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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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何気なくフッと笑った社長の顔に、心臓を打ち抜かれそうになった。
危ない。至近距離で目にしたわけでもないのに仕事中にうっかり惚けるところだった。
「私、香椎さんにはセンスを感じていて、やる気もあるしすごくいい人材だと思っています」
伊地知部長がこそばゆくなるような褒め言葉を言ってくれるのでさすがに恥ずかしくなってきた。だけど私を高く評価してもらえているのはとてもうれしい。
「単調な明るさの店舗は、照明を変えてみたらどうかって私も思ってたのよ」
「スポットライトもダクトレールに取り付けたらメリハリが出ていいですよね」
社長が私と部長の会話を静かに聞き入っている。なにか思案しているようだ。
「照明の件は稟議書さえ出してくれたらあとは好きにしていいよ。その代わり、これからも伊地知さんの右腕としてよろしく頼む」
部長の顔が一瞬でパッと明るくなったけれど、私は社長や専務の表情を見ながらおろおろするばかりだ。どうやら私の異動もこれで決定になったらしい。
「でも……私がいきなり照明のことを意見してもいいのでしょうか」
「仕事はチームでおこなうものだから良い意見は出し合おう。伊地知さんもいるし、大丈夫」
見守るようなやさしい眼差しを向けられた私は「よろしくお願いします」と頭を下げた。
社長に見つめられると自動的に心臓がドキドキするので、整った顔をなかなか直視できないのが自分でももどかしい。
仕事に関しては新しい部署に移るという不安もあるけれど、逆にワクワクする気持ちも湧いてきた。
今まで一緒にやってきた伊地知部長が新しい部署でも部長のポジション指導してくれるらしいから、きっと心配はいらないはずだ。
翌日、正式に来月付けで異動という辞令が出たので、私は伊地知部長と一緒に店舗運営部へあいさつに行った。
「香椎、来月からよろしくな」
声をかけてきたのは同期の氷室くんだった。
これまでは別々の部署だったため、彼とは特に仲がいいわけではなかったけれど、新入社員研修のときに同じ班だったのを思い出した。
「こちらこそよろしく。頼りにしてるね」
やわらかい笑みをたたえると、氷室くんは照れたような顔でうなずいた。
氷室くんがいてくれてよかった。異動先の部署に顔見知りがいるのといないのでは、安心感が違う。
「そうだ、伊地知部長と香椎が異動してきたら歓迎会をやらなきゃな」
「ありがとう」
「俺は香椎とデートで行くのもウェルカムだけど?」
誰にでも親しげに接するところは変わっていないなと思いながら「なに言ってるの」と受け流すと、氷室くんはアハハと吹き出すように笑った。
商品部での引き継ぎが終わった半月後、私は予定通り店舗運営部へ異動になったのだけれど、毎日家に帰ってからも頭の中は常に仕事のことでいっぱいだった。寝る直前までパソコンを開いて勉強を続けている。
友人から食事に誘われても時間がもったいなくて断っているので、このままだと友人がひとりもいなくなりそうだ。付き合いも大事にしないといけないとわかってはいるのだが。
伊地知部長と相談をして、照明の設備を変更するなら思い切って本店がいいだろうという結論に至った。
機材や工事に関する稟議書はすんなりと通り、業者に工事をしてもらう手はずを取ったところだ。
今日も帰宅後に、パソコンで本店の店内の写真を見ながらこの辺りに人工芝のマットを敷いてもいいな……などとイメージしてノートにメモを残したりしていた。
といっても、これは私が勝手に思案しているだけだから、持ち帰って仕事をしているわけではない。
そんな中、コンコンコンと部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「はい」と短く返事をするとドアが開き、祖父がひょっこりと顔を覗かせる。グラスにお茶を注いで持ってきてくれたようだ。
「なんだ、ずっと仕事をしてるのか。毎日そんなんじゃ頭から煙が出るぞ」
パソコンを睨みつけている私を見て、祖父がまだやっているのかとばかりにキュッと眉をひそめた。
最近の私は家と会社の往復しかしていないし、根を詰めすぎて身体を壊さないか祖父は心配しているのだろう。
「仕事じゃないよ。ただ勉強しているだけ。これが私のプライベート」
両手を広げておどけてみせたものの、祖父はフンッと鼻を鳴らしてあきれ、木製テーブルの上にお茶の入ったグラスを置いた。
「今度朝陽くんに会ったら、うちの孫を働かせすぎだって文句を言ってやろうか」
「おじいちゃん!」
「冗談だ」
それだけはやめてほしいと、一瞬あわてたけれど、祖父はそんな私をよそにクスクスと笑っていた。
今のは全然冗談に聞こえない。この先社長と顔を合わせることがあったら本当に言い出しそうで怖い。
コメント
1件
あー、もう社長の立ち振る舞いが渋すぎてやばいわ…。「好きにしていいよ」のひと言だけでグッとくるの、なんなんだろうな。それに祖父とのやり取りがほっこりするし、氷室くんの軽いノリも異動先の安心感になってて良いバランスだった。仕事に没頭しすぎて友達減らしそうなとこ、ちょっと人事じゃないけど心配にもなったよ。次が気になる🔥