テラーノベル
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第17話
ミヒャエルさんは……
「関係してるとも、してないとも言いにくいですね」
「……新学期の一日目の夜、ごめんなさい。と泣きながら、連呼して廊下を走って行く少女の姿が見えたんだ」
教皇様は言いにくそうに、黒い髪をかいた。
ごめんなさい……か。そうか。
あいつは、やっぱり……
「父上っ!」
幼い女の子の声が聞こえた。
「ギーゼラ。中に入ってなさい」
ポカンとしてしまった。
一人息子と聞いていたから……
え? 娘は、また別? いや、そんな事無いよな……
「ギーゼラの存在は、表沙汰にしてないんだ。体が弱くて……今回は、見舞いに来たついでに、掃除をしにきたんだ」
「教皇様にも、そんな事情が……」
さっき、苛立っていたのは、どこか消えてしまっていた。
「まぁな。私はこれで御暇するとするよ。話に付き合ってくれてありがとう」
「いえいえ」
俺は、教皇様が部屋に入るのを見送ってから……隠していた護身用のナイフを取り出した。
「いるのはバレバレだ。ウィザードを狙うヤツは、一匹残らず屠ってやる」
俺は、屋上からくる何かの気配にナイフを向けて、言葉を言い放った。
ここは、五階。最上階から一つ下だ。その割には物凄く、気配が近い。
……強い。かなり強い。
「……賢者を三人も、殺るの? 随分と自惚れるようになったわね。ナイト」
声を聞いた瞬間、背筋が凍った。
「ヒル、デっ……」
茶色の肩まで伸ばした少しくせっ毛に、少し焼けた肌。目は、緑色で禍々しいオーラを放ちながら、気配と魔力を上手く消している。
「あら? でも、昔と変わらないんじゃない?」
「うるっせっ。お前は、結局逃げおおせた、卑怯なクズ野郎だろっ」
「あらあら。怖い猫さんなこと。口輪をしないとね」
ヒルデは、ピョンと降りてきた。片手剣を持っている。
俺が昔着けられた、口輪を片手に……
「っ……」
俺は、魔力を込めてナイフを振るった。
斬れたのはかすり傷程度だ。でも、ハンナの力を借りてはいけない。
……失望されるだろ。あんな事言ったのに、助けてなんて……言えない。
「ヒルデ。悪く思うなよ」
俺は、腕に傷をいくつか負うのを気にきずに、喉を刺した。
いくらなんでも、首を刺されているのに、まだまだ動けるバケモノでは無いだろう。
俺は、ヒルデを毒で眠らせて、首の傷を治した。
後で事情聴取をね……やってらないと……
俺は、ナイフをしまって、ヒルデを紐で固く結びつけてから部屋に入った。
「く、黒猫っ?!」
マリアが、目を見開いて目をパチクリさせている。
ん? 何か変な所が……?
「……黒猫。馬鹿じゃない?」
ハンナには、冷たい目でみられた。
……え? 何?
「返り血。ほら、ここにしゃがんで」
ハンナはいつも通りのテンポで、魔法で濡れタオルを作った。
「あ、あぁ」
俺は指定された所にしゃがむと、ゴシゴシと顔を拭かれた。
「ほらほら。七歳に面倒見られちゃってるよ」
「そうだな……」
尻尾がグルグルと巻き切っている。耳もヘタれていて、体も強張っている。
……駄目だ。せめて、ハンナの前だけでもっ……
「黒猫。大丈夫。もう怖くない。ここに、強くなる気でいる私がいるんだから。ふふっ」
ハンナは、俺の頭を撫でた。
……バレバレだったか。流石に、なめたらいけないな。
「強くなる……」
俺の隣で、マリアが呟いた。
確かにな。
……森の中にいる時は、街に出ないように、これ以上守りたい相手を増やさないように。
って、言ってたのに……強かなるのかよ。結局。
「大丈夫。どうにかなるよ」
「分かってる。そのくらい」
俺はハンナの肩をポンポンと優しく叩いて、ハンナの頬を流れる涙をそっと拭った。
✵
「お兄様っ!」
あの日――俺がハンナを庇ってから数日後。
ぼんやりと医務室で横になっていた夜。
ベットの側から、小さな女の子の声――少し歳の離れた妹の声が聞こえた。
「ギーゼラっ……!?」
「……今日は連れてきたんだ」
ギーゼラは、生まれ付き体が弱く、存在は表沙汰にされてない。
まぁ、幼少期を乗り越えたから……何とか大人になれるだろう。
今年で、八歳。ハンナと同い年だ。
……ギーゼラの存在は一部の情報屋は知ってるだろうけど。
「お兄様。早く良くなるように、お守りを作ってきたんです」
「お守り?」
ギーゼラは頷いて、花のしおりをくれた。
「私の自信作ですっ。良ければ使ってください」
「あぁ。ありがとうな」
俺は、ほほ笑みながらそれを受け取った。
水色の花だ。
……何だっけな……
「早く良くなってくださいね」
「善処する」
俺はそう言ってギーゼラの頭を撫でた。
エコ

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コメント
1件
ああ、第17話……重かったけど、すごく好きな回だった。 ヒルデとの再会シーン、背筋が凍ったよ。あの口輪、黒猫のトラウマを思い出させるのに、それでも立ち向かう姿が切なかった……でも、ハンナにバレてるの、泣けた。「大丈夫、もう怖くない」って言われて、素直になれない黒猫の強がり、すごく伝わってきた。 それに教皇様の隠し子・ギーゼラ……妹がいて、しかもハンナと同い年って偶然? 水色の花のしおり、何か意味ありげだよね。優しさと痛みが混ざり合った、心に残る話だった🌙