テラーノベル
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「白川さん……えっと、ね? 今週末とか、空いてる……かな? テストも終わったし、その。前に言っていた、お出かけを是非……と、思いまして」
「そうなるかなって思って、今週末は……ホント、はい。全部空けてあります」
両者とも赤い顔をしながら、二人揃ってペコペコ。
お弁当の為にいつもの場所に来た訳だが、未だに蓋すら開かずに頭を下げ合っていた。
覚悟はしてたけども、やっぱりこういう話が出るだけで緊張するというもの。
しかも今回は、黒沢君から出された条件が摩訶不思議というか。
お互いに悪い所を見せ合いましょう、みたいな。
そういう“デート”をすると言う話なので、もはや何をどう準備すれば良いのか全く分からない。
とりあえずsevenとお出かけした時に、新しい服とかは用意したけど。
なので、前回と同じ格好にならずには済むのだが。
「ホント、えっと、気負わずって言うか。単純に一緒に出掛ける程度だ~って思って頂けると、ですね……俺としても、嬉しいと言いますか」
「ふぁ、ふぁぃ。ガンバリマス」
二人揃ってぎこちなくなってしまうけども、今回は間違いなく“デート”なのだ。
本来であれば、自分を相手に好きになって貰う為のアピールするタイミングの筈。
この機会を最大限に活用する~みたいな。
そういうイベントだった筈なのだが。
今回求められているのは、自分の悪い所を見せる事。
いや、うん。
言葉通りの意味で、相手に悪印象を与えましょうという訳ではないと言う事は理解している。
だからこそ、余計に混乱しているのも確か。
本当にこれは、どう対処したら良いのでしょうか!?
考えれば考える程脳内がパンクしそうになる状態で、ひたすらにペコペコと頭を下げていると。
「ちなみに……えっと。白川さんは、どこか……行きたい所とか、ある?」
その質問に対して、思考が追い付かずにパッと顔を上げてしまった。
「え、と……そういうのは、“アリ”なんでしょうか? 事前に予定を立てる、みたいな」
「全然良いと思います! あえて、こう……お互いを不快にさせましょうって言ってる訳じゃないし。行きたい所に行って、そこで素を見せられればなぁって。思ったり、している訳でして……そもそも! 俺とか何処行ってもボロを出す気しかしないし!」
「それを言ったら、私だってそうです! というか、今までだって黒沢君に色々と情けない所を見せ続けている訳ですから!」
などと、互いにあぁでもないこうでもないと話しながらも。
とりあえず、今週末には件のデートが決行される事だけは決まったらしい。
お、おぉ……私が望んでいた、“普通の高校生”らしいイベントではあるんだけど。
どうしてだろう、考える事が多過ぎて早くも思考が止まっている気がする。
◆
「お兄ちゃんとしては、やっぱり私が一人でどこかに勝手に行く事は賛成しかねますか?」
帰ってから、いつも通り妹が作ってくれた夕飯を食べて。
風呂なんかも済ませて、ようやく一段落~って所で。
妹がやけに真剣な表情のまま、ソファーに座った俺の隣でそんな事を言って来た。
え、え? いや、何?
「ど、どどどどどこか行くって言うのは。もしかして、アレかな? 一人暮らしがしたいとか、そそそそそういう事……なのかな?」
浴槽で温まって来た筈なのに、ゾッと全身の体温が下がった気がする。
待って、本当に待って?
出て行きます、とか言われちゃう感じ?
だとしたら、泣くけど。
若い子が一人暮らしに憧れるのは分かるし、もっと自由に過ごしたいという心境も理解出来る。
けど、今の状況で。
というか、“親元から離れている”と言える状態でそんな事を言いだしたって事は。
もしかして……俺、邪魔?
崩壊しそうになる涙腺に全力で力を入れながら、どうにか夢月に対して言葉を返してみると。
「そうじゃない、というか私が一人暮らしとか全然想像出来ないってば……。違うの、そういう事じゃなくて。お世話になってばっかりの身で何をって、そう言われちゃうかもしれないけど……」
何だか気まずそうに呟く夢月に対して、ゴクリと盛大に生唾を呑み込んでみると。
妹は、ちょっとだけ顔を赤くしながら視線を逸らし。
「前にも……その。クラスの男の子を呼んだ時、お兄ちゃんは“駄目だー”って雰囲気だったから。やっぱり、私が休日に一人でお出かけしたり。勝手に誰かと遊んでいたり……“デート”したりするのは、凄く心配を掛けちゃうのかなって……」
「ふぉあぁっ!?」
今度は別の意味で、悲鳴が口から洩れた。
いや、さっきは何とか悲鳴を上げずに済んだのだったか。
しかしながら、何と言うか。
妹の言葉をそのまま受けとめれば、つまり?
お休みの日に、一人でお出かけして、更にはその後男の子と遊んで来たい……みたいな?
待て待て待て、ちょっと待ってくれ。
確かにね? 高校生だったら普通だ。
これくらいでアレコレ言ってウザがられる方が、俺としてはダメージがデカい。
お兄ちゃんウザいとか、嫌いとか言われてみろ。
ショックで寝込んで、立ち直るのに何年も掛かるかもしれない。
だからこそ、妹が何かをしたいと言うのなら……兄として、全力で応援してやるつもりではいるのだが。
「アレ、かな? それはデートしてみたいとか、そういう事で良いのかな? 夢月も、お年頃だから。こればかりは仕方ない事というか、そういうのをいちいち俺に許可取るのは違うっていうのも凄く分かると言うか……うん、うんうんうん。お兄ちゃんとしては、夢月が本当に好きになった人が居るのなら、全力で応援したいとは思うんだけどな? えぇとな?」
もはや、口が勝手に動いていた。
待って待って待って。
これまで全然そういう雰囲気とか無かった夢月が、急にそういう話をぶっこんで来た。
相手は誰だ? 適当な奴とか、妹を軽く見て「遊んでやるぜ」みたいな雰囲気のガキだった場合。
全力で俺がぶち殺してやる。
というのも、こっちから見ても妹は“そういう経験”が非常に未成熟。
だからこそ、その純情を良い様に利用して軽い気持ちで弄ぶクソヤロウが居るのなら。
ぶっ殺すぞクソ男子! って、特攻する勢いなのだが。
「好きとか、そういうのは……私には、ちょっとまだよく分からないんだけど。でも、もっといっぱいお話したいっていうか。それに、ね? 良い所を見せるデートじゃなくて、お互いに駄目な所を見せようって。そういう所も見せ合って、もっとお互いに理解しようって。そう……言ってくれたので。凄く緊張するけど、私は……ぇと、行ってみたいなぁ、って」
ポツリポツリと呟く妹は、これまた赤い顔で視線を逸らし。
最後は尻すぼみな感じで言葉を放ってくる訳ですが。
ねぇこの反応! もう好きじゃん! 相手の事好きじゃん!
というか相手も凄いね!?
そんなデートの謳い文句聞いた事無いよ!
むしろ彼氏彼女の“その先”を見てますよねぇ!?
とか何とか、思わず叫びそうになってしまうが。
「俺は、だな。夢月の意思を尊重したい、これは絶対だ。けどな? 若い頃ってのは色々と危ない事も多いし、ふとした好奇心でとんでもない事態になる事だってあるんだ。これは“可能性”として、ちゃんと頭に入れておけ? 何かあった時に、お前が“駄目”と言えないんじゃないかって、俺はすげぇ心配してる」
「ご、ごめんね……情けない妹で。知識としては、一応理解しているつもりというか。本当に不味い状態だったら、ちゃんと断ろうって思ってるんだけど……今回は、その……行ってみたい、かなって……」
あぁぁぁぁぁ!
コレ、コレもう俺が何か言えないヤツ!
泣いて良い!? 泣いて良いですか!?
絶叫だけはどうにか胸の中に収め、何とか威厳を保つ様に心掛けているんだけども。
駄目だ、表情筋が面白い事になっている。
「ちなみに……相手は? どんな人だ? ちゃんと信用出来る人なのか?」
「えと、それは大丈夫っていうか! 前にお兄ちゃんも会った事ある、黒沢君。今度のは、その……ちゃんと“デート”だって言われたから、お兄ちゃんにしっかり許可取った方が良いのかなって……思いまして」
やけに真っ赤な顔で俯いてしまう妹だったが、こっちとしては。
お前かよぉぉぉ!? いや他の知らんヤツよりずっと良いんだけどさぁぁぁ!
と、言いたくなってしまった。
ついでに言うと、ふと思考が冷静さを取り戻し。
「こ、“今度のは”って、どういうことだ?」
「ほ、本当に大丈夫“だった”から! これまで何度か二人でお出かけしたけど、デートって訳じゃないけど。その時は、全然問題にならなかったし。それに凄く楽しかったって、そう思って! だから、ね? えっと……」
それはデートなんですよぉぉ!
やけに焦っている妹に対して、此方は全力でツッコミたくなってしまったが。
落ち着け、落ち着け俺。
既に相手を知っている上に、性格も良い奴だと評価を下した筈だ。
何より、俺達が作っているゲームを全力で楽しんでくれているプレイヤーだと言っても良い。
だからこそ悪い奴ではないと言いたくなってしまうのだが。
お前もう何度も妹連れ出してんのか!?
うがぁぁ! と吠えたくなった所で。
「行って来て、良い……かな?」
「……はぃ」
ちょっとだけ不安そうな妹に、上目遣いでそんな事を言われたら。
どんな兄だって了承する他無いのだろう。
というか俺は、ここで駄目だとは言えない男でしたとさ。
さぁて、しばらくは休日出勤を死んでも断るとするかぁ!
柘榴とAI

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#没入感フィクション
柘榴とAI

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柘榴とAI

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コメント
1件
第120話読み終えたよ!「悪い所を見せ合うデート」ってコンセプト、めちゃくちゃ面白いね。普通のデートとは真逆の発想だけど、むしろお互いの素をさらけ出せるから距離が縮まりそう。夢月ちゃんがお兄ちゃんに許可を取りに行くシーンも、兄妹の関係性がすごく丁寧に描かれててジーンとしたよ。内心で「ぶっ♡♡♡」とか思いながらも「…はぃ」って了承しちゃうお兄ちゃん、愛されキャラすぎるw 相手が黒沢くんだって分かってからのホッとした空気感も伝わってきた。次話も楽しみにしてるね!