風で揺れるカーテンの向こう、涼ちゃんは手すりの近くに立ったまま、強い風に煽られて少しふらついていた。
その光景に元貴は息をのみ、
声を荒げないようにだけ気をつけて、一歩、一歩涼ちゃんへ近づいた。
「……涼ちゃん、こっち向いて。」
静かに言ったその声は震えていた。
でも、怒っているのではなく、ただ必死だった。
涼ちゃんはゆっくり振り向く。
疲れた笑顔を無理に作ろうとしているみたいで、
その表情を見た瞬間、元貴の胸がぎゅっと痛くなった。
元貴は両手を軽く上げ、
獣を驚かせないようにするみたいに静かに進んでいった。
「何があったのか分からない…聞かないから。。。 ただ……こっち戻ってきてほしいだけ。」
「……涼ちゃん。帰ろ。」
若井がついに口を開いた
涼ちゃんは顔を上げて、ふっと優しく微笑んだ。
その笑顔があまりに弱くて、
まるで壊れそうなガラスみたいだった。
「……ごめんね、2人とも。」
声は小さく震えていた。
「もう……これ以上は、ほんとは耐えられないの。」
そういい終わった後ベランダから飛び降りた。
「あ゛あ゛!!涼ちゃん゛!」
元貴は足が上手く動けないがベランダから下を見下ろす。
若井は部屋から飛び出て階段を駆け下った。いつもの17階の階段はは今日はとても長く感じた。
(お願いだから…涼ちゃん。生きてて。本当に…)
1階に降りてみた光景は沢山の人に囲まれて横たわっていた藤澤涼架だった。
芝生には鮮やかな血
若井は人をかき分け涼ちゃんの隣に座る。
「ねえ……ねえ。ねえ!!ってば」何度も体を揺する。その身体は血色がなく冷たかった。
「涼ちゃん起きてよ……..おき、、て」
人々は救急車を呼ぶ手伝をしていた
でも今の若井にはそんな事すら耳に入らない。その時元貴がきた…それは最後の辛抱だと。
「ねえ、元貴。俺たちどの道を間違えたんだろう。」振り向いた若井の目は真っ赤で手には服から染み込んだ血液。
救急車に運ばれた涼ちゃんはその当日に死亡確認がされた。
その日の若井は元貴が今まで見た事のないほど悲しんでいた。
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涼ちゃん…