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一花は学校へと向かった。
そして異変にすぐに気付いた。
教会から火の手が上がっていた。
「まさか――!」
私は教会の方へと向かった。
教会の前にいたのは、仁美ではなく七緒だった。
だがその七緒の姿ははっきり言って異様だった。
片手にはバールを手にしていて、火の明かりで照らされる彼女は真っ赤な血にまみれていた。
夢で見た通りの姿だ。
そして燃える教会を、恍惚とした目で見つめていたのだ。
「七緒ちゃん!」
私が声をかけると、七緒はこちらを見た。
そして突然、欲しかったおもちゃを前にした子供のようにはしゃぎ始めたのだ。
血塗れの身体で抱き着いてくる。
「一花ちゃん! やった! やったよ! 私、蓼原のこと殺しちゃった! これで何もかもおしまい! ハッピーエンド! 私は一花とやり直すの! あっはー☆」
狂乱して喜ぶ七緒。
一花は困惑したが、
要するに彼女は、仁美を殺したのだ。
「嘘、でしょ?」
「あははははははは♪ ゲホゲホっ! はぁ、はぁ、はぁ♪」
しばらくそうしていた七緒は、やがて落ち着きを取り戻した。
だがその目は恍惚に満たされ、怪しい輝きを一花に向けていた。
「私、一花から頑張ったご褒美が欲しい。ね? キスしていいよね?」
「え?」
そう言って七緒は、うっとりとした目で顔を近づけてきた。
「それはダーメ☆」
「――――ッ!」
ガラガラガラガラガラガラガラ…♪
「あっ…………!」
彼女は突然、左目をおさえた。彼女の眼から血が流れ始めた。
「い、痛い! 痛い痛い痛い痛い!」
「七緒ちゃん!」
「なんで……! なにが……!」
一花が見た七緒の左目には、
サソリを模したハート型のアザが浮かんでいた。
まるで時間が巻き戻されたように教会の中は静寂に包まれていた。
だが次の瞬間には異変が七緒の肉体を襲う。
全身がすさまじい痛みに襲われた。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
全身から血で出て、あざだらけ。
それは七緒が仁美を暴行した傷とまったく一緒だった。
そして仁美は平然とした顔で七緒を見下ろしていた。
気づけは周囲は炎で包まれている。
「ああ、ダメダメ。ダメぇ」
仁美はつまらないものを見るような目で七緒を見る。
「苦痛に満ちた声を聴くのは好きだけど……。やっぱり七緒ちゃんの声じゃ、全然私の心は満たされないなぁ。ねぇ知ってる? 一花ちゃんの苦しんでる声ってね、凄く素敵なんだよ? やっぱり一花ちゃんの苦しんでる声の方が、ずっと素敵」
「な……んで…………!」
「なんでって……。七緒ちゃんが自分で言ってたじゃん。私、妖魔だもんね。じゃあね、バイバイ♪」
そう言って仁美は教会を立ち去る。
「……あ、…………ああぁ! ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
一花は何が起きたのか、理解が追い付いていなかった。
突然目の前にいたはずの七緒ちゃんが消えた。
そう思ったら燃えさかる教会から仁美が平然とした様子で出てきたのだ。
「ひ、とみ?」
「一花ちゃん、ごめんね」
「え?」
「せっかく一花ちゃんが私のこと誘ってくれたのに。本当は楽しいお泊り会になるはずだったのに。でも、明日からはずっと一緒だから♪」
そう言って仁美は私を抱きしめる。
「一花ちゃん、大好き♪」
まだ理解は追いついていないが――、
私の努力は何もかも無駄だったということだけはわかった。
(私のせいだ……)
(私のせいで、同級生の子たちが何人も――)
それが分かったとたん、私は泣くのをとめられなくなった。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「一花ちゃん?」
「私、私のせいで……! 私のせいで何人も死んじゃった! いやだ! いやだぁ! こんなのいやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「一花ちゃん。一花ちゃんは何も悪くないよ。だから泣かないで、よしよし♪ 大丈夫。一花ちゃんの事は――。私がうーんと甘やしてあげるから♪」