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夏の熱い風が首筋を攫う。
あつ、と、思わず声に出してしまった。
それさえも陽炎が溶かしてしまいそう。
右手から滴る液体が、アスファルトに落ちて染みを作った。
無駄に空だけが美しく、飛行用の車が頭上を通り過ぎていく。
随分と度胸があるなと思った。
3155年8月15日、14時58分32秒。
頸動脈からの鮮血が右手を汚す。
か細い息をしながら恨みの瞳を向ける相手を、そこら辺に投げ捨てる。
もうあの怪我じゃ、そう簡単には襲って来れないだろう。
ショットガンの音が響き渡り、どこからともなく瓦礫や破片が飛んでくる。
ばたばたと人の倒れていく音を聴きながら、次の戦地へと足を運んだ。
生きているか死んでいるかの判別ができなくなった世界。
そんな世の中で、私は、、、
<薄日 華>
は。
戦地の王者として君臨する。
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地球温暖化が進み、北極や南極の氷はもうほぼ無いらしい。
海面上昇によって陸地は沈み、海岸に近い地域は伝説の大陸と名を残すようになった。
異常気象で干ばつは進み、赤道に近い地域はもう人が住むことができない。
もう今では、これらは当たり前のこと。
当たり前になってしまった。
───────僅か10年の間に。
貴重になっていく水と、多くなっていくが飲めない海水を前に、世界が逃れることができなくなった頃。
国と国が、戦を始めた。
その戦いは世界各国が便乗し、更にはここ、日本まで。
自我が無くなったかのように、人が人を殺しあった。
電波も届かなくなり、情報は途絶え、悪意を持った人々によって虚偽の連絡が溢れかえった。
1,026
白石
1
日本の中でも争いが発生し、海外へ逃げた先で殺された人も多い。
人々が求めているのは領地ではない。
水だ。
当たり前に空から降ってくる、水。
その為だけに、死に物狂いで世界が戦っているのだ。
もう戦が始まってから随分経つが、未だに水は見つかっていないらしい。
この情報が当たり前になったが、政府が出したと謳っているだけで、もしかしたら嘘かもしれない。
なんならもう、政府は機能していないかもしれない。
信じられるものが無かった。
指揮を執る人が存在しているのか分からない中、ただただ人だけが死んでいく。
そんな世の中が、私は大嫌いだった。
どうせなら直ぐに、こんな戦を終わらせたかった。
水を入手する方法が見つかったという朗報を、何度夢に見た事か。
でも、もう5年はこんな調子だ。
止める人がいないから。
生きているものは戦い、倒れたものは誰にも弔って貰えず腐っていく。
地獄のような世界から、逃げてしまいたかった。
でもなぜか、私はいくら刺されようが撃たれようが、死ぬことはなかった。
こんな時ばかり運がいいのだ。
嫌だ嫌だと戦い続ける中、たった一つの<思いつき>が私を救った。
<終わらないなら、私が終わらせればいい>
と。
だから、私は。
今日も人を殺して息を繋ぐ。
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