コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
四月。春の風が少し冷たさを残しながらも、桜の花びらはやわらかく舞っていた。
梟谷学園の校門を見上げた🤍は、小さく息を吸い込む。
新しい生活の始まり。胸の奥がそわそわするほどの期待と不安が入り混じっていた。
「今日から、ちゃんと頑張ろう…」
入学式は大きな混乱もなく進み、教室の雰囲気にも少し慣れてきたころ。
🤍は放課後、ひとり体育館へ向かっていた。
目的は――バレー部のマネージャーとして挨拶すること。
以前から、人を支えることが好きだった。
選手のそばで、一番近くでチームの力になれる存在になりたい。
そんな思いで、「入学と同時にマネージャーに入る」という決意をしていた。
体育館に近づくにつれ、ボールを叩く音と男の子たちの声が響く。
扉の隙間から明るい声が漏れていた。
「もう一本っ!! いくぞおお!!」
元気すぎる声に、🤍は思わず肩を跳ねさせる。
そっと扉を開けると、目に飛び込んできたのは活気に満ちたコートだった。
助走、ジャンプ、スパイク。
力強い音が床に響き、選手たちは汗を光らせながら練習している。
——その中で、ひとりだけ異様に目立つ男子がいた。
金黒の髪を揺らしながら大きく跳び、打ち切ったあと満面の笑みで叫ぶ。
「よっしゃああ!! 今の完璧だろ!? なぁ赤葦!!」
「はいはい…はいはいじゃないです。もうちょい角度見てください」
どうやら相手の赤葦は少し落ち着いたタイプらしく、対照的なふたりの掛け合いに、無意識に笑みがこぼれる。
その瞬間、顧問の鷲尾が🤍に気づき、こちらへ歩み寄ってきた。
「おや、君が新しいマネージャーの…🤍さんだね?」
「はい、今日からよろしくお願いします!」
緊張で背筋が固くなる。
すると鷲尾が大きな声で部員たちを集めた。
「みんな、新しいマネージャーが入るぞ! 挨拶してくれ!」
その声を聞いた瞬間、先ほどの大声の男子が勢いよくこちらに走ってきた。
目が合ったかと思えば、破裂しそうな笑顔を浮かべている。
「えっ! 新マネ!? ほんと!? わぁあ!! よろしくな!!」
距離が近い。声も近い。勢いも強い。
圧に負けそうになった🤍は一歩引きそうになるが、その男子は気づく様子もなくニコニコしている。
鷲尾が少し苦笑しながら紹介した。
「こいつが木兎光太郎。梟谷のエースだ」
エース。
その言葉にふさわしく、彼の存在感は体育館の中心そのものだった。
木兎はまっすぐに🤍を見つめ、嬉しさを隠せない声で言う。
「これから一緒に頑張ろうな! マネージャー来るの待ってたんだ!」
突然すぎる明るさと距離感に戸惑いながらも、🤍は深く頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
すると木兎は、なぜか自分のことのように喜んだ。
「よし!! 今日の練習、超やる気出た!!」
赤葦が隣で静かに突っ込む。
「いつもそれぐらい出してください」
部員たちの笑い声が広がり、その輪の中に🤍も自然と引き込まれる。
体育館の空気は温かくて、にぎやかで、どこか居心地がよかった。
こうして🤍の梟谷学園での生活と、
木兎光太郎との“最初の出会い”が始まった。
彼女はまだ知らない。