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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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商品装飾展示技能士は、商品のディスプレイや演出に必要な知識と技能に関する検定の一種だ。国家資格で、たしか一級が一番上だったはず。
伊地知部長がその資格を持っていたなんて知らなかった。
五年前に伊地知部長をヘッドハンティングしたのは五十嵐専務だと聞いている。社長や専務と同じ大学の出身で三年先輩なのだとか。
彼女を商品部に配属させたのも専務らしいけれど、我が社には都内に五つの実店舗があるし、自分の力を存分に発揮できる部署に行きたいと、もしかしたら伊地知部長自身が願い出たのかもしれない。
企業の世界観やブランドイメージをあらゆる手段で効果的に表現したいのだと、以前に彼女が熱く語っていたのを思い出した。
「香椎さんも一緒に来てほしい」
「え?!」
「店舗運営部は嫌? あなたにはその才能もあると思うけど」
彼女は美しい指をあご元に当ててフフフと笑みをこぼした。
キラキラとした瞳で見つめられたけれど、私はどう答えたらいいのかわからなくてしばし無言で考え込む。
私も入社以来所属していた商品部を離れ、ふたりで店舗運営部へ異動になる……そういう話だ。
「嫌というか、今とは仕事内容が違うので不安です」
「仕事は簡単に言えば店舗アドバイザーかな。他社との差別化もはかりたいし、店舗をより良くするためには大事な役目よ」
伊地知部長の話を聞いていると入口の扉をノックする音が聞こえ、ふたりでそちらに視線を向けた。
ガチャリと扉が開き、センスの良いブランドのスリーピーススーツを着た背の高い男性がふたり、颯爽と入室する姿が目に飛び込んでくる。
その人物の顔をはっきりと認識した私は驚いて目を丸くするものの、即座に立ち上がり、腰を折って頭を下げた。
「香椎さん、お疲れ様」
キラキラと輝くような笑みをたたえ、五十嵐専務が先に私に声をかけた。
専務は健康的な小麦色の肌をしていて、笑うと爽やかに白い歯が覗く。
よく知らないけれど、趣味でなにかマリンスポーツをしているらしいと噂で聞いた。
専務と直接会話を交わすのはこれが初めてなので、緊張してピンと張った糸のように身体が硬直していく。
「お疲れ様です」
「そんなに緊張しなくていいよ」
「すみません。おふたりがいらっしゃったので驚いてしまって……」
自分の声が若干震えていると気付いたけれど、どうすることもできない。
専務の斜め後ろには社長の姿が見え、ふたりは私たちがいる場所からテーブルを挟んだ対面の椅子に腰をかけた。私と伊地知部長も元の椅子に座り直す。
「お疲れ様。この前はどうも」
視線を下げていた私は社長の言葉にビックリしてパッと顔を上げた。
あの日のことは秘密にしようと約束したわけではなかったが、社長自身がほかの人たちの前で堂々と口にしたのは意外だった。
「この前って? なにがあったの?」
専務がニヤリと笑って問いかけたけれど、社長はなにもあわてることなく平然としている。
「碁会所で会った。祖父同士が親しい囲碁仲間だったんだ」
「ああ……見合いばっかり勧めるあのおじいさんか。香椎さんのおじいさんと友達なの?」
専務の視線が自然とこちらに向いたので、私は愛想笑いをしながら小さくうなずいた。
隣にいる伊地知部長も「へぇ」と驚きの声を上げている。
「ところで、伊地知さんが香椎さんを口説き落とすって息巻いていたけど。結果はどうなった?」
専務がテーブルに肘をつきながら、今にも吹き出しそうな顔をしてこちらを眺めている。
それを目にした伊地知部長は意地悪だと言わんばかりに、専務に冷ややかな視線を送った。
「今、口説いてる最中だったんです。ふたりとも来るのが早い」
伊地知部長はふたりに対して普段は敬語を使っているが、冗談を言われたときにはそれが一瞬消えることもあるので、先輩後輩の間柄に時折戻っているようで微笑ましい。
「まずは香椎さんが持ってる照明の資料を、社長と専務にも見てもらいたいんですけど」
伊地知部長の言葉を聞き、私はあわててパソコン画面を対面にいるふたりに向ける。すると社長が食い入るように覗き込んだ。
「ん?……ダクトレール?」
「はい。こういった白のダクトレールを使えば店内が明るくなるかもと、以前部長と話していました」
ダクトレールとは別名ライティングレールとも言い、照明を取り付けることができるバー状の配線器具のことだ。
「これは君が見つけたの?」
「いろいろ勉強していて、偶然に……」
「ストイックだな。伊地知さんが気に入るわけだ」
コメント
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わあ、第10話読みました!伊地知部長が香椎さんを「口説いてる最中」って言っちゃう場面、ちょっと笑っちゃいました(笑)。先輩後輩の関係でありつつも冗談が飛び交える間柄、素敵ですね。社長が碁会所の話をあっさり口に出したのも意外で、香椎さんの驚いた表情が目に浮かびました。照明のダクトレール提案、ちゃんと勉強してきたんだなあと感じさせる良いシーンでした!