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これは僕、「一ノ瀬尊息」の小学校4年生から、現在までの話だ。
ズサッ……「血が出てるよ、大丈夫?」この日、体育の授業ではマラソンの練習があっていた。どうやら僕と同じ班の子が走っている途中に転けてしまったらしい。咄嗟に僕はその子に駆け寄った。
「もう……痛ったいなぁ…」
その子は泣くことはなかったが、少々苛立っている様子だった。名前は……確か立花由香…だったか。クラスの中でも大人しいタイプの人ということだけ知っていた。
両膝を怪我して、結構な量の血が出ていた。
僕は、立花さんの膝から流れ出る血から目が離せなかった。何故か動悸がして、いや、興奮して?自分でも分からない感情に苛まれた。
「とりあえず、保健室に行こうよ。」と言って、手を差し伸べた。「え、いいの?」と遠慮気味に僕の肩に腕をかけた。心做しか血の匂いがした気がして、肺いっぱいに空気を吸い込み、立花さんの足を庇いながら保健室へと辿り着いた。
コンコン「失礼します。山登(やまと)先生いらっしゃいますか?」
「はいはい、おやおや、盛大にコケたねぇ、 」
保健室の奥からノソノソと出てきたのは保健室の先生、山登先生だった。
「はい、ここに座って、まずは消毒しようか。」冷静に消毒液を傷口に垂れ流す。
立花さんはグッと顎に力を入れて、顔をほんの少ししかめた。「痛いな、我慢、 」
傷口からたれかけていた血が、みるみるうちに消毒液が染み込んだコットンに吸い込まれていく。(痛そう。血が、赤い)なんて当然なことを思ってしまう自分を不思議に感じた。
「絆創膏、ちょっと大きめのやつにしとくね、お家に帰ったら、剥がして新しいのに張り替えなさい。 」
そういいながら慣れた手つきで大きめの絆創膏を両膝に貼った。
「ありがとうございます」
と、控えめな挨拶をし、ふたりして保健室を後にした。立花さんの両膝に貼られている絆創膏にも血が染み出していた。
「血、まだ出てるね、痛い?」「え?あぁ、さっきよりはまぁ、痛くは無いけど、」
引かれてしまったのだろうか、曖昧な返事が返ってきた。まぁ、あまり普段から話さない間柄だし、それもそうかと落ち着かせるように心に暗じた。
授業に戻っている時も、立花さんの両膝から綺麗に流れる血がフラッシュバックして仕方がなかった。
こんな感情になるのは、初めてだった。
その日からというもの、僕は血が見たいと言う欲求に駆られるようになった。
家庭科の授業中、体育の授業中、登下校時、色んな場面で、「誰か怪我はしてないだろうか」と探すようになってしまったのだ。
それから3年が経って、僕は小学校を卒業し、晴れて中学生になった。中学生になっても、血が見たいという欲求は収まることを知らない。
ある時、母親が料理中、包丁で人差し指を切ってしまうということがあった。
僕はその時、身体中ゾクゾクして堪らなかったのを今でも覚えている。
中学校ではなかなか人が怪我をする場面に出くわすことが少なくなってしまって、僕の欲求はましに増してついに自らの左手首をカッターで切ってしまった。人が怪我をする時に必ず出る血。それよりも遥かに多い量の血が僕の手首から出ていることに興奮を抑えきれなかった。
僕は毎日手首を切った。夏も冬も、長袖、そんな生活が1年ほど続いた。ある日、学校から帰宅すると、今にも泣きそうな面持ちで玄関前に呆然と立ち尽くしている母の姿があった。「どうしたの?」そう声をかけると、僕の手を取り、長袖を肘あたりまで捲り上げられ、ついに手首を切っている事がバレてしまったのだ。
母は、バタッと床に崩れ落ち、「どうして……どうして……なんで!貴方…なにか辛いことでもあるなら、言えばよかったじゃない!!!」と大号泣してしまった。すかさず僕は「違うよ!お母さん、僕は血が見たくて切ってるんだ!決してなにか悩み事がある訳じゃない!」と言い放ってしまった。僕は母を落ち着かせたい、安心させたいの一心で言った言葉でも母にとってはそれが逆効果だったらしく、次の日、半ば強制的に精神科に連れて行かれた。
精神科はなんだか僕を腫れ物扱いする人ばかりだった。会話の端々に謎の違和感を感じる。担当医も悩ましげに僕を見つめていた。
「尊息さん、カウンセリングを受けてみませんか?」カウンセリング、よく聞く言葉だ。
担当医の言うとうり、カウンセリングとやらを受けてみることにした。別になにか悩みがある訳では無い。表面上のカウンセリングだ。
カウンセリングでは、僕は血が大好きなこと。それを母に話したらここに連れてこられたことを赤裸々に話した。これが間違いだったのかもしれない。カウンセラーと担当医は情報共有しているらしく、母にもそれはすぐ伝わった。
家に帰ると、母は一層僕を腫れ物扱いするようになった。まるで僕が人の血が好きな狂気的殺人鬼にでもなってしまうんじゃないかと不安げな顔をして。僕は母子家庭で育った。父は僕が物心着く前に亡くなってしまった。写真立てに幼い頃の僕と、少し肌にハリのある母。記憶のどこにもない父の顔。それでも写真と言うだけでどこか懐かしさを纏っていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ココカラサクシャノハナシ。
初投稿です。なんだか血が好きな人の話を書きたくなったので、書いてみました。ストーリーなので、興味のある方はフォローして次回の作品も待っていてあげてください。
最後までよろしくお願いしますね。