テラーノベル
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そもそも更新頻度ゴミなのに新作作ってどうすんだって話さ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーキリトリーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Bonjour~♫
……皆お待ちかね、世界のお兄さんだよ?
もうちょっと、「キャーッ!!」とか、「ステキー!!」とかさ…
黄色い歓声があって良いと思うんだけどなぁ!?
…嫌な気分だったんだ。
その日は、一年の中で最もといって良いほど祝福されるべき日なのに。
胸が、身体の中の臓がどうしようもなく重かった。
あいつの姿が見えなくて、どうしようもなく不安になって。
この時期は、すっかり体調が良くなって、俺の誕生日プレゼントを持って…。
勿論、そんな素直に渡してはくれないけどね。
…時計の針が動くにつれて、諦めがついてきた。
もともと現金なやつだ。
記念日には敏感だけど、それ以上に重要な仕事があるんだったらそっちを優先するだろう。
自分でそう結論づけて、他の国体との談笑を楽しんだ。
その少し後、俺と同じの柔らかな金糸が目に写った。
瞳も、声も、揺れているまま。
「…あの、フランスさん…」
あぁ、すぐに分かったさ。
今にも泣き出しそうな顔、昔から変わってない。
いいんだよ、泣いたって。
自分の母に、最愛の兄に何か不幸が降りかかった。
こんなに悔しいことが他にあろうか?
「…このパーティーが終わったら、
…終わったら……、僕の家に来てくれませんか。」
身体中を蝕む不快感の正体が、その影が、ようやく線を成した。
…こんなに終わってほしくないと思った誕生日は初めて。
…最悪な意味でね。
時は進む。
誰が、どれだけ願おうとも。
あっという間にパーティーは終わり。
国体も、各国の政人も、帰路に着くか、あるいはホテルに向かうか。
彼らと軽く挨拶を交わした後、一人俯く影へと歩く。
俺が前に居ることに気づくと、ようやく顔を上げた。
昼見たときよりも隈が目立つ。
やはり、何日もまともに眠っていないようで…。
「…こんな遅くにありがとうございます。
…では、行きましょう。」
オタワ行きの飛行機に乗る。
時差があるから、俺の家と大して時間は変わらない。
時差ボケなんて、とっくのとうに慣れた。
それからすぐにカナダの家に招かれた。
暗い夜の空とは対照的に、カナダの家は暖かい光に包まれている。
それはきっと、カナダの性格をも表しているのだろう。
…そんなカナダの家に、珍しく何も灯りが点いてない部屋があった。
カナダは神妙な面持ちで、俺をそこに案内した。
パチン。と、部屋のライトを点ける。
そこにいたのは、レースの天蓋点きベットに横たわる、 動かぬ人形。
…そう信じたかった。
……そうさ、そこに居たのは紛れもない英国。
…イギリスだった。
閉じられた目蓋には、透けるように繊細な睫。
ほのかに赤が彩る唇からは、彼が生きているという唯一の証拠が吐き出される。
極太の眉毛は健在だけれど、何時ものように感情を表したりはしない。
寝癖なんか何一つついておらず、服のシワも綺麗に伸ばされている。
カナダの甲斐甲斐しい世話の賜物だろう。
「…僕の誕生日から、目を覚ましていないんです。」
「アメリカには、イギリスさんを真似て不参加の連絡をいれました。」
「…フランスさんには、お伝えした方がいいかと思って。
イギリスさんのことになると、感が鋭いですから。」
否定したいところだが、今回ばかりはそうは行かない。
柔らかなブロンドの短髪を手に取るだけで、これ程感極まったことがあるのか。
一生の眠りについた彼の瞳が再び現れるのなら、俺はなんだってやると思う。
『…一回も、目を覚ましてない?』
「…えぇ。
国事は、イギリスさんのお兄さん達が行っています。
このまま本国へ戻すのは容易ではありませんし、家でお世話を…
といっても、部屋の掃除や、体を拭くぐらいですが…。」
『それで十分だよ。
頑張ったな、カナダ。』
「…イギリスさん、僕の誕生日はいつも家にいらっしゃるんです。
本当に辛そうなのに、僕の心配ばかりする…。
……怖くて…。
もしこのまま、イギリスさんが起きなかったらどうしようって…。
…イギリスさんの声が、聞きたいなぁ…」
ごめんな、カナダ。
イギリスをひっぱたいて、起こして、お前のことを抱き締めさせたいけど、そんなことしたって目覚めないことは目に見えて分かる。
どうか泣かないで。
お前が泣いたら、イギリスが悲しんでしまうだろう。
……本当に、迷惑なやつだよ。
早く目覚めて、キッツイ皮肉を聞かせたブリティッシュ・ジョークってやつ、聞かせてよ。
何世紀も一緒にいるのに、まだ、伝えたいことが山ほどあるからさ。
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