かったのではないか?
わざわざ、モモちゃんの母親を好きにならせる必要はなくないか?
「…、天音、ノア。2人にお願いがあるんだけど良いかな」
「何をしてほしいんだ?マスター」
「俺達に出来る事なら」
「しばらく、神楽ヨウの側にいてくれないかな」
僕の言葉を聞いた天音とノアは、凄く驚いた顔をしていた。
つかさず血相を変えたノアが、僕の足元で膝を曲げてから手を握る。
「な、何で…?マスターの側を離れろって事?どど、どうして、そんな事を言うの?」
「泣きそうにならないでよ、ノア。ちゃんとした理由があるよ」
「理由って…」
「憶測でしかないんだけど、神楽ヨウは誰かに騙されてるかもしれない」
予想外の言葉を聞いて、2人は目が点になった。
***
10月26日 AM13:00 長野県内の高速道路
三郎達は長野県内に突入し、高速道路のインターチェンジを出た所だった。
パリンッ!!!
「「っ!!!」」
四郎も聞いた何かが割れた音は、モモと三郎の2人にも聞こえていた。
三郎は音の正体を確かめる為に、視線だけで周囲を確認するが変哲のない道路が広がっているだけ。
ガラス製品が割れている訳でもない。
音の正体が不明なまま、三郎は視線を前に戻す。
普通の人なら音の正体が分からなければ、気にも止めずに普通に運転に集中するだろう。
「「…」」
だがモモと三郎の2人は、何故かどうしようもない不安に駆られていた。
「なんか、変な感じしない?何、この重い感じ」
「心が重い…、四郎が遠くに行っちゃうような気がするの」
「それは俺も同じ気持ちだよ」
ピロリンッ。
「七海様から新たなマップが送信されました。ナビ設定を開始致します」
陽気な通知音が車に設置させれているナビから聞こえ、AIが七海が送って来た住所を目的地に設定する。
七海が作ったAIナビアプリが車のカーナビにダウンロードされており、送った住所をAIが勝手に住所登録してくれるのだ。
「設定が完了致しました、案内を開始致します。30メートル先の信号を…」
「七海が四郎の居場所を掴んだみたいだね、すぐに行こう」
三郎はナビの指示に従いながら運転していると、モモが口を開く。
「さっきの音は何だったの?」
「周りを見てみたけど、何も割れてなかったじゃん」
「違う、外から音がしたじゃないよ。私達の中の何かが割れたんだ」
「はぁ?どう言う意味?モモちゃんの言っている意味が分からないよ」
モモの意味不明な発言を聞き、三郎は頭を悩ませる。
バックミラーで晶達が後ろからついて来てるか確認し、一瞬だけモモに視線を向けてから前に戻す。
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