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コユキはバチバチと火花を散らして睨み合っている三者の争いには不介入を決めたようで、中央に置かれてオドオドしているヤマネに話し掛けた。
「ねえヤマネちゃん、アンタ等って土とか食べたりするの?」
「は、はい、定期的に…… ミネラル源ですから……」
「なるほどビンゴね…… 家畜は魔物、モンスターになっちゃうけど、野生動物は知性ある魔獣に進化するから協力して貰えれば助かるわね…… それに」
コユキは肩からショットライフルを提げている狩野猟師(かりのりょうじ)と義弟である長田強(ながたつよし)、緒川幸一(おがわこういち)に視線を移してから言った。
「見つけたわよ、適合者! アンタ等には戦いに参加するよりもっと大切な役目が有るのよ! というより、別の戦いね、長くてより困難な戦いだろうけど頼みたいの、どう? 力を貸してくれない?」
三人は詳しい内容を知りもしないと言うのに、コユキの迫力に押される様にコクコクと頷きを返したのであった。
その後、コユキが三人と一匹に語って聞かせた内容は、大雑把な言い方をすると、自分と善悪が消滅した後の世界を託した、そう言って良い話であった。
具体的には、単純に魔法を覚えて欲しい、これである。
動物達は魔獣となった為に人間や家畜よりも魔力の行使が割りと容易に可能である事は、口白、カルラ、フンババ、ヒュドラ、カルキノスの存在が証明済みである。
彼らにとっても身を守ったり、未だ魔獣化できていない野生の仲間を救う事になり、生き様とかやりがい的にも悪い話では無いのでは? そう、説明したコユキにヤマネは力強く頷いたのである。
彼は仲間達を連れて戻って来る、そんな約束をコユキと交わし、ここまで連れて来てくれた狩野を待たずに山の中に姿を消したのであった。
直前に、虎大(こだい)と竜也(たつや)を探して回ったが、自分達の到達可能な本州、四国、九州にはいなかった事を詫びると共に、北海道か奄美、沖縄、小笠原、若しくはどこかの離島だと思うと言い、そちらも鳥たちが捜索中である事も併せて告げたのである。
ヤマネを見送った後、コユキは狩野、長田、緒川の三人にも同様に魔法を学んで欲しい事を伝えた。
訝(いぶか)しがり、何で自分達に? と疑問を口にした三人にコユキは言った。
「だって魔法って武器にもなんのよ、誰彼かまわず教えて回る訳には行かないじゃ無いの? ここまでオケイ?」
緒川が聞き返す。
「いや、分からないよ、それでなんで俺達になるのかがさ! 何でだよ義姉さん?」
コユキはニヤリとした悪そうな笑みを一層深い物にして答えた。
「アンタ達だからよ、一応ちゃんと登録を済ませてる猟師さんである狩野猟師さんには悪いけど、アンタ達って実は凄いのよ! だってアンタチャカ持ってんじゃ無いの?」
「あ、あれはモデルガ――――」
「そんな嘘は良いわよ! んで強君、アンタも言ってたわよね? 馴染みの米兵に頼めば簡単に手に入れられるってさ、あれでしょ? 横須賀か三沢か、はたまたキャンプ富士か岩国か? まあ、一番簡単な沖縄の場末のパブとかかな? でしょ?」
「えっ? そんな事言いました? 聞き間違いでは無いですか? 義姉さん」
「うん、言ったよ、何が何でも誤魔化したいんだったら、さっきアンタがリョウコと丁寧にホルダーに納めたナイフ、模擬刀だとか言っていたわよね? あれで手首とか切る感じでやってみてよ? 出来ないでしょ? そりゃそうだ、あの輝きは模造刀とか模擬刀とかじゃないわね、あれはマジモンのヤッパの質感、その物だったわよ、違う? 違うんだったらスパッとやって、ねえユーやっちゃいなよ? ユーもよっ、モデルガンならアタシに貸してみて、ハジいてあげるアンタの眉間!」
「「…………」」
黙り込む義弟二人にそっと近づいた四桐鯛男(しきりたいお)が目にも止まらぬ早業で、強の腰のホルダーと幸一の胸元のホルスターからナイフとハンドガンを抜き取って改めてからコユキに言った。
「王女殿下、仕上研(とぎ)も確(しっか)り入れた真剣ですね、こっちの銃も紛(まご)う事ない本物ですね、狩野さんのショットガンは確認しないで良いですよね」
「うん、いいわよ」
「ば、馬鹿な…… いつの間に……」
「俺こう見えてレンジャーなんだぞ…… それをいとも簡単に……」