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「汐音さんの不倫相手は、真由佳の旦那さんです。
現在消息不明かと思われますが……。
明日奈ちゃんは、汐音さんと真由佳の旦那さんである、畑山真さんの娘です」
「あ、なたさっきからなにを……!!」立ち上がったのは予想通り、汐音さんだった。「証拠もないのに。なにを、分かった風なことを……!! そもそも嫁の分際であなた、生意気なのよっ!!」
汐音さんの旦那様のご実家からすれば汐音さんも嫁なのに。嫁としての役割を果たしている気配はない。滅多にご主人のご実家には帰らないらしいし実家の鷹取に入りびたりで。……どの口が言えるのか。
「真由佳の旦那さんはなにかしらの理由で消息を絶った」とわたしは動じず、真由佳を見て告げた。「……おそらく姑さんの介護に関してなにか口出しをしてきたかなにかでしょう。旦那さんの姿もお姑さんの姿も見かけない、介護用品を買う姿も見かけないと……三年ほど前からご近所さんの噂にはなっていました。
どう? ……なにか言い分があるなら聞くけど」
女子会のときに、介護や夫の愚痴や苦労話で盛り上がった。あれは全部、嘘だったのだ。
真由佳は……暗い目をして、「有香子ちゃんになにが分かるの」と言い捨てるように言った。
「義理のご両親だってこんなに元気で。なに不自由なく暮らしてきて。裕福で、自分にも余裕があって。セレブで。……有香子ちゃんになんか、わたしの気持ちなんて、絶対に、分かるわけない。分かるはずがない」
「分からないよ。そりゃあ、いくら友達であっても、他人だからね。――で。どうして山崎さんを巻き込んでうちの夫と浮気をしたの。
真由佳。あなたと、汐音さんと、山崎さんが繋がっていることはもう、分かっているの。証拠の写真もあるわ」
とスマホを操作して、テレビ画面に、水萌が撮ってくれた写真を映し出す。三人がホテルのカフェで談笑している写真を。
「分かってない。有香子ちゃんは、やっぱり――分かっていない。
あたしたちの孤独や苦しみを知ろうともしないで。なに分かった気になってんのよ。
サレ妻のくせに。……だいたい、知宏さんとのお付き合いは、晴湖《はるこ》のほうが長かったのよ? そもそも晴湖から大切な彼氏を奪ったのは。略奪した加害者は、あなたのほうなんだから。被害者のふりしてこんな場なんか設けて。ばっかじゃないの」
「つまり。……真由佳あなたは、うちの夫と浮気していたことを認めるのね? ……山崎さんも。
ねえ。三人でするのは今日が初めてのはず、だったんでしょう? 楽しみだった? ……寝室にある監視カメラであなたたちのことを見ていたわ……知っていて、裏切るのは、楽しかった? 復讐が果たせた気分になったかしら?
敬愛する鷹取汐音さんも巻き込んで、悪だくみを企てるのはさぞ楽しかったでしょうね? ……でも。
この展開は、予想できなかったでしょうね。……入っていいですよ。真さん」
あ、と一同から声が漏れた。廊下の奥からしずしずと歩いて姿を現したのは、畑山真さん、だった。
みるみる真由佳の顔が蒼白になる。「そんなばかな……どうして……ッ」
みどりさんと水萌の努力に感謝をしなくては。彼を見つけられたのは彼女たちのおかげ……なのだから。そして。
「これがDNA鑑定書よ。……鷹取明日奈ちゃんは、百パーセントの確率で、畑山真さんの子どもよ」
わぁぁ、と頭を抱え込んでその場にうずくまった真由佳を、……気の毒さの入り混じった複雑な気持ちで見守っていた。
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