「11月下旬だっていうのに…暑…。」
公立早坂高校2年生の沢渡了(さわたり りょう)は、着ていたブレザーを脱ぐと腕まくりをした。
灰色のYシャツに黒のネクタイ、そして白色のブレザーとズボンが早坂高校の制服だ。
白色のブレザーを着ていた方が日光は集まりにくいと思うが、沢渡は耐えられずに脱いだ。
薄い茶色で耳にかからない程度の髪の毛、釣り目だが大きい目と178cmという身長で近寄りがたい雰囲気を持つ沢渡。
しかし、中学生から1回も授業を休んだことはなく皆勤賞を目標にする風紀委員長だ。
「望さんを壁にしよう。」
沢渡が1人の男子生徒の背中に隠れる。
その男子生徒は沢渡より身長が高く沢渡はすっぽり隠れられた。
「あ!おいやめろよー。僕も沢渡で隠れるから。」
神代望(かみしろ のぞむ)はそう言うと沢渡の後ろを取ろうとする。
沢渡も負けじと神代の背中に張り付く。
黒色で少し長めの髪の毛と女子のように白い肌の神代。
神代は、180cmの高身長でモデルのように細い。
目は切れ目だが全体的に柔らかい印象がある。
学級委員であり、成績優秀で先生からも信頼されている。
沢渡はブレザーを脱いでいるが神代は脱いでいない。
神代は極度の寒がりで暑さをあまり感じないのだ。
それが原因なのか手がとても冷たい。
沢渡と神代がお互いの背中目掛けてくるくる回っている。
こうみると普通の男子高校生だ。
「まじで疲れるから!はい終わりー。」
神代が沢渡の正面から肩を抑える。
沢渡は笑いながら動きを止める。
その時、集合の合図を引率の先生が出した。
神代と沢渡は集合場所まで戻った。
早坂高校の修学旅行は毎年2泊3日で沖縄だ。
一日目はホテルに行き、荷物整理をしてから夕食の時間まで自由行動だ。
ホテルの中にはプールもあり、先生に許可を取れば入ることが出来る。
他にも娯楽施設があるがプール以外は禁止されている。
外へも無断で出ることは出来ず、プール以外に遊べるところはない。
それにも関わらず、夕食までの時間は4時間もある。
「結構さ自由行動の時間あるよな。何する?」
沢渡が声をかける。
ホテルの部屋は三人部屋で沢渡、神代そして大谷勝生(おおたに かつき)の三人だった。
「とりあえずプール行こうぜ!プール!俺のバタフライ見せてやるよ!」
黒髪で短髪、ぱっちり二重、身長は170cmの大谷。
沢渡と神代より身長は低い大谷だが、腕力が尋常じゃない。
バレー部に所属し、学級委員長である。
明るくおちゃらけキャラの大谷だか、神代と並ぶほどの成績優秀者である。
「あ、俺浮き輪持ってきた。向こうで膨らませようぜ。」
沢渡がキャリーケースを開く。
キャリーケースの中から水色のドーナッツ型の浮き輪が出てきた。
「え、沢渡泳げるよね?なんで持ってきたの。」
「え、望さん用だよ?」
沢渡が空気の入っていない浮き輪を広げる。
神代は自分用だと聞き、困惑する。
「いや、なんで?僕泳げるけど、泳げますけど。」
「まあ、のぞむんは優雅に浮き輪で浮いてそうなイメージあるよな。」
「どういうイメージだよ。」
大谷の言葉に神代はより困惑したようだった。
そんな話をしながら三人はプールのある階を目指した。
「あ゛ー、疲れた。」
プールでひとしきり遊び、夕食を食べ終わり部屋に戻った沢渡と神代。
大谷はバレー部の仲間の部屋へ遊びに行っている。
沢渡はお風呂から上がりベッドにダイブをする。
「それな、一日目だけど本当に疲れた。」
神代もベッドの上に倒れている。
「あ、そういえば。」
沢渡は何かを思い出したかのようにベッドから起き上がり、神代の近くまで来た。
そして仰向けで寝ている神代の腹の上に馬乗りになった。
「ぐへぇっ。なになに!?」
沢渡の思いがけない行動に戸惑う神代。
「手ぇ出せ、手ぇ。」
「手?…あ。」
沢渡の言葉を聞き、神代は手を背中に隠した。
「うわー!ごめんごめん!切るの忘れてたんだよー!」
「言い訳するな!何回も爪を切れって言ってるだろ!」
抵抗する神代に対抗する沢渡。
沢渡は風紀委員長である。
それゆえ常に生徒の身だしなみのチェックする癖がついてしまったのだ。
神代は爪が長いと何回も注意を受けていた。
「ほら見ろ!こんなに長いんだぞ!」
神代の両手をようやく掴んだ沢渡はその手を神代の目の前にかざした。
「わかったわかった…切ります。」
神代は諦めた表情をしている。
「………。」
「…なに?他にも何か違反してる?」
沢渡は神代の右手だけを掴み、まじまじと見ている。
そして、いろんな角度から神代の右手を見はじめた。
「望さんってさ、すげー手綺麗だよね。スベスベで白くて。」
「…………。」
沢渡は神代の右手をさすったり握ったりといじっている。
また沢渡は頬に右手を当てる。
「冷てー、風呂上がったばっかりだからちょうどいいわ。」
「…………。」
「ん、何?どした?変な顔して。」
「…いや?別になんでもねーよ。いい加減どけよ。」
神代はそういうと沢渡から右手を離した。
そして沢渡の脇腹を両手で抑えてこちょこちょをした。
「うはっ!やめろ馬鹿!」
沢渡は笑いながら、勢いよくベッドから降りた。
そのタイミングで部屋のチャイムが鳴り、大谷が帰ってきた。
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最近見た夢の話をもとに書いてます。
続きます。
細かく書いていたら長くなってしまいました。
話に登場する高校は適当に名前をつけました。
登場人物達は夢を参考にしていますが、名前は適当です。
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