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「さむっ…」
「俺の手握る?」
「やだよ」
何故か俺は今、キヨくんの散歩に付き合っている。なんでも趣味が散歩らしく、夏なら一人でもいいけど冬は何となく寂しさを感じるらしい。そんなこと俺の知ったことじゃないけどさ。
「あとで肉まん奢りな」
「がめついなぁ、そんなに俺との散歩嫌かよ」
「そうじゃないけど、なんで男二人でこんな夕方に散歩なんてしないといけないの…」
時刻は夕方4時過ぎ。日も傾くのが早くなってきていた。遠くの空がピンクと紫の混じったような、幻想的な色をしている。あーあ、なんでこんなロマンチックな時に隣りにいるのがこいつなんだよ。
でもそれは本心じゃない。本心はもっとこう…なんかさ…ね?
「結構歩いたよ、もう一万歩くらい」
「もう俺疲れたぁ」
「なにオッサンみたいなこと言ってんだよ」
「もうオッサンだよ」
「なーにいってんの」
キヨくんは俺のほっぺをぐいっとつねった。
「いてぇよばか!!」
「レトさんはちゃんと若くて可愛いよ」
「なにそのキモい褒め方…」
「酷くない!?」
「…普通だよ」
さっきの、何!?可愛い!?
頭の中お花畑なんじゃないの?
キモいキモいって思おうとしてもだめだ。なんか、ちょっと嬉しかったなぁ…
「冬ってさ、なんで寂しさを感じるんだろうね」
「寒いからじゃないの?」
「だから人肌が恋しくなるのかな」
「手は繋がねーよ?」
「わかってるって笑」
何となく感じるこの雰囲気。いい歳した大人の男二人がなにを今更甘酸っぱい青春やろうとしてんだってわけですよ。お互いちょっと気になってるみたいな。俺知ってるんだよ、キヨくんの気持ち。だから余計に接触しづらい。こういうの…俺苦手なんだよね…
そうなったらいいなっていつも思うけど、匂わせるだけ匂わせておいて、当の本人は何も俺にしてこない。俺が言うの待ってるの?
絶対言わない。
「レトさんは肉まんでいいの?」
「あー…ピザまんも食べたいな…」
「じゃあ2個買ってシェアしようよ」
「なにそれ…」
「両方楽しめるし得じゃない?」
「まぁ…ね…」
こんなことを提案するキヨくんの言葉にはなにか裏があるんじゃないかと勘ぐってしまう。
なにやってんだろ…俺…
Fin.