良い香りがする。
なんだろ、この香り。ミントかな…爽やかで凄く落ち着く。
「ん…、」
目を開けると1番に目に入ったのは黒髪の隙間から見える綺麗なミントグリーン色の瞳。
「あ、起きたんですね」
「…、誰!?というか此処は、?」
俺はぼんやりとしていた頭を覚醒させ、今自身がどこにいるのかを確認する。周りを見渡すと自室でも学校でもないどこか懐かしさを感じさせる和室に俺は寝かされていた。
「此処は祓い屋の本拠地です。君、七不思議に遭遇してから5日も目を覚まさなかったんですよ。体調は大丈夫ですか?」
「、祓い屋?七不思議…?あれ、そういえば俺白い手に襲われて、っ!痛っ…」
頑張って思い出そうとすると突然、激しい頭痛に襲われる。
耳元でガンガンと鐘を鳴らされている様だ。そんな俺の様子を見てその人は何か考え込む様に呟く。
「ただの風邪、…では無さそうですね。慣れない強い霊力に当てられたから体が拒否反応を起こしているのかも。ちょっと失礼しますね」
そう言うと、その人は俺のおでこに自身の手を当てる。この人の手凄くひんやりしてる。冷水みたいだ。
暫くして、その人は俺のおでこから手を離した。
「これで一旦は大丈夫だと思います。どうですか?まだ頭痛がしますか?」
その人に聞かれ、俺は初めて自身の頭がすっきりしている事に気がつく。というかこれ体調悪くなる前よりも良くなってる気がするんだけど。
「大丈夫です!ありがとうございます、えっと…あの」
「自己紹介をしていませんでしたね。僕は二子一輝と申します」
俺が名前を分からない事に気が付いたのか二子さんは自分から自己紹介してくれた。
「ありがとうございます。二子さん」
「いえいえ、お礼される程でもありませんよ。それより、何か食べれそうですか?寝たきりだったとはいえ流石にこのまま何も食べないのは体に悪いと思うので」
「は」ぐぅ〜
はい、と言おうと口を開くタイミングで自分のお腹が虫の音をたてる。ただでさえ、この部屋に自分と二子さんの2人しか居ないせいかお腹の音が静かな空間の中響き渡ったってしまった。俺はそう分かった瞬間、途端に恥ずかしくなり顔が湯気の様に熱くなる。
「…くす、その様子なら大丈夫そうですね。お粥持ってきますので、少し待ってて下さい」
二子さんは俺の様子を見て小さく笑った後、ご飯を作りに部屋を出て行ってしまった。
俺は1人残された部屋で羞恥心にもがいた。
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「お待たせしました。熱いので気を付けて下さいね」
「ありがとうございます!」
俺は二子さんからお盆を受け取ると匙を手に持つ。
すると、手持った瞬間上手く力が入らず手から匙が抜け落ちてしまった。
「あ、すみません。万全な状態じゃないのに自分で食べさせるのは得策では有りませんでしたね」
二子さんは俺の様子を見てそう言うと、匙でお粥を掬い俺の口元に差し出した。
「え、っと…あの?」
「口開けて下さい。僕が食べさせますので」
そう言うと二子さんは再びスプーンを俺の口元に差し出す。
これ多分俺が何言っても食べさせるつもりだ。
最初、恥ずかしかったものの俺は観念しておずおずと口を開ける。
「ん!?美味しい…」
美味しいお粥に俺は思わず感嘆の声を上げる。出汁がよくきいた柔らかな味が疲れている体に沁み渡る。味に夢中になって食べていると気付けば器は空っぽになっていた。
「気に入って頂けた様で良かったです。また、後ほど馬狼くんにお礼を伝えないとですね」
顔を輝かせる俺を見て二子さんは知らない人の名を呟いた。
「馬狼…?」
「あぁ、まだ君には教えていませんでしたね。祓い屋仲間の1人ですよ。それも含め今から君に話したい事がある」
二子さんは姿勢を整えると俺の顔を見つめ、口を開いた。
「…と言いたい所なのですが」
「?」
「そういえば、まだ君の名前を聞いていませんでしたね。教えて頂いても良いですか?」
話し出すと思えば急に自身の名前を聞かれた事に驚きながらもなんとか自己紹介をする。
「俺は潔世一って言います!」
「潔…潔くんですね。教えて頂きありがとうございます。
潔くん、君が七不思議に襲われた経緯を伺っても良いですか?」
二子さんは確かめる様に俺の名前を何度か呟くと、改めてと言った風に俺の問いかける。
「はい、!えっと、きっかけは友人との話からになるんですが_____」
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「なるほど…友人に誘われて夜の学校に行った所七不思議に襲われたと…、。これは凛くんの言う通り相当まずい事態ですね」
「どういう事ですか?」
七不思議に俺が襲われた事がまずい事態なのか。確かめに行った俺にも非はあると思うんだけど。そもそも七不思議が存在してる事事態俺は驚いてるし。
「あのですね。七不思議というものは根本的な話、人間の噂によって生まれた強力な霊力を持つ霊の事を指すんです。しかも、その七不思議は全て僕の祖母の代に封印されています。でも、潔くんは七不思議に襲われた…これがどういう事か分かりますよね?」
人の噂によって生まれた強力な霊力を持つ霊が七不思議。
しかも、その全ての七不思議は二子さんの祖母の代には全て封印されている。でも、封印されている七不思議に俺は襲われた。
つまり…
「封印が解けてしまっていると言う事ですか?」
「はい」
「でも、それがなんでまずい事態なんですか?確かめに行ってしまった俺に非があると思うのですが…」
俺は怒られるのを覚悟に二子さんに質問をした。
すると、返ってきた答えは予想とは反対に俺を褒め称えるものだった。
「いえ、寧ろ潔くんが確かめに行ってくれたお陰で助かりました」
「え、?」
「七不思議程の霊力となるとただの霊とは違い出現しないと逆に感じ取りにくくなってしまうんですよ。ですから、そのせいで僕達祓い屋の対応が遅れ潔くん以外の方にも襲われる可能性が有ったという事です」
えっと、つまり俺が確認しに行った事については怒ってなくて寧ろ七不思議の封印が解けているのが分かったから対応が早めに出来て助かるってこと?
…正直俺のせいで看病してもらってるし、怒られると思ってたから安心した。
「後、言い忘れていたのですが今日話しそびれてしまった祓い屋の事も含め、明日は祓い屋達と顔合わせをする事になりましたのでよろしくお願いします。それでは、おやすみなさい」
二子さんは淡々とそう告げると部屋から出て行ってしまった。
「…いや、普通に寝る所じゃなくなったんですけど!?もっと早く言って下さいよ!二子さん!!」
うわ、どうしようなんて叫びながら俺が眠れなくなってしまった自身の目を覆った。
コメント
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フォロー失礼しますッ、🙇🏻♀️,, とても楽しくて最高でした、、続きは無理しない程度に頑張ってください、!