平凡な教室だった。いつもと何も変わらない教室。そう、昼休みまでは。想像すらしていなかった2人が、教室に来た。
「花織、香。」
「あれ?沙恵、影斗…?なんで…」
「え?もしかして、気づいてなかったの?」
「俺達、同じ学校だよ。」
「え…」
…気づくべきだった。制服を見た時。学校に入った時。私だけ、気づかなかった…。
それから、私達は毎日会うようになった。あの出来事がなければ、存在すら知り得なかった2人と。
ある日。私は、沙恵に聞いてみた。
「沙恵と影斗は付き合ってるの?」
と。仲が良いから、もしかしてと思ったからだ。沙恵は、
「付き合ってないよ。」
少しだけ、頬を赤くして言った。
「じゃあさ、一緒に住んでてどうなの?」
「学校と同じだよ。よく話してるだけ。」
「な~んだ。好きじゃないんだ〜。」
「すっ!?す、好きじゃないよ!?」
「説得力ないよ〜。」
「今頃好きなんて…言えないよ…」
「そっか…いや、そうだよね。」
そして、もう1つの疑問も口にする。
「沙恵と影斗は、どうして一緒に、住んでるの?」
「それは……」
「ごめん…無理に、とは言ってないよ…。」
「いや。大丈夫。」
深呼吸をし、一拍置き、言う。
「私ね、親から虐待を受けていたんだ…あの公園で泣いた日も。それを、出会ったばかりの影斗が、助けてくれた。そのせいで、親に家を追い出されたの…」
「…影斗のせい?」
沙恵は首を振る
「違うよ…影斗のおかげ。影斗が、私を、私の気持ちを、見つけてくれたから。」
「そっか…そうだったんだ…。」
影斗がいたから、今の彼女がいるんだ…影斗は、ずっと、優しいんだ。
チャイムが鳴る。
「戻ろう。」
「うん。」
教室に戻り、授業を受ける。その後の休み時間。ある噂が聞こえてきた。
「ねぇ、知ってる?4組の話。」
「うん。知ってる。」
「え、私知らない。」
「1つだけ、最近誰も座らない席があって、その席の人は行方不明だって噂。」
「え?なにそれ。」
「そして、その人、T町に住んでて……」
この噂は、本当なのか、気になってしまった。香も聞いていたみたい。
他の2人に話してみた。
「確かに気になるな。」
「でも、私達は何も…」
「いや、できることは、ある。T町に行けば、何か分かるかもしれない。」
「行ってみる?」
「うん。」
沙恵は、少し迷っている。
「うーん…行ってみようかな。」
「それじゃあ、明後日、また駅で待ち合わせで。」
「またね。」
「バイバイ。」
駅に行き、合流する。何があるのか、まだ知らない。
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