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アルフレッドは無人島に上陸し、周囲を見渡した。大自然に圧倒され、|眩暈《めまい》すら起こしていた。そりゃ、ドヴォルザーク帝国と比べたら緑が多すぎるな。俺も最初に流れ着いたときは生き残れるか心配だった。
こうして生活してみれば、なんだか知らんが仲間も増え――まさかの元執事もやって来るとはな。それにしても。
「親父はどうしている、アルフレッド」
「皇帝陛下は、ぼっちゃんを強制追放してしまった事を激しく後悔しておりました。もしかしたら、元魔王の子を帝国から追い出してはいけなかったのでは――と」
「それだけか? あと、ぼっちゃんはヤメロ」
「これは、その昔の話ですが、古のドヴォルザーク帝国と魔王との間に密約があったようなのです」
険しい表情と重苦しい口調でアルフレッドは言った。……密約だと。密約なのだから知らなくて当然だが、帝国と魔王にそんな関係があったのかよ。ていうか、本当に魔王なんていたのかよ。
――いや、覚えはあった。
世界聖書という、ドヴォルザーク帝国に保管されている書物の中に『聖魔大戦』という伝説の物語が記述されていると子供の頃、親父が俺を寝かしつけてくれる時に話してくれた。
まさか、あれが本当だったとは……。
「じゃあ、俺はその魔王の息子ってわけか」
「間違いないでしょう。ですが、陛下はラスティ様が成人するまでは秘密にしておくともおっしゃっておりました」
おいおい、約束が違うじゃないか。親父のヤツ、追放時に言いやがったからな。余計にショックだった。でも今はどうでもいいし、気にしてもいない。俺に魔王的な力もなければ、スキルもない。残念ながら普通の人間とそう違いはなかった。
でも、今はどうだろうか。謎の声・ハヴァマールに力を与えられている。もしもだ。もしも、あのハヴァマールが魔王だとすれば……俺を助け、力を与える理由にも納得がいく。そろそろ聞いてみる頃合いだろうか。
「そうか、よく分かった。だが、俺はもう帝国は戻らない」
「な、なんと……」
「今はこの生活が楽しいんだ。それに、いずれこの島を俺の『国』にしたい。幸い、中々の広さを誇る。人口一万人は余裕だろ。島国としては申し分ないというわけだ」
「ラスティ様……分かりました。このアルフレッド、ラスティ様の執事であり一生の忠誠を誓った身でありますから、貴方様を最後まで補助致します。どうか、この老骨をお役立て下され」
手を胸に当て、丁寧に頭を下げるアルフレッド。この執事として矜持。彼は小さい頃から俺によく仕え、楽しい時も苦しい時も全力でサポートしてくれた。ある意味では、本当の父親に近い存在だ。俺にも彼が必要だ。
俺は決めた。
アルフレッドをこの無人島に迎えると。