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引き続き、シャーリィ=アーキハクトがお送りします。話は済んだと思っていましたが、まだ納得していない様子。確かに私は怪我をしましたが、それはベルのせいではありません。
「納得出来ませんか?ベル」
「頭では理解してるんだがなぁ…」
「今回貴方の急用を認めて護衛から外したのは私です。それ故に発生したあらゆる事象について責任を負うのは同じく私です。今回の件で私が誰かを責めることはありませんし、そのつもりもない」
「ああ」
「それでも気になるのならば、悔やむよりも今後の働きに期待したいところです。どうですか?ベル」
「……そうだな、凹んでても意味はないか。二度とこんなことが起きねぇようにする。期待してくれ、お嬢」
まだ凝りはあるような気がしますが、これ以上は本人の問題ですね。
「期待しています、ベル。シスター、貴女も納得しましたか?」
「シャーリィがそう決めたのなら、口を挟むつもりはありません。ですが、少しは自分を労りなさい」
「はい」
よし、なら次はアスカさんの歓迎とお部屋の用意を……?んー…頭がぼうっとしますね。寝不足かな?
「言った側から貴女は…ルイス、シャーリィを部屋に連れていって休ませなさい」
「私は大丈夫ですよ?」
「いやお前、熱があるじゃねぇか!」
私の額を触りながらルイが叫びます。あー、ひんやりして気持ちいいー…。
「当たり前です、撃たれたんですよ。手当てをして直ぐに動いては身体に負担が掛かるでしょう。全く、労れと言ったばっかりなのに」
あー……頭がホワホワするー…。
「お嬢、休んでな。後始末はしとく。ルイ、無茶はさせんなよ?」
「分かってるよ!ほらいくぞ、シャーリィ!」
「ふぁい」
私はぼんやりしたままルイに運ばれて部屋に叩き込まれるのでした。ルイが付きっきりで側に居てくれたのは嬉しかったです。
カテリナです。シャーリィを部屋に叩き込んだ後、取り敢えずアスカの身体を清めて休ませることにしました。シャーリィが受け入れた以上『暁』の身内ですからね。それらを済ませて、改めてベルモンドやセレスティンと話し合います。
「エルダス・ファミリーの縄張りは、確か十六番街でしたね?ベルモンド」
「そうだ。縄張りの範囲は変わってないはずだからな」
「十六番街…港湾エリアに最も近い場所ですな」
「港湾エリアへの進出を目論み、新参の私たちを狙った。そんなところですか」
「多分な。エルダス・ファミリーはそれなりの規模があるが、『海狼の牙』を敵に回すような真似は出来ねぇはずだ。エルダスだってそこまで馬鹿じゃねぇ」
「それで、与し易いと見てうちを狙った。ベルモンドが『暁』に所属していることを調べて、それを利用した。何とも悪どいやり方です」
「最近平和で弛んでた。こんな誘いに乗らなきゃな」
「何故接触を続けたのですか。お嬢様に内密にされたのは、後ろめたさですかな?」
「旦那の言う通りさ。在り来りだが、俺の過去をお嬢にバラすと言われた。情けねぇよ、それに従ってもロクな事にならねぇのは知ってたんだが…」
「誰だって触られたくない古傷はいくらかあるものです。シャーリィに幻滅されたくなかったのでしょう?」
「ははっ、馬鹿みたいだけどな」
「お嬢様は全てを受け入れてくださいます。それほどの大器の持ち主です。それを信じられなかったのが貴方の落ち度ですな、ベルモンド殿」
「手厳しいなぁ、旦那。けど、その通りさ。そしてそこを狙われた」
「でしょうね。ですが、奴等の狙いとやり口は分かりました。次はどんな手を使ってくるか」
「いきなり武力行使はしねぇだろうな。お嬢に怪我させて警告してきたんだ。それを使って交渉してくるだろう。いや、恫喝かな?」
「お嬢様を狙撃し、あまつさえ恫喝とは。不届き者めが」
セレスティンの静かな怒りを感じます。私も頭に血が上るのを自覚して、深呼吸をします。落ち着け、シャーリィは生きてる。先手を打たれたがまだ挽回できる。
「その交渉次第で武力衝突ですか。ベルモンド、奴等の数は?」
「そうだな、下っ端を合わせると千人弱か。装備はうちみたいに近代化してるとは思わねぇが」
それはうちが、シャーリィが異常なだけです。
「ふむ、十倍以上ですか。しかも正面から来るはずも無し」
「正々堂々何て言葉は無いからな、いろんな手段を使うが…今回手を出したのはクリューゲだけだ。エルダスの指示じゃないだろう」
「何故断言できるのですか?」
「エルダスは単純な奴なんだよ、力で押し潰す。よくも悪くも在り来りな悪党だ。頭を使うようなことは苦手だからな。クリューゲが絵を描いた。それで間違いないだろう」
「トップが単純馬鹿ですか。与し易いのか悪いのか」
「だが、そんな単純思考をやり遂げるだけの力はある。エルダス自身も強いしな」
「ベルモンド殿の予測が当たり、幹部の独断であるならば…手はありますな」
「ああ、そこに活路があるだろう。まだ『暁』はエルダス・ファミリーとやれるだけの力はない。出来れば衝突は避けたいな」
「近代化した部隊を持っても、暗殺などの策謀は防ぐのが難しい。まして相手とは規模が違う。相手にはたくさんの選択肢がありますから」
「ああ…けど、この件をうまく使えばエルダス・ファミリーを弱体化出来るかもしれねぇ。幹部で頭が切れるのはクリューゲだけだ。上手く行けば、こいつを潰せる。クリューゲが居ないだけでエルダス・ファミリーは弱体化するだろうな」
「脳筋が生き残れるほどここは甘くありませんからね」
「では、内情を探る必要がありますな。ベルモンド殿の予測の裏付けも必要です」
「旦那の言う通りだな。ラメルの旦那を頼るか」
「いえ、エルダス・ファミリーほどの組織となればラメルでも手に余ります。もっと腕の良い情報屋に頼るしかありません」
「心当たりがあるのか?」
「気は進みませんが、あります。少しだけ時間を頂きますよ」
激しく不満で厄介ですが、これもシャーリィを傷付けた落とし前を着けるためです。気は進みませんが。
新たなる敵と厄介な案件を前に、カテリナはため息を吐くのだった。