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その昔、千年前を生きていたアグネスという少女は、王都から少し離れている、山で囲まれた場所で育った。
豊かな暮らしではなかったが、優しい両親に愛され、大切に育てられた。
そんなアグネスには、類稀なる魔法の才があった。
アグネスの一族は代々魔法使いとして働き生活してきたものの、飛び抜けて優秀なわけではなかった。
そんな中アグネスという天才が生まれたので、両親は大変喜んだ。
アグネスが十五歳になった年のある日。
アグネスは山菜を採りに山に入り、 大量の魔物と遭遇した。
アグネスは億劫だったが山菜のために魔物を全て倒した。
アグネスにとっては容易いことだった。
それからしばらく経ったある日、突然王宮からの使いが来た。
曰く、国王がアグネスをお呼びなのだという。
アグネスは何のことかさっぱりだったが、アグネスが何気なく魔物たちを倒したことを称えられたらしい。
聞けばあの魔物たちはもうすぐ王都を襲いかかるところで、国王は王家専属騎士団を向かわせていたという。
魔物たちは魔王から直に派遣され、かなり手強い者たちだったようで、王家専属騎士団でも太刀打ちできるかどうか、ということだったらしい。
そうしてアグネスはあれよあれよという間に国仕魔法使いに任命されてしまったのだ。
アグネスは山に囲まれた家で静かに暮らしたかったが、両親にこんな機会は中々ないからと説得されたこともあり、なってしまったものは仕方ないので国仕魔法使いとして働くことにした。
それからのアグネスは仕事をしながら魔法の研究や開発に取り組んだ。
結果多くの人々を救い、他の国仕魔法使いの誰よりも優秀な成績を取った。
国仕魔法使いに就任して三年経った頃、アグネスは魔王討伐の勅命を受けた。
アグネスはそんな重要な任務に行きたくなかった。
魔王がどれだけ強いのかもわからぬまま敵地へ突っ込み、倒せなければ非難を浴びるのは目に見えてるからだ。
しかし否と言う間もなく国王は他国からも騎士や魔法使いを集め、アグネスはパーティを組まされた。
パーティは、戦闘を得意とする国仕魔法使いアグネス、同じくヴィルアーゼ出身の勇者フェリクス、隣国シェラード出身の聖騎士イザーク・ウェスト、東洋の国出身の 治癒担当の魔法使い星蘭の四人で組まれた。
魔王城へ向かう道中、歩きながらフェリクスが口を開いた。
「魔王を倒しに行くのは怖いけど、陛下直々にこんな命をいただくなんて、光栄なことだよね」
「俺は勘弁してほしいがな」
イザークが言葉を返した。
「そうだな、私ももうこんな押しつけはこりごりだ。早く終わってほしい」
アグネスはイザークに賛同した。
「そうかな?わたしはなんだか信用されてるみたいで嬉しいけどな……」
星蘭は東洋訛りの言葉でフェリクスに賛同した。
フェリクスは星蘭の言葉に嬉しそうに顔を輝かせた。
「星蘭、やはり君もそう思うかい」
星蘭はフェリクスの反応に赤くなり、アグネスの後ろに隠れてしまった。
アグネスは星蘭の黒い頭をぽんぽんと撫でた。
「フェリクス、星蘭を怖がらせるな」
アグネスが言うと、フェリクスは驚いた様子を見せ、悲しそうに言った。
「ごめん……、そんなつもりじゃなかったんだけど……」
「う、ううん。わたしの方がごめんなさい。その……、照れただけで、フェリクスを怖がったわけではないの」
星蘭がアグネスの後ろで顔を赤くさせたままそう言うと、再びフェリクスの顔に笑みが咲いた。
「良かった……!」
「お前ら緊張感がないな。今から魔王を倒しに行くというのに」
イザークはそう言いながら苦笑いをこぼした。
フェリクスが困ったように笑った。
「そうだね。変に緊張感を持っていたら、心臓が爆発しそうでさ……」
他三人は驚いて顔を見合わせた。
そして力強く笑んだ。
「大丈夫だ、フェリクス。君はひとりじゃない。皆で力を合わせれば困難も乗り越えられるだろう」
アグネスの言葉にイザークと星蘭はうんうんと頷いた。
フェリクスは目を見開き、嬉しそうに顔をほころばせた。
「ありがとう、みんな」
フェリクスの元気が出てきたことに、三人は安心したのだった。
それから四人は力を合わせ、順調に魔物を倒していった。
時に諍いもあったが、困難を全員で乗り越えた。
出発してから数ヶ月、いよいよ四人は魔王城の目と鼻の先というところまで辿り着いた。
その日の夜もすっかり更けた頃、アグネスはなぜか眠れず焚き火をひとりで見ていた。
と、フェリクスがテントから出てきた。
物音にアグネスは振り返った。
「フェリクス?どうかしたのか」
フェリクスはアグネスに歩み寄り、彼女の隣に座りながら苦笑した。
「なぜか眠れなくてさ。……君も?」
アグネスも苦笑いをこぼした。
「ああ」
アグネスがそう返事したきり、あたりは静寂に包まれた。
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