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ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ……♪
気付くと私は薬品の匂いが漂う場所で眠っていた。
「……ん、ここは」
「一花ちゃん、起きちゃった?」
見ると、仁美があのおもちゃのガラガラを手にして振っていた。
「仁美」
「仁美じゃなくて、ママでちゅよー♪」
「そ、それ、やめてよ、恥ずかしい……」
「もーう、ママって呼んでよ一花ちゃん♪ ほら、マーマ♪」
頭が熱くて判断力が落ちている。
どうしてだかわからないが、私は抵抗できない。
「ま、マーマ」
「あは♪ よく言えましたー♪ えらいえらい♪ 一花ちゃんいい子いい子でちゅよー♪」
そう言って、頭をなでなでされる。
でも私は反対にめまいがして、なぜか涙が出てきた。
「やだ、もうヤだ! もうやめてよ!」
「あはは♪ 一花ちゃんの声、とってもかわいい♪ もっと、もっと聞かせてよ。私の大好きな一花ちゃんの声。楽しそうな声、嬉しそうな声、私に甘える声、私に怒る声、。全部全部全部私が独占するの♪ 一花ちゃんの声は何もかも全部私のもの。あは、あはははは♪ あはははははははははははは♪」
「お母さん!まだ帰ってこれないの?」
「……ええ、ごめんなさい。お父さんの仕事がね、ちょっと今大変なのよ。私もお父さんの秘書をしてるから、どうしてもね」
「お願いだから私を一人にしないでよ」
「一花ったら、そんな小さな子供みたいなこと」
「だって、私……」
「大丈夫でしょ、だって仁美ちゃんが一緒にいてくれるじゃない」
「だから、私はそれがイヤなの! 帰ってこれないならせめて仁美に言ってよ!もう私のお家には来ないで欲しいって」
「どうして? どうして仁美を拒絶するの? 仁美は、こんなにも一花を愛してるに」
「え? お母さん、何言ってるの?」
「。。。愛しテる。仁美は一花ちゃんの事、あいしテるよ?」
「だいスキ♪」
「うう――!」
重い唸り声を上げて、私は仁美にとびかかった。
そして渾身の力で仁美の首を絞める。
「死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね!」
「ちょっと一花! なにやってるの!」
「放してよ! こいつはもう死んでるの! だからもう一回殺すの!」
「は、はあ!? 一花、あんた何メチャクチャ言ってるの!?」
「うるさい! 死ね! 死ね死ね死ね死ね死ね!」
「一花、やめて! ほんとに死んじゃう!」
首を締めあげられている仁美の目は、なんの感情も映していない。
だがやがて、口元がうっすらと弧を描くように開いた。
「あは♪ あはははははははははははははははは♪」
※仁美、突然死体になる。
「……………………」
「やだ、仁美ちゃん! 仁美ちゃん! いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「きゅ、救急車、救急車を――!」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
生徒たちの驚きの眼差しが私に向けられていた。
「はは。はははははははははは」
私の喉の奥から、とても笑い声とは言えないようなひきつった音が出てくる。
「私も――」
私は私を拘束する生徒たちを振り払って教室から飛び出した。
「一花! 待ってよ!」
そのまま校舎からも飛び出て、グラウンドを抜けて校門を出て――。
車が通る車道に出た。
パパ――――ッ!
けたたましいクラクションの音が聞こえる。
私は迫ってくるトラックの真ん前にいた。
「一花ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
私はトラックにはねられた。
全身がバラバラになるような衝撃
身体からおびただしい出血。
私の身体は路上に投げ出される。
まだかろうじて生きているらしい私は、浅い呼吸を繰り返す。
「コヒュー、コヒュー、コヒュー……」
薄れゆく意識の中で、仁美が私の顔を覗き見てくる。
「へぇ。一花ちゃん、そんな声も出るんだぁ♪ カワイイ♪」