テラーノベル
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第18話
次の日の朝。
目が覚めると……隣で、ハンナが寝かされていた。
顔は青白く、熱っぽい。かなり重症じゃないと、医務室に来ないが……普通の風邪ではないって事は一目瞭然だろう。
隣に、黒猫がうとうとしている。
俺は、少し起き上がれるくらいまでには回復した。
「……ん? ミャヒャエルか……早いな」
黒猫は、俺が起き上がるや否や大きな伸びをしてから、スリスリとスリついてきた。
傷が癒えていく感覚がある。
でも、疲れない。
……治癒魔法の最大の欠点。
それが、無い。
「大分楽になった。ありがとう」
「このくらい、息をするより簡単だ。それに、俺たちが迷惑をかけたんだ。ま、全然、釣り合ってない気がするが」
……ちょっと待て。釣り合ってないって……俺が勝手に行動したような……
俺が目をパチクリさせているのを他所に、黒猫は言葉を紡いだ。
「ハンナは、あの日から気に病んでるみたいなんだ。まぁ、他の疲れも溜まってここまで酷くなったんだが……何か言葉をかけてやってくれないか?」
「……今の俺に、そんな言葉があるかは分からないが……善処する。というかハンナは……風邪か?」
俺は隣のベットを見た。
汗をかいて、青白い顔色をして、呼吸の荒い赤髪の女の子がいる。
……ギーゼラに似てる気がしてしょうがない。
「まぁな。引き留められなかった俺の責任だ」
「俺も、重荷を……」と言いかけた所で「はぅっ……うっ……」と急に、ハンナが唸り始めた。
黒猫は、急いで人の姿になった。
おでこに手を添えた。こう見ると黒猫は手は小さいし、体も高くはない。
……獣人だからって、ガタイがイイって事はないんだな。
「熱が上がってるな……」
「っ……」
赤い瞳が見えた。
でも、瞳に灯る光が薄く、あまり瞼が開いてない。
「黒猫。おはよう。ここは……」
上野文
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起き上がってキョロキョロすると、俺と目が合った。
ハンナは気まずそうに目をそらして「おはようございます」と言った。
「おはよう」
俺がそう言うと、ハンナは俯いた。
「……この前は、ごめんなさいっ。何もできなかった。守るべき人なのに、守れなかったっ……」
涙が赤い瞳からボロボロと布団へ落ちる。
黒猫は、魔法をかけているが……あまり意味が無い。
「泣いたら、熱が……」
俺は、そう言って手を伸ばしたけど……届くはずもなく、「ごめんなさいっ……ごめんなさいっ……私が巻き込んでっ……こんな事ならないはずだったのにっ……」とずっと泣きじゃくっている。
あ……やってしまったんだ。
一人の小さな女の子の、心をこんなに傷つけたんだ。
前世があっても、所詮は七歳。それに、怖い思いは沢山してきただろう。
なのに、俺はっ……
「っ……すまない。気負わせるつもりはなかったんだ。それに、これは俺の独断。それに、死んでないだろ?」
俺は微笑んだ。
生きてるんだ。それでいいだろ。
「そうですけどっ……私、弱かったっ……もう、大切な人を誰一人傷つけたくなかったっ……」
「……すまないが……無理が、あるんじゃないか? 誰一人として傷つけないなんて……パンクするぞ」
……元々、規格外なハンナに、無理とか言うのは……なんとも言えないけど、本当にパンクする。
というか、してる。
だから熱も、こんなに酷くなった。
「どちらにしろ、私は強くないと……生き延びられません。生きてなかったら、誰一人守れないでしょう?」
泣いてパンパンに腫れた顔で、ハンナは作り笑いを向けた。
数刻後。
ハンナはあれから泣き止んだけど……見事に、熱が上がった。
うん。そこは常識なのかもな。いや、こんなに気負わせ過ぎるのは常識じゃないのか?
……大泣きしたから、だろうな。
というか、あんだけ泣いて熱が上がらなかったら、凄いな。うん。
……でも、笑い事では無い。
丸一日何も食べてないそうだ。黒猫の魔法で何とか栄養は取ってるらしいけど……水分が足りてないと。
……泣いたから余計に。
でも……
「動けるっ!」
「駄目だっ!」
……ベットから降りて、意地でも部屋に戻ろうとする赤髪の女の子と、それを力尽くでも戻そうとする猫の長生き獣人。
それも、熱がある赤髪の女の子の方が優勢という、イレギュラーな事態。
赤髪の女の子――ハンナは、どれだけの子供なのだろうか……分からない。
「うわぁぁっ!!」
そして……猫の長生き獣人――黒猫が負けた。
「まだ、黒猫を振り払えるくらいには元気なんだから」
そう言って、どこかへ颯爽と走り去ってしまった。
コメント
1件
うわああ…冒頭から心臓ぎゅってなったよ😭💦 ハンナがあんなに泣きながら謝ってくるシーン、めっちゃ辛い…「生きてるんだ。それでいいだろ」ってセリフ最高にエモかった…! でもその後もしっかり熱上がっちゃって「動ける!」って言い張るとこ、もうハンナの頑固な強さ尊すぎる…✨ 黒猫振り切って走り去るところ続きが気になりすぎます!!