テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
51 ◇ため息がでる
「悟、嫌なこと訊いて悪かったね。でも、教えてくれてありがとう。
聞けて良かったわ。ずっとおばあちゃん、悟のお母さんに嫌われちゃったん
じゃないかって思ってたから。
――っていうか、正義がそんなちゃらんぽらんなことしてるんじゃ、嫌われてるわよね~」
「嫌ってなんかいないと思うよ。
ただ、お母さんはどうしていいか分からないんじゃないかな」
「うん、そうだよね。余所の女性と仲良くしてる旦那さんのお母さんにどんな顔して
接したらいいか……誰だってそんな気になるってものよ。
分かる分かる」
どうして、孫たちもお嫁さんもこちらへ正月も盆も帰省しなくなったのか……。
最初は体調不良で、次は『仕事が入ってしまって』と断られたのよね。
でもいつもなら直接電話してくれるのに、正義から聞いたんだ。
この時にアレっ? とは思ったのよね。
えーっと、その次の理由はなんだったっけ。
確か――――
『子どもが友達と約束があり、みんなでお邪魔できないので、またみんな
揃ったときに伺います』とかだった。
この時は由香さんから直接電話があって……。
そしてその次からはまた息子からの連絡だったけれども。
そのうち正義の言い訳も歯切れが悪くなっていって
『予定が合わなくて……』とか、苦しい言い訳になってたけど、おそらく
この辺からは正義が苦し紛れに自分で考えた言い訳だったのだろう。
私が帰省のことに触れなくなると、言い訳さえもなくなって帰省は当たり前のように
スルーされるようになってしまった。
よくないことだけど、悟から話を聞いて自分が原因じゃないことが分かっただけでも
良かった。
『しかし、誰に似たのかしら』と晴恵はため息をついた。
夫の忠義は昭和生まれのゴリゴリの頑固親父で典型的な堅物人間だ。
たまに傷なのが、酒好きで酔っぱらうと何度でも同じ歌を唄いまくり、
うっとおしいことこの上のない。
だが、唯一女性関係では心配させられたことはない。
だから、由香の気持ちが分かるのか? と訊かれれば、分かるとは
いいがたい。
それでも、今までに世間の話として聞いたことはあるので、それがどんなに
酷い行為であるかは、流石に分かる。
その酷い行為をした挙句、やめないという息子の正義。
育てた親の顔がみてやりたい。
その日から、晴恵は朝鏡を見る度、ため息が出るのだった。
『どうしたものだろう』
268