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目を白黒させている二人に構う事なく四桐鯛男(しきりたいお)は念の為だろうか、ハンドガンのスライドとマガジンをリリースさせて三つに分解したのである、因(ちな)みにサバイバルナイフは境内に生えている金木犀(キンモクセイ)の幹に投げ付けていた、中々の手際である。
善悪が言った。
「あ、こら鯛男さん! 幹じゃ木が弱るでござるよ、枝にしなければならないのでござるっ! もう、いつまで経ってもスローインナイフが上手くならないんだから、それに銃の分解は一息以内、まだまだ遅い、遅すぎるのでござるっ! 要練習っ! 分かったぁ? 全く、やれやれでござるよっ!」
そう言いながら金木犀を見もせずに胸元から取り出した一本のスローインナイフを、幹に刺さったサバイバルナイフに向けて投擲(とうてき)し、弾かれた二つのナイフを身動きもせずに両手に掴み取った善悪は強に向けて言うのであった。
「ごめんでござる、全く粗忽者(そこつもの)で困るのでござるよ、許してね」
「は、はい……」
「和尚様面目有りません、今後の一層の努力をお約束します」
「うん、そんなんじゃグリーンベレーとかフランスの外人部隊やスペツナズが相手だったら苦戦しちゃうじゃないかぁー、頑張るのでござるよ」
「はいっ! オールスターズの面々にも伝えますっ! 頑張りまっす!」
「ま、マジか……」
幸一の呟きを無視してコユキは話し続けた。
「じゃ先を続けるわね、こう言った他人を害する事が出来る物騒なものを所持しているって事は、アンタ達がね、自分を律しているって証拠なのよ! ちょっと怒った位じゃ使わない精神力の持ち主ってことじゃない? だから使い方次第で凶器にもなっちゃう魔法を覚えて人々を石化から守って貰いたいって思ったのよぉ! 当然狩野さんの仲間、猟友会的なお友達にもお願いしたいと思ったのよ? どうダメぇ?」
この問い掛けに即座に答えたのは還暦越えにしてまだまだ活気あふれる狩野猟師であった。
「魔法使いね! 面白そうだね、俺の仲間達って困っている農家さんの役に立つならって資格取った奴らが多いからなぁ! 新たなチャレンジか? 人々、いいや全生命体の為にってか? やらせて貰うぜ、コユキさん、教えてくれよ! 魔法って奴をさぁ!」
「やた♪」
このやり取りを見た二人の義弟はお互いに顔を見合わせてから、同時に頷いて答えたのであった。
まずはチャカを隠し持っていた幸一である。
「分かったよ義姉さん、やらせて貰う事にする! 武器とか持ってて分別のある同業者にも話してみるわ! 後俺、空手やってたんだけど有段者の何人かにも話してみるわ、アイツ等だって武器所持者と同じ様な物だからな、頑張るよ」
続いてヤッパを隠していた強。
「俺も自衛隊の仲間達で人柄を信用できるメンバーに話してみるよ、それに俺も趣味で総合格闘技のジムに行ってるからそこでも探してみるよ、うんっ、俺も頑張るわっ!」
ついでに猟師。
「おう、俺も合気道の師範でも有るからなっ! 弟子の中からこれぞっって奴に声を掛けるぜっ!」
善悪が嬉しそうに言う。
「おおっ! 皆ありがとうでござるっ! コユキ殿、これで後顧(こうこ)の憂いは消えたのでござるな、流石でござるよっ! これで思い残す事無く自らの役目に殉じる事が――――」
「まだよっ! 善悪! 遂に過去の自分のドグマを越える時が来た様ね…… はぁー、背に腹は変えられないわね…… 行ってくるわ、私を見放した彼の元にっ!」
善悪はハテナ顔である、端的に聞く。
「誰でござる?」
コユキは立ち上がりながら答えた。
「彼の名は知らない、でもこう言えばアンタにも分かる筈よ、この大茶園に唯一ある派出所、交番勤務のあのポリスマンよっ!」
善悪はビックリだ。
「え、ええっ、でも前に言ってたんじゃんか? 頭を下げて頼んで来ても絶対に協力させない! もう、遅いっ! とかってぇ!」
「ふふふ、んな事言ってる場合じゃないでしょ? あの人達って漏れなくスミスアンドウェッソンのSAKURA M360JかシグザウエルのP230JP持ってんのよ? 恨みに染まって、いつまでも過ぎた事をグダグダ言い続けて俺スゲー今幸せぇーとか言うような意気地なしのクソ雑魚(ザコ)弱ガキじゃあるまいしっ! 使える力は何でも使う! コユキ、不退転の覚悟なのよぉ!」
「うんまあ、そうだね、気持ち悪いもんね、クソガキっぽいのってね、んじゃあお巡りさんの所行くのでござるか? 一人で大丈夫でござる?」
「うん行ってくるわん、コユキ、ワンオペ決行だわっ! だって旧式のナンブだって人を殺すに十分じゃない? それでも撃ち殺していないのよ? 滅多に! 誘うべきじゃない?」
「てらっ!」