テラーノベル
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「契約期間中、俺に隠し事はなし。……そうですよね?」
ある夜、帰宅した真壁くんが、私の「聖域」であるクローゼットの奥に、ずかずかと踏み込んできた。
そこには今週末の撮影のために新調した
いつもより少し露出度の高い、漆黒のレザーを基調としたボンテージ風の衣装が掛かっていた。
「ちょっと、勝手に入らないでって言ったでしょ……っ!」
「これを一人で着て、カメラの前で笑ってるんですか。……想像以上に、欲求不満なんですね」
真壁くんは、その挑発的な衣装を指先でなぞり、私の顔をじっと覗き込んだ。
その瞳は冷静さと熱を同時に孕んだ危険な色をしている。
「……趣味よ!表現の自由でしょ!」
「いいですよ。趣味を否定するつもりはない。……ただ、ひとつ」
彼は衣装をハンガーごと手に取ると、私の目の前に突きつけた。
「今、ここで着てください。俺の前だけで」
「はあ!? 嫌よ、そんな……仕事じゃないのに!」
「仕事じゃないから、着てほしいんです。……夫としての命令、って言えばいいですか?」
「夫」という言葉に、私の心臓が大きく跳ねた。
拒絶しようにも、彼にコスプレ趣味を握られている以上、私に主導権はない。
私は震える手で衣装を受け取り、寝室で着替えを済ませた。
カチリ、とチョーカーの金具を閉める音が、静かな寝室に響く。
鏡の中には、冷徹なマネージャーの影もない、淫靡で攻撃的な格好をした私がいた。
リビングに戻ると、真壁くんはソファに深く腰掛け、私が現れるのを待っていた。
「……っ、着たわよ。満足?」
私がうつむきながら言うと、彼は無言で立ち上がり、私に近づいた。
逃げ場を塞ぐように壁に追い詰められ、彼の熱い吐息が耳元にかかる。
「……やっぱり、似合いますね。怜さんって、結構ドM系のエロいキャラのコスしますけど、こういう格好で支配されたい願望とかあるんですか?」
彼の手が、衣装の隙間から私の肌に直接触れる。
「っ、やめ……」
「やめないですよ。……今日は、俺がカメラマン兼、怜さんの『主人』です」
真壁くんは、私のウィッグの隙間に指を差し込み、強引に顔を上げさせた。
衣装の冷たい質感とは対照的な、彼の指先の熱。
コスプレで誰かに見られるのとは違う
心の奥底にある「誰かに乱されたい」という本能を、彼は正確に突き刺してくる。
「……怜さんのこういう姿を知ってるのは、世界中で俺だけでいいのにな、なんて」
独占欲を剥き出しにした彼の言葉に、私は抗うどころか、もっと深く触れられたいと願ってしまう。
契約という名目で始まったこの同居生活。
でも、この衣装部屋の中で主導権を握っているのは
いつの間にか、私ではなく、この生意気な年下部下の方だった。
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#コスプレ
#ドS